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2009年3月12日 (木)

ロココの衣装小部屋

艶やかな騎士たち アビ・ア・ラ・フランセーズ

芳しい香りと共に、ここベルサイユにも春がやって参りました。昨年完成したトリアノン宮のイギリス式庭園には見事に薔薇が咲き乱れ、プチ・トリアノンでは「王妃の劇場」と「愛の神殿」の建設が進められております。

先年はアントワネット様の兄上で在らせられる、神聖ローマ帝国皇帝ヨーゼフ2世陛下がベルサイユに滞在され、今年はスウェーデンよりハンス・アクセル・フォン・フェルゼン伯爵が再びベルサイユを訪問されるなど、懐かしい方々との再会を王妃様はたいそうお喜びでございます。特にフェルゼン様の再訪は、近衛連隊長オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ大佐等、若い親しい方々との交流を深めることとなり、楽しそうな王妃様のお姿は光り輝くようでございます。

今日も宮廷では舞踏会が催されておりますが、今夜は一段とあちらこちらで笑いさざめく声が賑々しいのは、フェルゼン様オスカル様アンドレ・グランディエは勿論のこと、ヴィクトル・クレマン・ド・ジェローデル大尉以下の若き近衛士官達が珍しく、近衛服ではなく宮廷服で現われたからでしょうか。
近衛隊士には王宮を守る軍の中でも際立って家柄が良く、整った容姿と人柄が求められるため、御婦人方にはたいそうな人気でございます。その近衛士官が宮廷服で参内するとは、今日はダンスに興じて良いということ。中でもジェローデル様は、華やかな美貌と洗練された趣味に定評がございます。賑やかなのも当然でございましょう。

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さて、殿方の宮廷服であるアビ・ア・ラ・フランセーズは、アビ(フランス型の上着)、ジレ(ヴェストまたはウエストコート)、キュロット(膝までの半ズボン)で構成されます。この3点の衣服は、ルイ14世陛下の治世から今日に至るまで、男子服の着方の基本でございます。しかし、流行の移り変わりにより、全体のシルエット(輪郭)やデザインは、少しずつ変化を遂げました。

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アビ・ア・ラ・フランセーズ 1770-75年頃(目黒区美術館「祝祭の衣装展」より)

先王ルイ15世陛下の頃は、アビはジュストコール(身体にぴったりした上着の意)と呼ばれておりました。ジュストコールは襟無しか、小さな立ち襟の付いた長上着で、肩からウエストにかけては身体の線にぴったりと沿い、フィットしたウエストから裾にかけては鯨のヒゲやリンネルの堅い芯を張り、スカートのように大きく張り出します。
下に着るシャツの襟元にはクラヴァットという折りたたんだスカーフ状の布を首に巻き結ぶか、フリルの付いたジャボで飾るため、ジュストコールのネックラインから前合わせは、やや傾斜しています。
袖口は大きく折り返して刺繍などで装飾がなされ、襟元から胸、裾までの前合わせも豪華な刺繍で飾られておりました。宝石や見事な細工の、たくさんの高価なボタンがつき、素晴らしい仕上げのボタンホールが並びます。ボタンを幾つ留めるか、また全部を開けて着るかは時の流行で変わりましたが、全てのボタンを留める着方は野暮で格好の悪いものとされていたため、3つか4つ程度のボタンを留める位置が流行によって変化したのでございます。
その下に着るジレはヴェストとも呼ばれ、ジュストコールと同じくらいの丈の長胴着で、袖が付き、ジュストコールのボタンを全部は留めずにヴェストのボタンを全て留めて着用したため、前面は贅沢に刺繍がされております。
キュロットは脚の形に合うように仕立てられ、膝の上でボタンかバックルで留められます。始めは黒のベルベットで仕立てられておりましたが、段々と明るい色に変わり、ジュストコールと同じ布地で作られたものも多くなりました。膝下は絹の長い靴下に、刺繍が施された赤いヒールつきの靴を履きます。
服の素材は絹のブロケード、艶やかなサテン、ベルベット等と、ウールの織物が使われておりました。

