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2009年10月16日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

フランス革命の影の立役者~「噂」の女神ペーメー

 フランス革命の影の立役者、それは言論、ジャーナリズムである。
 特にオーストリアからフランスに嫁いできた王妃マリー・アントワネットにとって、その影響力はとても大きかった。

 マリー・アントワネットは国民に不人気だったことばかりが印象に残るが、元々国民は可憐な容姿のアントワネットに憧れ、むしろ期待していた。『ベルサイユのばら』でも王妃即位当時の様子を「いまや古い時代は去った。若々しい19歳の国王と18歳の王妃……!フランス国民は熱狂し期待に胸をはずませてふたりをむかえた」と記述している。
 フランス国民は、愛妾が幅を利かせる腐敗したルイ15世の治世に嫌気がさしていた。
 だからこそ、彼らは若く倹約家でクリーンなルイ16世と、見目麗しく高貴なアントワネット王妃にたぶん過剰な期待を抱いたのではないだろうか。きっとこれからは、たちどころに生活は楽になると。

 しかし、過剰な期待が裏切られた反動はあまりにも大きい。
 治世が変わっても一向に生活が良くはならないと自覚しだした国民はその怒りの矛先をアントワネットに向けた。
 浪費と享楽の権化として槍玉にあげられたアントワネットは、ジャーナリストたちの格好の餌食となり、新聞や風刺画でどぎつく書きたてられ、すっかり悪政のシンボルとなってしまう。
 誇り高いアントワネットは言論を下世話な噂話と無視していた。
だが、下世話な噂話でもその根底には国民からの抜き差しなら無い敵意があったわけであるから、それは無視していいものではなかっただろう。
 結局それはアントワネットにとって命取りとなってしまった。

 ギリシャ、ローマ時代に「ジャーナリスト」という職業はないが、ギリシャ人もローマ人も「言論」「噂」の力を大いに意識していた。
 「言論」「噂」を司る女神は、ギリシャ時代にはペーメー、ローマ時代にはファーマと呼ばれた。ペーメーは、神々の王ゼウスにとって祖母にあたる大地母神ガイアが生んだ娘で、人々に恐れ敬われる原始の女神なのである。
 このペーメーの家は陸、海、天界の真ん中にあたる場所にあるとされている。
 その家には無数の入り口と、おびただしい数の窓はあるのだが、敷居をふさぐための戸は一切無い。昼も夜も開け放しのその家では、世界中からやってくる声が常に響いている。そして、家の広場では、無数のでたらめな話がひしめきあっていて、また、新たな作り話がここで増産されていく。
 この家の住人は、「軽信」や、不用意な「錯覚」や、いわれのない「喜び」、取り乱した「恐怖」、出所のあいまいな「囁き」、そして、不意の「反乱」である。
 「噂」の女神の住人の中に不意の「反乱」とあるのが、アントワネットの不人気からフランス革命へとつながる過程を連想させるではないか。

 メディアの中心が紙でしなかったフランス革命当時に比べると、思えば現代はどこもかしこも世界中ペーメーの家状態かもしれない。
 今や複数のメディアを通して、ありとあらゆる世界中の「噂」が自分の家に押し寄せてきている。
 そして、今日の人気者が、明日は嫌われ者という現象が毎日のように起こっている。
現代こそが、この女神ペーメーの時代といえるのだろう。(米倉敦子) 

《参考文献》
「変身物語」オウィディウス著 中村善也訳 岩波文庫
『ギリシア・ローマ神話辞典』 高津春繁著 岩波文庫

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/10/16 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (1)

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