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2009年9月18日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

究極の片想い

 恋愛は喜びでもあるが、いっそ恋愛なんぞしないほうがいいと思うほど、耐え難い苦しみになることがある。
 愛する人となんらかしらの理由でなかなか会えないとか、ちょっとした行き違いでケンカをしてしまったとか、そういうことも確かに苦しい。
 しかし、最大の苦しみは、いくら想っても絶対に振り向いてもらえない人を愛してしまうことだろう。

 『ベルサイユのばら』でもそんな苦しい片思いの葛藤が描かれている。
 オスカルフェルゼンに、ジェローデルがオスカルに叶わぬ恋をしていた。

 ギリシャ神話でもたくさんの片想いのエピソードがあるが、究極なのはエコーナルキッソスの片思いだろう。

 エコーというニンフは、大変おしゃべりだった。
 そして、お節介で、向こう見ずでもあった。

 ある時、エコーの仲間のあるニンフに恋をした神々の王ゼウスは、彼女の元に足しげく通うようになった。しかし、それはゼウスの正妻である女神ヘラの知るところとなり、嫉妬にかられたヘラは夫の後を追ってきた。エコーはそんなヘラを得意のおしゃべりで足止めし、ゼウスとその恋人であるニンフを逃がしてしまう。
 この行為に怒ったヘラは、エコーが自分から言葉を発する能力を奪ってしまう。しかし、誰かが発した言葉を全く同じように繰り返すことだけは許してやった。

 エコーはその後美青年ナルキッソスに恋をした。
 ナルキッソスは、自分の気持ちを声に出せないエコーのことはもちろん、彼に恋をした他の女性たちにも冷淡な態度をとり続けた。それは、彼女たちの切ない気持ちをさげすむようですらあった。
 可愛さあまって、憎さ100倍。
 徹底的に想いを退けられた女性たちは次第にナルキッソスを憎むようになった。
 彼女たちはついに復讐の女神ネメシスにナルキッソスが自分たちに味わせた苦しみに対して復讐してくれるようにと願った。

 かくて、ネメシスは女性たちの怨嗟の声に答え、ナルキッソスに究極の片想いを与えたのである。

 ある日ナルキッソスが湖で水を飲んでいると、その水面に今まで見たことがないまさに理想の美青年の姿が映った。そう、それは、湖に映ったナルキッソス本人なのだが、ナルキッソスはこの想いにすっかりとりつかれてしまった。
 自分なのだから、抱きしめることも、愛の言葉に答えてくれることも、けっしてないのだが、ナルキッソスは寝食も忘れて、水面に映る自分自身を見つめ続けた。そして、ついにナルキッソスはそのまま力尽きてしまう。「むなしい恋の相手だった青年よ!さようなら!」という言葉を残して。

 そして、ナルキッソスを見つめ続けていたエコーはこの瞬間、言えなかった自分の想いをナルキッソスに言えたのだ。「むなしい恋の相手だった青年よ!さようなら!」と。

 このエピソードは「ナルシスト」(うぬぼれや)の語源として有名なので、ナルキッソスの自己愛ばかりが印象的だが、実は元々は相手に気持ちが伝わらない苦しみを表現したものなのだ。

 神話では相手に気持ちが伝わないまま、苦しみぬいてエピソードは終わっているが、どうにかこの苦しみから解放される方法はないものだろうか。
 そのヒントは、『ベルサイユのばら』にあるように思える。
 オスカルにせよ、ジェローデルにせよ、徹底的に相手を愛しぬいて、そんな自分に満足して爽やかにあきらめている。
 愛は深く真っ直ぐに、引き際は美しく。
 そうはいっても、なかなか生身の人間には難しいことだと思うが。
米倉敦子) 

《参考文献》
「もう一度学びたいギリシア神話」 松村一男監修 株式会社西東社
「変身物語」オウィディウス著 中村善也訳 岩波文庫

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/09/18 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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