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アビ・ア・ラ・フランセーズ 1780年頃(目黒区美術館「祝祭の衣装展」より)

現国王ルイ16世陛下の現在は、イギリスのフロック・コートの影響を受け、アビの前裾は斜めにカットされ、スカートのように張り出したシルエットは直線的なラインに変わり、袖口のカフスも、やや小さくなって参りました。しかし、全体に施される刺繍は変わらず金糸銀糸、宝石やビーズ、シークイン(スパンコール)を使った豪華なものでございます。
シャツの襟元には、クラヴァットの小さいものか、ジャボ、そして軍人が使っていた、幅が広く帯状のストックスが巻かれるようになりました。
ジレは徐々に短く、今ではウエスト程の長さになり、袖なしで上着に隠れて見えない部分は簡素な布地で作られるようになりましたが、前面は美しい刺繍で飾られております。
キュロットの形は変わりませんが、赤いヒールの靴は盛装の時のみで、普段は低いパンプス、散歩には黒のブーツが履かれるようになりました。
服の素材は畝や斑点のある絹地か毛織物で、縞模様の生地が多く使われるようになりました。
帽子は前時代に続き、トリコルヌという三角帽が被られております。
男性にとって鬘(かつら)は欠かせないものですが、また次の機会にお話し致します。

この時代、刺繍等の装飾は女子服より、むしろ男子服に多用されました。男性の衣服は機能性より、華麗に装飾されたものが良しとされていたのでございます。

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アビ・ア・ラ・フランセーズ 1780-90年頃(目黒区美術館「祝祭の衣装展」より)

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アビ(上着)とジレ(ベスト)の豪華な刺繍。それぞれのアビの、襟の高さの違いにも注目して欲しい。
アビ・ア・ラ・フランセーズ 1780-90年頃(目黒区美術館「祝祭の衣装展」より)

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ポケットのフラップ(蓋)の形状とサイドの刺繍、袖口のカフスなどに注目。
アビ・ア・ラ・フランセーズ 1780-90年頃(目黒区美術館「祝祭の衣装展」より)

殿方に求められたのも、勇猛果敢よりも優しく穏やかな人柄。ベルサイユで重要なのは、優雅で洗練された物腰としゃれた会話でございます。
夜毎に繰り広げられる夜会。数多の恋愛遊戯。
その中で抜きん出るのは、艶やかに鮮やかに貴婦人をあしらう巧みな手腕を持つ男性です。
知的で控えめ、しかも見目麗しいフェルゼン様がベルサイユ中の貴婦人の心を捉えたのは当然至極のことでございましょう。(安瞳麗

《参考文献》
・「モードの歴史」 R・ターナー・ウィルコックス著 石山 彰訳 文化出版局 1996年12月10日 第13刷
・「ファッションの歴史」(下) J・アンダーソン・ブラック、マッジ・ガーランド著 山内沙織訳 PARCO出版 2006年5月30日 新装第七刷
・「西洋服装史 -図説編-」 丹野 郁著  東京堂出版 2007年2月15日 3刷
・「華麗な革命 ロココと新古典の衣装展」図録 1989年4月4日~5月28日 京都国立近代美術館 京都服飾文化研究財団
・「服飾辞典」 文化出版局 1996年1月19日第1版第16刷
・「ヴェルサイユ宮殿の歴史」 クレール・コンスタン著 伊藤俊治監修 遠藤ゆかり訳 創元社 2008年3月10日第1版第3刷発行

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アビ・ア・ラ・フランセーズの実物を、展覧会で観ることができます。

祝祭の衣装展―ロココ時代のフランス宮廷を中心に
■会期:2月11日(水・祝)から3月29日(日)
■会場:目黒区美術館
■開館時間:午前10時から午後6時(入館は5時半まで)月曜休館
■料金:一般900円、大高生・65歳以上700円、中小生無料(団体割引料金あり)
■お問い合わせ:目黒区美術館 TEL.03-3714-1201(代表)、
または美術館のHP

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/03/12 10:00:00 ロココの衣装小部屋 | | トラックバック (2)

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