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2009年4月14日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

ヴェネチア解放の混乱の中で 1866年

  ~アントワネット没後73年

 1866年といえば、水の都ヴェネチアが長いハプスブルク家支配から解放され、イタリアの一都市となった記念の年である。敗北したフランツ・ヨーゼフ皇帝は、ヴェネチアをナポレオン3世にまず譲渡する形を取ってからイタリアへ渡す、という最後の嫌がらせに出たが、たとえそうされてもヴェネチア人の自由への喜びは大きかった。

 この歴史的事件を背景に、破滅的恋の行方(ゆくえ)を描いたのが、『夏の嵐』(ルキノ・ヴィスコンティ監督、1954年公開)である。

 まだヴェネチアの反占領軍運動が成功するかどうか未知数だった、5月。フェニーチェ歌劇場で、ヴェルディの『イル・トロヴァトーレ』が上演され、イタリアの伯爵夫人リヴィアが観劇するところから物語りは進みだす。このオペラのラストは恋人たちの死であり、伯爵夫人自身の恋の運命をも予感させる幕開けだ。

 彼女のいる桟敷席へ、夫の知人として挨拶にあらわれたのが、占領軍たるオーストリアの若き将校フランツだった。冷たい美貌のリヴィアは表情を変えないが、しかし年下の男への恋は目を見交わした瞬間から始まっていた。

 とはいえ、リヴィアの従兄がフランツと口論になり決闘を挑(いど)むというハプニングがなければ、その先の展開はなかったかもしれない。翌日彼女は、決闘を止めてほしいと頼みに来たとの口実でフランツを訪ね、もはや引き返せないところまで突き進んでしまう。

 春から夏にかけてリヴィアに恋の嵐が吹き荒れたが、フランツはといえば、こちらは「女を愛さない男ほど女を夢中にさせる」という男の典型であった。短い夏が終わるころにはすっかり彼女に飽きて、態度にも示すようになる。

 絢爛(けんらん)たる歴史絵巻風の装いを凝らしてはいても、恋に溺れた女性の醜態は、会社の金を使い込んで相手に貢ぐ現代の愚かな女性とさして変わらない。リヴィアは従兄から預かった独立運動の軍資金を、せびられるままフランツに渡す。もちろんそうしたところで心は繋(つな)ぎとめられないのだが・・・

 映画はオペラと同じ、銃殺刑で終わる。オーストリアが撤退し、ヴェネチアが独立の歓喜の渦を巻く中、ひとつの恋が終わり、戦争によってではなく惨めな恋によって死んだ者がいた。 (中野京子)

movie夏の嵐

31g0ds6bc7l_sl160__2監督:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:アリダ・ヴァッリ、ファーリー・グレンジャー他
公開:1954年

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投稿者 中野京子 2009/04/14 8:49:25 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇>」第13回は、「ヴェネチア解放の混乱の中で」 ⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2009/04/post-d8ef.html#more  ヴィスコンティの「夏の嵐」の背景になった、ヴェネチア独立運動について書きました。19世紀半ばまでこの水の都は、ハプスブルク家の所領だったのです。  さて、イタリアのヴィスコンティ家だが、シャルルマーニュの子孫で、かつてはミラノの支配者とい... 続きを読む

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