2013年2月末をもってブログの更新を終了いたしました。 ⇒詳しく
e-book Japan ベルサイユのばら

0228delete -->

« ベルばら歩数計♪おたより | トップページ | ベルばら遊歩計 »

2009年9月29日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

ガヴァネスから転落すると 1856年

~アントワネット没後63年~

 ガヴァネスは単に「住み込みの女性家庭教師」と訳されることが多いが、正確には、「住み込みで上流階級の子女を教える、本人もレディである家庭教師」のこと(詳しくは拙著『怖い絵3』をお読みください)。

 働く女性は軽蔑されていたヴィクトリア朝時代、ガヴァネスには大変な苦労がつきまとったわけだが、そのうえ仕事をクビにでもなろうものなら、さらなる地獄が待ち受けていた。『フランス軍中尉の女』(カレル・ライス監督、1981年公開)で、そのことがよくわかる。

 この作品は二重構造になっており、1世紀前のイギリスを舞台にした恋愛映画「フランス軍中尉の女」の物語と、それを演じる主演男女の現実の恋物語が、平行して描かれる。

 俳優たちはそれぞれ家庭があるにもかかわらず、映画の中の役柄に引きずられるかのように、不倫の泥沼にはまってゆく(人間心理として、こういうことはありがちであろう)。

 ふたりはベッドの中へも台本を持ちこみ、演技や歴史的背景について語り合う。あるとき、当時の記録を見つけた女優が読み上げるーー

 「1857年のロンドンには、8万人の売春婦がいた。貸家の60軒に1軒は売春宿で、売春婦のほとんどは、クビにされたガヴァネスなど、素人(しろうと)娘だった」

 女優の役がまさしくそのガヴァネスで、しかも皆から後ろ指をさされ、いつクビになるかわからない不安定な状態にあるとの設定なのだ。蔑(さげす)まれている理由というのは、かつて妻子あるフランス軍中尉に遊ばれ捨てられた「恥さらし者」(!)だから。

 男優の役は、そんな彼女の悲劇的横顔を一目見た刹那(せつな)、激しい恋に落ちる考古学者。身分違いではあり、婚約者もいるため、不毛の恋は諦めねば、と思いつつ、どうにもならないほどのめり込んでゆく。

 やがて互いの思いを確認しあうが、その直後、なぜか彼女は忽然(こつぜん)と行方をくらましてしまう。いったいどうして?--妄執の末、3年もかけて探し出すと、なんと彼女は・・・・。

 製作中の映画には、ハッピーエンドとアンハッピーエンドの2種類が候補にあがっており、最終的には監督の判断で決まるという。

 観客は不安になる。果たして彼らは結ばれるのか、それとも無惨な別れが待っているのだろうか、映画も、そして現実にもだ。

 この先は、どうぞご自分で確かめてください。ラスト、思わず相手を役名で呼びかけ、そのことに本人も愕然とする、というシーンを見れば、愛という名の深淵(しんえん)をのぞいたような眩暈(めまい)を感じるでしょう。 (中野京子)

movieフランス軍中尉の女

監督: カレル・ライス
出演: メリル・ストリープ、ジェレミー・アイアンズ他
公開: 1981年

⇒Amazon.co.jp on asahi.com で「フランス軍中尉の女」のDVDを検索

book      book      book

『ゴッドファーザー』の母の役割とは? 『マトリックス』の電話の皮肉とは? 古今東西の傑作をめぐりながら、映画の新たな楽しみをご案内します。

「恐怖と愛の映画102」
著者:中野京子
出版社:文藝春秋
発行年月日:2009-07-10
ISBN:978-4-16-775384-9
価格:¥650(税込)

アサヒ・コムBOOKで詳しい内容を見る

お便り募集このコラムをお読みになった皆さんの感想や質問をお待ちしています。 ⇒こちらの「ベルばらKids専用フォーム」からどうぞ。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/09/29 8:40:14 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165303/46342363

この記事へのトラックバック一覧です: ガヴァネスから転落すると 1856年:

» THEハプスブルク展開幕! トラックバック 中野京子の「花つむひとの部屋」
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇>」23回目の今日は、「ガヴァネスから転落すると」⇒(あらら、パソコンがおかしくて出てきません。ベルばらkidsぷらざで検索お願いいたします)  メリル・ストリープ(演技のうまさに舌を巻きます)とジェレミー・アイアンズ(すてき♪)主演の「フランス軍中尉の女」について書きました。この映画の評判はずっと聞いていたのですが、なぜか食指が動かず、ようやく今年になってツタヤで借りたのですが、あまりに面白くてついDVDも購入してしまい... 続きを読む

受信: 2009/09/29 10:10:25