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2009年5月14日 (木)

ロココの衣装小部屋

異国への憧憬 オリエンタル好み

 ベルサイユ宮殿の北西、プチ・カナルの近くにグラン・トリアノン(大トリアノン)がございます。
 この城は、ルイ14世陛下が御家族や親しい方々と寛がれるために建設されたもので、始めは青と白の磁器のタイルで装飾された“中国風の宮殿”、「磁器のトリアノン」といわれておりましたが、後に建て替えられ、「大理石のトリアノン」といわれたギリシア式の簡素な宮殿でございます。

 現在は、王妃マリー・アントワネットのお好みで、イギリス式庭園に造り替えられておりますが、かつてグラン・トリアノンの庭園には、先王ルイ15世陛下によって、異国の珍しい動物が集められた小動物園と、コーヒー、パイナップル、イチジク等、やはり異国の珍しい植物を4000本も集めた植物園が造られておりました。
 イギリス式庭園は東洋の国、中国の影響を色濃く受けた様式です。自然の風景そのままに見えるよう、一見無造作に、しかし計算し尽くして木や草花を植え、小川や洞窟を作り、人工の小島、池を造り、廃墟のような建物まであしらわれ、ここでは異国の甘い花の香り、鳥の姿や囀りまでが、一服の絵のような自然の調和を作り出しているのでございます。
 5月のトリアノンは、地上で最も美しいといえるかもしれません。

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 さて、遠く東洋の異国から海を渡ってきたものは、動物や植物だけでなく、家具や調度品、小物や装飾品にまで及びました。
 16世紀からポルトガル、スペイン、オランダ等の東方貿易によって欧州に運ばれた異国の品は、瞬く間に各国の王室の方々を魅了し、ここベルサイユにも多くの東方の品々がございます。中国の絹、磁器の壷、皿、鉢、日本の織物、漆器、漆に金粉や螺鈿(らでん)で細工をした蒔絵(まきえ)の家具、重箱、香を入れる沈箱(じんばこ)や香合(こうごう)、インドの木綿の更紗、縞模様。インドのお茶、サンダルウッド、パリサンドル等の香木、ムスク、シルベット、アンバーグリス等の香料は言うまでもありません。
 宮廷に上がる貴族にも、東洋好みの方は大勢いらっしゃいます。お部屋の壁を東洋の模様や東洋風の人物像で飾ったり、暖炉用の衝立に中国のものを使われたり、蒔絵の家具に金の台座や縁飾りをつけたり、蒔絵のポプリの壷に金の取っ手や台座をつけたものもございます。
 中でもアントワネット様の蒔絵コレクションは素晴らしいものでございます。これはアントワネット様御自ら収集されたものと、母后マリア・テレジア様より譲り受けられたものとで構成されております。

