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2010年2月19日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

小悪党の末路~ド・ゲメネ公爵と小アイアス

 「ド・ゲメネ公爵」と書いても、相当な『ベルサイユのばら』ファンでもすぐに「ああ、あの人ね!」とは思わないだろう。
 『ベルサイユのばら』といえば、きらびやかな悪女たちだが、ド・ゲメネ公爵の活躍(?)はそれに比べると、かなり地味といえる。
 ロザリーのお隣に住む幼いピエール坊やが、ド・ゲメネ公爵の馬車からお金を盗んでしまう。2日も前から何も食べていない可哀想なその子を、彼はいったん許してやったふりをして、銃で撃ち殺し、大笑いして去っていく。

 また、王妃マリー・アントワネットは晩餐の席で、ド・ゲメネ公爵に朝の引見と一般の謁見を取りやめようと思っていると話す。彼は、「フランス王后ともあろうお方が身分の低いものたちにわざわざ謁見を許す必要はない」と即座に同意する。
 要するに、ド・ゲメネ公爵は、卑怯で残酷な悪徳貴族の代表なのである。
 物語の役割としては、清廉潔白なオスカルの勇に優しい面をより引き立たせるためにいるような人物だが、実際にそういった貴族はフランス革命前夜には存在したのだろう。
 力で弱い者を搾取し、支配することになれた彼らにとって、パリの道端でお腹をすかしているちっぽけな子どもなど、なんの価値もない存在。彼らを殺すのは、草を踏みつけるのと同じこと。
 自ら女の身だからこそ、弱い者への同情心も強く、心優しいオスカルとはまったく相容れるわけのない人物である。

 そんなド・ゲメネ公爵を思わせる人物がギリシャ神話にも登場する。
 トロイア戦争で、ギリシャ軍の将軍として戦った小アイアスである。
 小アイアスが、なぜあえて「小」とされるかのかというと、彼が背が低かったからであるのと、同じギリシャ軍の将軍に大きなアイアスがいたからである。
 そして、この2人のアイアスは、常に対として考えられている。大きいアイアスは、身体が大きく、豪腕で、正面から敵にぶつかっていく猪突猛進派。それに対して、小アイアスは、俊足ではしっこい、頭脳派。おまけに、この小アイアス、高慢で自分のほうが神よりも賢いとすら思っていた。
 
 トロイア陥落後、小アイアスは、トロイアの王女カッサンドラを襲う。王女は女神アテナの神像にすがり助けを求めるが、小アイアスは女神の威光も意に介さず、彼女を犯してしまう。この非道で不敬な振る舞いに、他のギリシャ人の将軍が小アイアスを罰しようとするが、今度は彼がアテナの神像の元に逃げて、難を逃れる。

 自分は神すら手玉に取ることができると小アイアスは思い上がっていた。
 ギリシャへの帰国の時難破した際も小アイアスは、1人岩山に泳ぎつき、九死に一生を得る。
 しかし、女神アテナの怒りはその時、頂点に達していた。
 アテナは、海の神ポセイドンに「この小賢しい人間に罰を与えてほしい」と頼む。
 ポセイドンは、すぐさまその声に答え、手にした三叉の槍を小アイアスがすがりついている岩山に振り落とす。かくて、岩山は打砕かれ、小アイアスは海の藻屑となったのであった。

 ド・ゲメネ公爵はフランス革命後、どうしたのだろうか。
 最後までブルボン王家と運命を共にするなんて殊勝なことはなさそうだから、外国へとさっさと亡命したことは間違いないだろう。
 しかし、世の中は移り変わり、生まれだけで横暴に振舞って許される時代は終ったのだから、やはりどこかで今までのつけを払わされていたのではないかと思えてならない。!(米倉敦子


《参考文献》
『ギリシア・ローマ神話辞典』 高津春繁著 岩波文庫
『ギリシアの神話 神々の時代』 カール・ケレーニイ著 植田兼義訳 中公文庫

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/02/19 14:01:42 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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