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2009年8月13日 (木)

ロココの衣装小部屋

忠誠と倹約 ロココの制服

 皆様もご存知の通り、ここベルサイユは、大変しきたりに厳しいところでございます。
 朝から夜遅くまで毎日様々な儀式が決められて、それが破られることはございません。
 その慣例を変えられたのは、王妃マリー・アントワネット様でございます。王妃様が毎朝の引見である、お召し替えの儀式を簡略化され、私ローズ・ベルタンにお任せくださったことは、以前お話し申し上げましたが、それ以外にも、アントワネット様のお輿入れで変わったことはございます。

 一つは、御前に伺う私や髪結い師レオナールなど出入りのものが、パリでも仕事を続けることをお許しになったことです。宮廷でお役目を頂いたものは市井で仕事を続けてはならぬというのが、今までのしきたりでした。それというのも、宮廷内の出来事が噂話のように語られてはいけないとの配慮からでございます。しかしアントワネット様は、モードに関わる者が流行に遅れてはいけないと、私共がパリで仕事を続けることをお許しくださいました。

 もう一つ、格式や家柄に拘らず、御自分と気の合う方々をお側に置かれたことがございます。アントワネット様は、古くから王家にお仕えした家柄より、楽しく気の置けない方とお過ごしになることを好まれたのでございます。そのため、ポリニャック伯爵夫人を始め、王弟プロヴァンス伯爵とアルトワ伯爵、ゲメネ公爵夫人、ヴォードルイユ伯爵、モン=ファルコン(自称ダデマール伯爵)、コワニー伯爵、外国からお見えになったフェルゼン伯爵、騎士エステラジー、リーニュ伯爵など、愉しいお友達をお傍近くに置かれ、堅苦しい方々を遠ざけることとなったのでございます。

 さらに、フランス王妃のお側には常に侍女が控えているものでしたが、堅苦しさを厭うアントワネット様はオーストリアの簡素な慣習を取り入れて、異性の召使も給仕や散歩に伴われるようになりました。王妃様の小姓は12名。金モールで飾られた赤い制服を着て、雑用や行列のお供をいたします。

 その他にも国王陛下、二人の王弟殿下と奥方様に小姓がいて、それぞれお仕着せが支給されます。
 王家に使えるのは貴族の方々ですが、特にお役目を持つ方は、その役職の制服を着用いたします。それぞれの貴族の方々に仕える奉公人は庶民で、執事、門衛、厩舎で働く者、料理人、従僕、侍女などがおります。使用人にはお仕着せが支給され、アルトワ伯爵家のお仕着せは緑、コンデ公爵家のお仕着せは黄色というように、その家ごとに色が定められておりました。

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 お仕着せは騎士道華やかな中世を起源とします。中世の騎士は10代で親元を離れ、諸国を遍歴しながら武芸を磨き、教養を高めていきました。その旅の途中で王に仕官するときに、身に着けている一切を脱ぎ、下着姿で他意の無いことを示した上、王からお仕着せを賜り、それを身に着けたのです。紋章が入り、家を表す色のお仕着せは忠誠を誓う意味を持っていました。そのため、現在も王室のほか、家ごとに色や刺繍が定められているのです。宮廷の控えの間や厩舎に出入りする貴族の奉公人たちは、どの方にお仕えする者かがお仕着せで分かります。
 お仕着せは、やがて使用人に下賜されるものから、宮廷に伺候する方々が着用する制服へと変化していきました。
 フランスのモードはヨーロッパを代表するものですが、このお仕着せ、制服の文化は他国からの影響も受けております。

 アントワネット様の母国オーストリアでは、母后マリア・テレジア様がルクセンブルグ用に、殿方には赤地のアビと緑に金モールのジレを、ご婦人には赤・金・銀を織り込んだローブを宮廷服とされました。
 アントワネット様の兄君、神聖ローマ帝国皇帝ヨーゼフ2世陛下や、ロシアのパウル大公は自ら軍の制服で旅をされたそうでございます。

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 我がフランスでは、先王ルイ15世陛下は華やかな衣装を好まれましたが、宮廷用の制服は少しずつ広まり、ショワジーやクレマシーへと陛下に随行する貴族の方々は、金の縁取りの緑の制服を着用されました。ルイ16世陛下の父君、亡きルイ・フェルディナン王太子殿下は宮廷に連隊の制服で現れたそうでございます。

