2013年2月末をもってブログの更新を終了いたしました。 ⇒詳しく
e-book Japan ベルサイユのばら

0228delete -->

« 今週のベルばらKidsは「ベルサイユの趣味人」 | トップページ | ベルばらde告白劇場(6) »

2009年11月24日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

3時10分発、ユマ行き 1865年

  ~アントワネット没後72年~

 アメリカを二分し、深い爪痕(つめあと)を残した南北戦争は、1865年にようやく終わる。勝った北軍の兵士も、負けた南軍の兵士も、三々五々、故郷へ帰っていった。

 久々の傑作西部劇『3時10分、決断のとき』(ジェームズ・マンゴールド監督、2009年公開)の舞台は、戦争から数年を経たアリゾナ州だ。

 北軍兵士として戦って片脚を失い、わずかな慰労金で除隊させられたエヴァンスが、妻子とともに小さな牧場を経営している。だが彼の土地に鉄道を敷こうととする事業主から、さまざまな嫌がらせを受け、有効な抵抗もできず借金はふくらむばかりで、父親としての権威も失墜しきっている。

 ある日、14歳の息子を伴って町へ行く道すがら、伝説的無法者ウェイドが仲間と駅馬車を襲う場に遭遇(そうぐう)した。ウェイドの早撃ちの腕前と、非情なやり口に、少年は半ば魅了されたようになる。

 その後ウェイドは酒場の女とベッドを共にするという油断から逮捕され、裁判所のあるユマまで移送されることになった。ユマ行き3時10分発の列車(これがオリジナル・タイトル)に乗せるまでの護送は、彼を奪還しようとする仲間やアパッチの襲撃をかわしながらの命がけの仕事だが、エヴァンスはそれに名乗りをあげる。

 200ドルという報奨金が欲しいのはもちろんだが、正義のため命を張る姿を見せることで、息子が悪の道へ踏み入るのを防ぎたかった。父を誇りと感じてほしかった。

 こうして駅までの多難の道行きは始まる。途中の鉄道建設現場では、当時、奴隷のごとくこき使われていた中国人苦力(クーリー)たちの姿が描かれ、「大陸横断鉄道の枕木(まくらぎ)は、クーリーたちの血と骨からできている」という言葉が実感される。

 また護送人のひとりはかつて騎兵隊員としてインディアン部落を皆殺しにした男で、彼がウェイドを責める矛盾が皮肉られるなど、アメリカ建国時の苦い現実が作品に厚みをもたらしている。

 何よりかにより、強盗団の頭目(とうもく)ウェイドに、昔ながらのアウトロー的魅力がたっぷりだ。人殺しの無法者ではあるが、彼は彼なりの任侠道(?)にしたがい、意気に感じれば損を承知で行動する。悲しい眼差しを持ち、教養があり、達者な絵を描き、周囲の人間をーー男も女もーー強烈に惹きつける。

 いったいエヴァンスは、自分よりはるかに立ち勝るこんな男を、ちゃんと駅まで護送できるのか?思惑どおり、男を上げ、息子の尊敬を得られるのか?

 ウェイドとエヴァンス、この正反対のふたりの男が互いに自己をさらけだすシーンが胸を打つ。ラストもしゃれている。西部劇は苦手という女性は多いと思うが、たまにはどうでしょうか。 (中野京子)

movie3時10分、決断のとき

監督: ジェームズ・マンゴールド
出演: ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイル他
公開: 2009年

⇒Amazon.co.jp on asahi.com で「3時10分、決断のとき」のDVDを検索

karaoke      karaoke      karaoke

★中野京子さんの講演情報をご案内します。

★多摩美大・生涯学習センター一日講座
日時 12月1日(火) 14時~15時半
場所 多摩美術大学上野毛キャンパス
⇒詳細はこちら

★「THEハプスブルク」京都展 記念講演
日時 2010年1月31日(日) 午後14時~15時半
会場 ハイアットリージェンシー京都
⇒詳細はこちら

お便り募集このコラムをお読みになった皆さんの感想や質問をお待ちしています。 ⇒こちらの「ベルばらKids専用フォーム」からどうぞ。

投稿者 中野京子 2009/11/24 8:42:39 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165303/46846510

この記事へのトラックバック一覧です: 3時10分発、ユマ行き 1865年:

» 両性具有の起源 トラックバック 中野京子の「花つむひとの部屋」
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画編>」第27回の今日は、「3時10分発ユマ行き」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2009/11/post-0577.html#more  ラッセル・クロウがとてもカッコ良かった「3時10分、決断のとき」について書きました(彼はグラディエーターよりアウトローの方が似合う)。  西部劇の人気が、これ以上ないほど沈下してしまったせいか、上質のエンターテインメント作品なのに日本での公... 続きを読む

受信: 2009/11/24 9:20:01