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2009年3月27日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

この世で一番強い武器は?

 ギリシャ神話にたびたび登場する光と神託の神アポロン。彼は神々の王ゼウスが最も愛する息子であり、美貌とあらゆる才能に恵まれている。その才能の一つとして見事な弓矢の腕前があった。

 ある時、幼い少年の姿をした愛の神エロスが弓弦を引き絞っているのを見て、アポロンはこう言う。
「私の弓矢は巨大な大蛇ピュトンを射殺したばかりだ。だけど、ぼうやのその小さな弓はきっとなんの役にたつまい」
 エロスは、むっとしてアポロンを睨み、かわいい口をとんがらして言い返した。
「あなたの弓は全てのものを射るかもしれないけど、僕の弓はあなたを射ることができるんだよ。まあ、みててごらんよ」

 エロスは背中の小さな翼をはばたかせ、2本の矢を取り出した。1本は金で作られた鋭い矢。この矢は射られたものの心を恋心に狂わせる。もう1本の矢は鉛の入ったなまくらな矢。この矢は恋心を去らせる。
 エロスのはなった金の矢はアポロンの胸を、なまくらな矢は河神ペネイオスの娘ダプネの胸を射た。
 この時、未だアポロンは恋を知らず、その威力のほどを過小評価していた。まさかちびっ子エロスの矢が、大蛇を倒すほどのアポロンの弓矢に優るとは夢にも思っていなかったのだ。
 
 金の矢の効果で、ダプネへの恋心に狂ったアポロンは、彼女に愛を求め追いかけた。一方、ダプネはなまくらな矢の効果で、そんなアポロンがイヤでイヤでたまらず、逃げようとする。
 しかし、そんな乙女が風をきって走る姿は美しかった。ますますアアポロンの恋心は燃え上がり、彼女を追う。とうとう追いつかれそうになったその時、ダプネは父ペネイオスに、アポロンに恋心を抱かせている自分の姿を変えて欲しいと懇願した。
 そうして、哀れダプネは1本の月桂樹に姿を変えたのである。アポロンは永遠にかなわぬ恋にただ嘆きうちひしがれるしかなかった。
 
 エロスは、愛らしい姿で様々な絵画や陶器などのモチーフになる一方、「恐るべき神」と称されている。
 フランス革命前夜のドラマチックな歴史を舞台にした『ベルサイユのばら』だが、もしもその物語に、恋の悩みというものが全くなかったとしたら、その魅力はずいぶんと減ってしまっていたことだろう。アントワネットフェルゼンオスカルアンドレの間に、恋愛感情と、立ちはだかる障壁があったればこそ、読者があれほど夢中になり、多くの涙が流されたのではないだろうか。
 全く意外な相手に、愛してはいけない相手を突然愛してしまう。彼らに良識がないわけではないのに、理性や理屈でコントロールできなくなるのだから、恐るべきことだ。
 
 私たちの現実の生活でも、占い師に一番尋ねたいのは「恋の行方」であり、占いに頼りたくなるのはそれが全く予想不可能で、喜びの反面、大きな苦しみをもたらすからだろう。
 無邪気な幼い神が気まぐれに放つ矢は、他に並ぶものはないまさに最強の武器なのである。(米倉敦子) 
 
《参考文献》
『ギリシア・ローマ神話辞典』 高津春繁著 岩波文庫
『変身物語』 オウィディウス作 中村善也訳 岩波書店

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/03/27 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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