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2009年12月 8日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

情事と化す晩餐 1871年

  ~アントワネット没後78年~

 王政復古への危機感や普仏戦争の大敗に怒ったパリの労働者たちは、1871年、革命自治政府を樹立した。これが「パリ・コミューン」だ。しかしわずか72日後、プロイセンの後ろ盾を得たティエール政権に叩きつぶされ、3万人もの市民虐殺という惨澹(さんたん)たる結果で終わりを告げた。

 「血の一週間」と呼ばれたこの虐殺で夫と子どもたちを失った女性バベットが、デンマークの小さな浜辺の村へ逃げてくる・・・・『バベットの晩餐会』(ガブリエル・アクセル監督、1988年公開)はこうして始まる。

 バベットを住み込みの家政婦として雇い入れたのは、ルター派の牧師を父に持つふたりの老いた姉妹。すでに父は死去しており、彼女たちはつましい暮らしの中で、村に善行をほどこしながら信仰に生きていた。

 こうした姉妹との静かな毎日のうち、バベットは次第に心身とも癒されてゆく。10年ほどたったある日、パリからバベットへ驚くべき知らせが -- なんと、1万フランの宝くじに当選したという!

 余生を安楽に暮らせる大金。しかしバベットはそのお金で、世話になった人々を晩餐でもてなしたい、と申し出る。姉妹の反対を押し切り、彼女はさっさと材料選びに出かけた。

 やがてフランスから、次々に高価な食材が到着する。海亀、キャビア、うずら、ブルーチーズ、フォアグラ、シャンパン、コニャック・・・・。そしてバベットは、村の誰ひとり、これまで見たことも聞いたこともない絢爛たる料理に取りかかる。

 禁欲的なプロテスタント姉妹は震えあがった。神罰が下るのではないかと恐れたのだ。そこで他の招待客と口裏をあわせ、食事中、決して食べ物の話はしないこと、味覚がないかのごとく振舞うことを約束してテーブルについた。

 目の前にくりひろげられる華麗な料理の数々。みんな最初、天候の話などをしながら、しかめ面で食べ始めるが、あまりの美味しさに少しずつ心がほぐれ、表情はゆるみ、食べる歓びを全身で肯定せざるを得なくなる。部屋には、さざなみのように微笑と愛と幸福感が拡がってゆく。

 実はバベットは革命前、パリの高級レストランで名を馳せた女性シェフであった。その完璧な創作料理は情事にたとえられ、「もはや肉体的欲求と精神的欲求の区別がつかない」と賞讃されたほどの。

 食後、村人は生きる新たなエネルギーを得て家路についた。「せっかくの賞金を使い果たし、貧しくなるのでは」という姉妹の心配に、バベットは答える、「貧しい芸術家というものはいません」。

 この心意気!

 それはそうとして、プロテスタント諸国の無味乾燥な料理とカトリック諸国の美味なる料理の差は、未だ解消する気配もなさそうだが・・・・。 (中野京子)

movieバベットの晩餐会

監督: ガブリエル・アクセル
出演: ステファーヌ・オードラン他
公開: 1988年

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投稿者 中野京子 2009/12/08 9:19:05 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画編>」第28回の今日は、「情事と化す晩餐」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2009/12/post-3a40.html#more  変わった味わいの『バベットの晩餐会』について書きました。  タイトルに「情事」と入れましたが、これはバベットの作る料理があまりにすばらしいため情事に譬えられた、というところからきたもので、映画の中には情事のシーンは皆無です。  それにしてもあれ... 続きを読む

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