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文化学園服飾博物館所蔵

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文化学園服飾博物館所蔵

 マリア・テレジア様は漆器をこよなく愛されたそうで、凝った蒔絵の小箱を多く遺され、アントワネット様は、この小箱のために御自分のお部屋を「黄金の間」に改装されたり、蒔絵を再利用した家具や調度をご注文なさったり、コレクションの充実を図られました。 この東洋風、オリエンタル好みは、画家、職人、調香師、もちろん私たちマルシャンド・ド・モード(モード商人)にも大きな影響を与えました。
 黒檀(こくたん)や鼈甲(べっこう)に加え、シックな色調の異国の木材にブロンズで装飾をした家具が造られ、パリで漆を発見して、室内装飾や家具をパリの漆で仕上げる職人も現れ、漆に香りを混ぜて絵を描く技法も生まれました。異国調の装飾には、中国の夫人や猿が描かれました。
 ルイ14世陛下の頃から貴婦人は季節を問わず扇を持つようになり、ルイ15世陛下の時代には遠く中国やインドから扇が輸入されました。その後、大いに刺激を受けた職人の手で、パリでも紫檀(したん)や象牙といった東洋の素材を使った扇や、中国の唐子(からこ)を描いた東洋風の扇が作られるようになりました。見事な蒔絵の箱に収められた扇もございます。
 また、前世紀の終わりから、イギリスの木綿、印度更紗とプリント柄のキャラコは、独特の色使いと異国の花柄や縞柄が好まれ、絹織物より安価ということもあり人気を博したため、フランスの絹織物産業への影響を恐れた政府により、今世紀の半ばまで輸入・販売の禁止令が出ておりました。しかし、1760年には禁令が解かれ、パリに工場ができました。この東洋趣味の生地は、ローブの襞、ローブの裏地、室内着、ペティコート、下着にも使われております。南フランス、プロヴァンス地方では、東洋風の柄や色使いから生まれた独特の生地、プロヴァンス・プリントが作られました。日本の着物の柄や紋は日本風(ジャポネズリ)の美しい織物となり、ローブの柄に取り入れられております。
女性服だけでなく男性のアビ・ア・ラ・フランセーズも、縞柄で仕立てられたものが目立つようになりました。
 衣装への東洋の影響は、服地だけではございません。女性の服では、ローブ、袖口のレース、ペティコートの裾に中国風(シノワズリ)の刺繍を施したものが人気でございます。
 男性は室内着として東洋風の衣装を着るようになりました。薄く綿が入った日本の着物風のヤポンセ・ロッケン、インドや他の異国の生地で作られた襟付きのバニアン、トルコ等イスラム圏の民族服カフタン。これらは室内で着用する、ゆったりとしたガウンとして着られます。日本やインド、トルコの殿方は、このような衣装をいつも着ていらっしゃるのでしょうか。

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 東方のトルコの宮廷には、後宮というものがあるそうで、そこには皇帝の寵愛を受けるオダリスクと呼ばれる女性たちが住んでいるのだそうです。
 私が「トレ・ガラン」で奉公していた頃より目をかけて頂いたコンティ太公妃殿下の舞踏会に、いつだったか“オダリスク風のドレス”を纏った、彫刻のように美しい貴婦人がおみえになったそうでございます。なんでも外国の伯爵夫人だとか。
 純白のローブは豪華なブロケード。金糸で見事な刺繍がされ、ハイネックには大きなルビー、長く曳いたトレーンとオーバースカート、ドレープの寄ったエプロンスカートは、すらりとした、しなやかな身体つきを引き立て、手には孔雀の羽根扇。それは見事なブロンドで、ローブと揃いのルビーのティアラとイヤリング。

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写真提供メイプル

 フェルゼン伯爵の御妹様ソフィア嬢を始め、会場にいらした方々は、皆様そのお姿に思わず見とれられたそうですが、伯爵夫人は1曲だけフェルゼン様と踊られて、すぐにお帰りになられたと聞きました。その夜は、黒い騎士と名乗る盗賊が騒ぎを起こしたこともあり、その麗人がどこのお国の方なのか結局、今もわかりません。
 伯爵夫人のこの世のものと思えぬ麗しさは、遠い異国に憧れる心が見せた、一時の夢であったのかもしれません。(安瞳麗

《参考文献》
・「ロココの世界 -18世紀のフランス」 マックス・フォン・ベーン著 飯塚信雄訳 三修社 2000年11月10日
・「華麗な革命 ロココと新古典の衣装展」図録 1989年4月4日~5月28日 京都国立近代美術館 主催:京都国立近代美術館/(財)京都服飾文化研究財団
・「マリー・アントワネットの調香師 ジャン・ルイ・ファージョンの秘められた生涯」 エリザベット・ド・フェドー著 田村愛訳 原書房 2007年9月10日
・「マリー・アントワネット(上)」 シュテファン・ツヴァイク著 中野京子訳 角川文庫 平成19年1月25日
・「ヴェルサイユ宮殿の歴史」 クレール・コンスタン著 伊藤俊治監修 遠藤ゆかり訳 創元社 2008年3月10日
・「japan蒔絵 -宮殿を飾る 東洋の燦めき-」 展覧会図録 2008年12月23日~2009年1月26日 主催:サントリー美術館 読売新聞東京本社 共催:NHK

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/05/14 11:00:00 ロココの衣装小部屋 | | トラックバック (2)

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