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2009年11月10日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

奇跡的めぐりあわせ 1887年

  ~アントワネット没後94年~

 今回とりあげる映画も、住み込みの家庭教師がヒロイン。「ガヴァネスから転落すると」で書いたように、女性の職場がほとんどなかった時代には、与えられた仕事に不平不満など言っていられない。アニー・サリヴァンもまた、見えず聞こえず喋れずの三重苦の少女のガヴァネスという困難きわまりない役を、壮絶な覚悟で引き受けたのだった。

 『奇跡の人』(アーサー・ペン監督、1962年公開)の原題は「The Miracle Worker=奇跡を起こす人」だ。つまりこれは、三重苦を克服したヘレン・ケラーを指すのではなく、ヘレンの上に奇跡を起こしたサリヴァン先生その人のことである。

 実在したガヴァネスの空前絶後の例といえば、ノーベル賞を2度も受賞したマリー・キュリーをおいて他にない(拙著『歴史が語る 恋の嵐』をお読みください)。そして彼女に次ぐ驚異のガヴァネスが、このアニー・サリヴァンであろう。

 1887年、アラバマ州の地主ケラー家に赴任してきたとき、サリヴァンはまだたった20歳。だが逆にこの若さのエネルギーががむしゃらな粘りを生み、奇跡を成し遂げたともいえる。なにしろ彼女には、ここで失敗したら帰る場所などなかった。

 零落したお嬢様の多いヨーロッパのガヴァネスと違い、サリヴァンの生育歴は悲惨だ。貧しい移民の子として生まれ、母亡き後、父に救貧院へ送られた彼女は、10歳で眼の病気が悪化し盲目になった。深い欝(うつ)に陥り、断食して死のうとしたことさえある。

 幸い14歳で盲学校へ入学、訓練と手術で視力を回復すると(光には弱く、終生サングラスをかけていたが)、たちまち優れた知力を示し、成績最優秀で卒業した。

 ところが就職先がない。どんなに優秀でも弱視と階級の低さがネックとなったからだ。悶々とするうち、グラハム・ベル(電話の発明で知られる)の伝手(つて)でようやくケラー家への推薦が決まった。

 --サリヴァンとヘレンの出会いは、まさに奇跡としか言いようがない。この出会いがなければ、おそらくふたりとも人生を取りこぼしていたのではないだろうか。

 甘やかされ、獣のようにただ食べて寝るだけのヘレンを、サリヴァンは「人間」として鍛えなおす。その過程のなかで、サリヴァン自身もまた愛を知り、生きがいを得、人生の醍醐味を知るのだ。

 ラストの感動は筆舌に尽くしがたい。 (中野京子)

movie奇跡の人

1110__2監督: アーサー・ペン
出演: アン・バンクロフト、パティ・デューク他
公開: 1962年

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『ゴッドファーザー』の母の役割とは? 『マトリックス』の電話の皮肉とは? 古今東西の傑作をめぐりながら、映画の新たな楽しみをご案内します。

「恐怖と愛の映画102」
著者:中野京子
出版社:文藝春秋
発行年月日:2009-07-10
ISBN:978-4-16-775384-9
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/11/10 8:29:47 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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