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2009年6月16日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

小説さながらに生きる 1823年

  ~アントワネット没後30年~

 次々事業を起こしては破産をくり返し、数千ページに及ぶラブレターを出し続け、濃いコーヒーをがぶ飲みしながら、小説や戯曲を90作も書きあげたバルザック(とうぜん、長生きはできませんでした)。彼が創造した2000人もの登場人物のうちのひとりが、モンリヴォー将軍だ。

 「小説を書くかわりに、いつでも小説さながらに生きてしまう男」と形容されるこの将軍は、ランジェ公爵夫人に夢中になる・・・。フランス・イタリアによる映画化タイトルは、ずばり『ランジェ公爵夫人』(ジャック・リヴェット監督、2007年公開)。

 この夫人のファースト・ネームはアントワネットで、もちろん皮肉を効かせているのだ。なぜならモンリヴォー将軍はナポレオン軍の英雄であり、時代は王政復古後というのに、彼はブルボン王家に仕えるのを潔(いさぎよ)しとしていなかった(恋は実らないだろう)。

 時は1823年、所はスペインのマヨルカ島。モンリヴォーが長年さがし続けてきたアントワネットが、島のカルメル修道院に隠れている、との情報を得ての来訪だった。

 彼は強引な方法で会見を設定するが、すでに修道女となっていた彼女は、現世の苦しみは全て棄ててしまったと言い放ち、再び院の奥深くへ逃げてしまう。

 なぜアントワネット・ランジェ公爵夫人が、華やかなパリ社交界に背を向けたのか?映画はここから5年前へとさかのぼる。

 ふたりは舞踏会で知り合った。はじめのうち、無骨なモンリヴォーは、恋愛遊戯にかけては百戦錬磨(ひゃくせんれんま)の公爵夫人にさんざん振り回される。近づけば拒まれ、離れれば媚を売られて、痺(しび)れを切らした彼は、夫人を拉致するという強硬手段を取るに至る。

 面白いのはこの先で、貴族の洗練とはほど遠いこの乱暴狼藉によって、今度は夫人の胸に熱い火が点く。彼女が追う番だ。恋文をせっせと書き送り、無視され、絶望し、ついに修道院へ入った。

 するとまた逆転が起こる。単に相手を焦らすつもりだったモンリヴォーは、狂ったように彼女を捜し求め、5年という歳月をかけてマヨルカ島で見つけ出したという次第。再び彼は彼女を、この難攻不落の修道院から拉致しようとするが・・・

 いやはや、ここまでくると、恋それ自体より、恋の駆け引きの方を楽しんでいるようにしか見えない。夫人の修道院入りももしやそのためでは?と勘ぐりたくなるほど。

 恋というのは、望みが叶わなくとも不幸、叶っても不幸、と言った人がいるが、確かにそのとおりかもしれない。 (中野京子)

movieランジェ公爵夫人

__5監督:ジャック・リヴェット
出演:ジャンヌ・バリバール、ギヨーム・ドパルデュー他
公開:2007年

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「怖い絵3」
著者:中野京子
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投稿者 中野京子 2009/06/16 8:35:50 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (2)

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