 また、ポンパドゥール公爵夫人はベルビューの宮殿では赤のウール地に金の刺繍の宮廷制服を殿方に支給されましたし、ショワズール公爵もシャンテルーの城で緑に金のブランドブール(横線のモール刺繍)の制服を許されました。
 このように制服が着用されるようになったのは、勿論どなたにお仕えしているのかが分かり、また、その方への忠誠を尽くすことの表れでございます。しかし、もう一つ、あまりに豪奢で贅沢になった衣装代の倹約でもありました。
 倹約ということでは、先に申しましたような制服を持たない男性が旅をするときには、短いマントに襟が付いた黒い大修道院長の服装です。聖職者の服を着られない男性の中には喪中を装う方もおります。
 黒の衣服は前世紀の流行で、18世紀には少なくなっておりましたが、今世紀も半ばを過ぎ、徐々に黒や暗い色味の衣服が再び流行の兆しを見せております。レース飾りや刺繍が映える黒の衣服は貴族の殿方に、質素なイギリス風の黒の衣服は庶民の男性に着られます。

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 ルイ16世陛下は、午前中は灰色、午後は飾り気の無いウールの制服で過ごされます。フランス国王が軍服以外の制服をお召しになられるのは珍しく、国王陛下の質素なお人柄を象徴するようでございます。
 ただ、お仕着せや制服は女性には一般化しておりません。宮廷では相変わらず王妃様をお手本に、貴婦人方が優美な服装を競っておられます。私の店にも、おかげさまで皆様の御注文が絶えません。
 お屋敷に使える侍女などはお仕着せではなく、流行の先端ではなくなったからと女主人から頂いた絹の服を着用していることもあります。女性の奉公人の中には化粧を施し、見分不相応に着飾る者が現れました。

 何か表が賑やかと思いましたら、オスカル・フランソワ様が従僕のアンドレ・グランディエを従えてお出ましでございます。オスカル様の人気はさることながら、アンドレ・グランディエも宮廷内で中々の人気です。
 アンドレ・グランディエのお仕着せは、この華やかなりし宮廷にあって質実剛健なジャルジェ家らしい渋い緑色。そういえば今月(8月)26日はアンドレの誕生日だと、私の使用人たちが噂しておりました。私の使用人どころか、貴婦人や令嬢方までも心ときめかすとは、緑のお仕着せに黒髪が映えるアンドレ・グランディエも隅に置けません。

※注1:アンドレのお仕着せは、ベルばらkidsで緑を着ているため、緑色と記載しました。
※注2:文中の“アンドレ・グランディエも宮廷内で中々の人気です”は、中公愛蔵版[ベルサイユのばら]第1巻P.88参照

 まだまだ皆様にご紹介したい衣装はございますが、私ローズ・ベルタンは、今回で皆様とお別れすることとなりました。ご愛読ありがとうございました。
 この場を借りて、朝日新聞社のベルばらKidsプラザ編集部の皆さんに厚く御礼申し上げます。

 尚、ここにご紹介できなかったロココの衣装については、安瞳麗のブログ
【薔薇の小部屋 La petite piece de la rose ~ [ベルサイユのばら]の服飾と365日めぐり】
をご覧ください。(安瞳麗

《参考図版》
映画『マリー・アントワネット』((C) 2005 I Want Candy LLC.)より

Photo

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発売・販売元:東北新社
(C) 2005 I Want Candy LLC.

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「当世風結婚 II」ウイリアム・ホガース画 1743年 ナショナル・ギャラリー ロンドン

《参考文献》
・「中公愛蔵版 ベルサイユのばら 第1巻」 池田理代子著 中央公論社 2007年2月25日 34版発行
・「マリ=アントワネット」1 アンドレ・カストロ著 村上光彦訳 みすず書房 1987年3月10日 第12版発行
・「ロココの世界 -十八世紀のフランス」 マックス・フォン・ベーン著 飯塚信雄訳 三修社 2000年11月10日発行
・「モードの生活文化史 2 18世紀から1910年代まで」 マックス・フォン・ベーン著 イングリート・ロシェク編 永野藤夫、井本向二訳 河出書房新社 1990年6月28日 初版発行
・「モードの社会史 西洋近代服の誕生と展開」 熊澤慧子著 有斐閣選書 1991年9月10日 初版発行
・「黒服」 ジョン・ハーヴェイ著 太田良子訳 研究社 1997年11月25日発行

お便り募集このコラムをお読みになった皆さんの感想や質問をお待ちしています。 ⇒こちらの「ベルばらKids専用フォーム」からどうぞ。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/08/13 11:00:00 ロココの衣装小部屋 | | トラックバック (1)

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