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2009年4月28日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

殿、ご乱心 1788年

  ~アントワネット33歳~

 政務には熱心、私生活は地味で質実、9男6女をもうけた妻との間は円満で寵姫を持たず、自ら畑仕事もすることから「百姓ジョージ」とあだなされて国民に愛されたジョージ3世だが、ときおり精神錯乱に陥(おちい)って公務をとれなくなるのが玉に瑕(きず)であった。

 1788年、50歳のときの、これまでで最悪の大発作を、ブラックな笑いをまぶして描いたのが、『英国万歳!』(ニコラス・ハイトナー監督、1996年公開)だ。

 ここに描かれたジョージ3世のご乱心ぶりはなかなか凄くて、回廊を裸で走り回るは、いきなり女官に抱きつくは、幼児のように泣くは喚(わめ)くはの大騒ぎ。

 臣下には完全にバカにされ、、敬意のかけらも示されなくなるし、医者からは拷問めいた治療をされる。おまけに皇太子は王位を奪う絶好のチャンスとばかり、クーデターを計画。何だか気の毒になるほどだ。

 ところが病状が回復するや、驚くばかりの威厳をとりもどして絶対権力をふりまわし、周囲はたちまちもとのとおりの平身低頭 ―― 階級社会の醜悪さが強烈に炙(あぶ)りだされた。

 映画と違い、現実にはジョージ3世は完治せず、この1年後、皇太子(後のジョージ4世)の摂政政治が始まっている。それでも王はさらに30年以上を生き延び、たまに正気をとりもどしたり、またあやふやになったりをくり返した末、晩年は失明し、認知症にもなったらしい。

 彼の精神の病については、かつてはストレス過多の故(ゆえ)と解釈されていた。何しろ在位期間中、植民地のアメリカには独立され、フランス革命の余波でナポレオン戦争があり、国内では産業革命の負の問題やら民衆暴動など、問題山積だった。

 いや、それより何より、息子たちの出来があまりに悪く、彼らのスキャンダルをもみ消すのに心身消耗したのが最大の原因とさえ言われた。ギャンブルに負けたり女性へ貢いだりして多額の借金をこしらえる息子やら、賄賂をもらったのがばれて軍司令官の地位を剥奪(はくだつ)される息子やらがいては、心労ただならぬものがあったろう、という次第。

 しかし近年の研究によれば、どうやらジョージ3世の異常なふるまいは、遺伝性のポルフィリン病による一症状だったようだ。子孫に同じ病気から似た症状を呈した者が数人いるのがわかっている。

 いずれにせよ、4人のジョージ(1世から4世まで)のうち、この3世が今なお一番人気なのは間違いない。 (中野京子)

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投稿者 中野京子 2009/04/28 8:55:40 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (2)

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