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2009年10月13日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

全世界に見つめられながら 1772年

  ~アントワネット17歳~

 ハプスブルク家二大美女と謳(うた)われる、エリザベート皇后とマリー・アントワネット。前者は世界的に大ヒットしたウィーン産ミュージカルをはじめ、ヴィスコンティの傑作『ルートヴィヒ』での鮮烈なシシィ(ロミー・シュナイダーのはまり役)など、劇化にも映画化にも恵まれているが、後者にはさほどのものがなかった。

 そこで最新作『マリー・アントワネット』(ソフィア・コッポラ監督、2007年公開)に期待が集まったわけだが・・・・賛否両論渦巻くのもやむなし、という少々残念な出来であった。

 作り手はどうやら史実にはほとんど関心がなく、ある種の気分をスクリーン上に醸(かも)すことをのみ目指したらしい。

 その意味では、眼はじゅうぶん楽しめた(耳の方は、これまた賛否両論だ)。衣装、装飾品、インテリア、食べものの、何と美しいこと。ロココという時代が、パステルカラーに代表される、きわめて女性的な、また刹那的な華やかさに彩られていたことがよく表現されていた。

 けれど背景の歴史が軽んじられているため、せっかくベルサイユ宮殿で撮影されたというのに、その広大さが全くあらわれていない。自分の視界に入る、ほんの限られた部分にしか興味がないからだろう。ひいては人間性の深さ広さ複雑さにも、分け入ろうとしないからだ。

 「恋をした、朝まで遊んだ、全世界に見つめられながら」という映画コピーはなかなか冴えていた。だがアントワネットは恋もしない。火遊びのみ。

 ツヴァイク原作『マリー・アントワネット』の、重厚な映画化が切に望まれる。

 それはさておき、本作のデュ・バリー夫人の描き方について一言。彼女とアントワネットの有名な確執(かくしつ)--1772年、周囲からの圧力に屈したアントワネットが、ルイ15世のこの寵姫(ちょうき)に、祝賀の席でしぶしぶ声をかけたこと--には触れてあった。

 ところがこのデュ・バリー、黒目、黒髪で、ことさらに下品な言動、傍若無人の態度の、人好きしないタイプに描かれていた。現実の彼女は、ヴィジェ=ルブランの肖像画に見られるとおり、金髪で淡い瞳、抜けるような白い肌の優美な女性だったのに。

 宮廷デビューの際も、彼女は意地悪な貴族たちをノックアウトしたと言われる。下層階級出身で、かつては娼婦まがいをしていたというので、笑ってやろうと手ぐすねひいて待ちかまえていた彼らの前にデュ・バリーが登場するや、誰もがその美貌に息を呑んだからだ。

 であればこそアントワネットも初めて彼女を目にしたとき、「あの方はどなた?」とお付きの者に訊ねたのである。それは決してこの映画の彼女のように、下品さで際立っていたからではない。

 一事が万事。 (中野京子)

movieマリー・アントワネット

Photo_2監督: ソフィア・コッポラ
出演: キルスティン・ダンスト、ジェイソン・シュワルツマン他
公開: 2007年

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/10/13 8:32:37 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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