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2009年8月11日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

<美女と野獣>逆ヴァージョン 1861年

  ~アントワネット没後68年~

 長らくイタリアはーー列強のフランス・スペイン・オーストリアの政治的思惑の犠牲になりーー分断されたままだった。ようやくサルデーニャ王指導のもと、悲願の統一イタリア王国が誕生したのは、なんと1861年になってからのこと。

 「パッション・ダモーレ」(エットーレ・スコラ監督、1980年制作)は、その統一まもないイタリアを舞台にした、奇妙奇天烈(きてれつ)な恋物語である。

 主人公は祖国統一戦争で華々しい軍功をたてた、若く美貌の騎兵隊長ジョルジョ。恋人は彼に似合いの、麗しい人妻クララ。深く愛し合うふたりだが、ジョルジョに遠い国境警備隊への配属命令が下り、引き離される。

 ジョルジョが到着した辺境の小村は、平和なかわり華やかな社交界もなければろくな娯楽もない、軍人にとっては退屈きわまりない場所だった。彼は大佐の邸に寄宿する。

 邸には大佐の従妹(いとこ)フォスカも同居しており、毎夕、テーブルには彼女の分の食事も並べられるのだが、一度も同席しない。病弱のため終日2階の自室にこもり、読書とピアノで過ごし、よほど具合のいいときしか皆と会食しないのだという。

 そういえば1,2度、怖ろしい悲鳴と、床に倒れる物音を聞いた。どんな病気なのか。軍医が言うには、ジョルジョの赴任以来、彼女の体調は回復傾向の由。時おり流れてくるピアノの調べはすばらしかった。ジョルジョは、まだ見ぬフォスカへの好奇心を募らせてゆく。 

 そしてついに彼女と対面する日が来た。階段からゆっくり下りてくる、ほっそりした女性の姿。明かりが顔を照らし・・・・ジョルジョは驚きに目を見開いて、思わず後じさりする。それほどにもフォスカは醜い女性だった。

 彼の困惑をよそに、フォスカは言う、「あなたが赴任してきたのを窓からそっと見ていました。愛しています」。

 これがジョルジョの受難の始まりだ。彼女は恋文をよこし、食卓では彼の手を握って放さず、勝手に部屋へはいってきてクララの肖像画に嫉妬し、彼が逃げ腰になれば発作を起こしてころげまわった。

 このふたりの女性の名前には意味がある。クララは「昼」「明るさ」、フォスカは「夜」『暗さ」。まさに正反対の存在なのだ。

 ジョルジョはフォスカを見るたび、クララの輝く美しさを思い出して焦がれた。フォスカもそれに気づいているが、かといって身を引く気はない。

 「美女と野獣」の物語においては、醜い野獣は真心をつくして最後は美女の愛を得る。ところがフォスカは、いくらやさしくしたところで相手の愛は得られないと知っているかのように、ただがむしゃらに喰らいついてくる、それも自らの死を脅迫の種として。

 やがてジョルジョは軍医から、愛しているふりをしてやらねばフォスカは死ぬかもしれないと言われる。しぶしぶ病床を訪れると、強引に関係を持たされた。しかもその行為の直後、なんとフォスカは歓びのあまり死んでしまった!

 いやはや大迷惑である。フォスカという女性には、微塵(みじん)も可愛らしさやいじらしさがなく、観客の共感を呼ぶようには描かれていない。欲しいものをしゃにむに手に入れて、幸せに死ぬ。一方ジョルジョは・・・・

 この先はご自分で見てください。あまりにヘンテコで強烈なので、きっと忘れられない映画になるでしょう。 (中野京子)

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「もっと読みたい」との読者の期待に応え、さらに怖い、待望の第三弾!

「怖い絵3」
著者:中野京子
出版社:朝日出版社
発行年月日:2009-06-10
ISBN:9784255004808
価格:¥1,890(税込)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/08/11 8:20:04 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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