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2009年12月28日 (月)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

悲しいギリシャ神話版「鬼子母神」の物語

 『ベルサイユのばら』は、マリー・アントワネットが誕生した1755年から彼女が亡くなる1793年までが描かれている。
 この長い年月の間、アントワネットは幼女から少女、若い女性、そして大人の女性へと成長していく。

 アントワネットは少女時代にフランス嫁ぎ、まだ若い時代に王妃となっている。では、若い女性から大人の姿へと変身したのはいつかというと、はじめての子どもマリー・テレーズの出産後なのである。アントワネットはそれ以降、貫禄すら感じさせる大人の女性になっているのである。

 姿ばかりではなく、母親となったアントワネットは毎晩の舞踏会通い賭博をやめて、子どもたちを「わたくしの宝物」と呼び、すっかり落ち着いたよい母親になっている。退屈することを恐れている、浮ついた若い女性であったのが嘘のようだ。
 それほどまでに子どもは女性を変える力があり、まさに母親たちにとって子どもは「命」なのだろう。

 ギリシャ神話でも、たくさんの母性に関するエピソードがある。
 その中には、読んでいて心洗われるようなもの、感動的なものもあるが、一番多いのは悲しいエピソードだ。そして、私が最も気の毒に思ったのは、ラミアに関するエピソードである。

 ローマ時代、乳母たちは、自分の養い子がイタズラをしたり、言うことを聞かなかったりした時、「悪い子のところにはラミアが来ますよ」と言った。
 それを聞くと、子どもたちは震え上がって、乳母たちの言いつけを守ったのだ。
ラミアというのは、子どもをさらう醜い怪物、また、子どもにとりついて、血を吸う女吸血鬼のことなのである。

 しかし、このラミア、はじめから子どもを害する怪物だったのではない。実は元々はなによりも子どもを愛した母親だったのだ。
 ラミアはリビアを支配した女王で、とても美しかったという。神々の王ゼウスは、ラミアの美貌に惹かれ、彼女を愛した。そうして、ラミアはゼウスとの間に子どもを授かった。
 だが、このことはゼウスの正妻である女神ヘラの怒りを買った。ヘラは自分の誇りを傷つけるものを絶対に許さない。そして、ヘラは相手がどうすれば一番苦しむのかを常に熟知している。ヘラはラミアの子どもを奪い、殺してしまったのである。
 子どもを奪われたラミアは、その悲しみのために醜い姿になり、子どもを持つほかの母親たちへの嫉妬から子どもたちを奪うようになった。
 そして、ヘラの復讐はこれだけでは終わらなかった。ヘラは怪物となったラミアから眠りを奪った。そのため、眠ることのできなくなったラミアは、日夜問わずに生贄となる子どもを求めてさ迷い続けるようになってしまった。
 あまりに哀れで浅ましいラミアの姿を見かねたゼウスは、ラミアがその眼を外してしまっておけるにようにしてやった。眼を外している間だけはラミアは眠りにつくことができるので、子どもたちの安全が守られるのである。

 ラミアのエピソードは、仏教の「鬼子母神」を連想させるが、鬼子母神が釈迦によって子どもを奪われた他の母親の悲しみを知らされ改心したのに対して、ラミアの場合はまったくの逆パターン。それでもどちらも根本には深い母性愛があるだけに、一層ラミアのエピソードは悲しく感じられる。

 マリー・アントワネットの愛した子どもたちは、2人が革命前に死に、あとの2人にも過酷な運命が待っていた。
 特にルイ17世こと、ルイ・シャルルは革命派の復讐の餌食となり、虐待の末、軟禁されて亡くなった。その前にアントワネット自身が亡くなっており、そのことを知らなかったのは本当に幸いなことだと思う。もしも、アントワネットがシャルルの最後を知ったなら、ラミアの気持ちが自分のものとして痛いほど感じられたことだろう。(米倉敦子

《参考文献》

『ギリシア・ローマ神話辞典』 高津春繁著 岩波文庫
『ギリシアの神話 神々の時代』 カール・ケレーニイ著 植田兼義訳 中公文庫

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2009/12/28 10:03:30 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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