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2010年4月13日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

自分で自分の身体にメス 1805年

~アントワネット没後12年~

 ヨーロッパ制覇(せいは)をもくろむナポレオンに、イギリスは伝統の海軍で激しく抵抗する。地上と同様、海もまた大戦場となった。

 そんな時代を描いたパトリック・オブライエン原作『オーブリーとマチュリン』シリーズが、『マスター・アンド・コマンダー』(ピーター・ウィアー監督、2003年公開)のタイトルで映画化された。

 1805年、オーブリー艦長ひきいるフリゲート艦サプライズ号に下された命令は、フランスの私掠(しりゃく)船アケロン号を阻止せよ、撃沈(げきちん)してもかまわない、というもの。

 だが乗員200人足らずのサプライズ号に対し、私掠船とはいえ、敵ははるかに大きい(もちろんどちらも帆船)。両者は追いつ追われつ、戦闘もまじえながら、遠くガラパゴス諸島までゆく。

 これは派手な戦争映画というより、緻密(ちみつ)な歴史映画というのに近い。細部に神が宿り、いちいちのディテールが興味深く、面白い。

 航行中は、ある種、退屈な日常生活である。各自のルーティンワーク、船内で食用に飼われている牛や山羊、六分儀による天体観測、島で集めた昆虫の標本作り・・・。

 乗員の中には、まだ13歳の少年たちも混じる。手に刺青を彫った古参兵もいる。軍隊における階級差はもちろん、現代では想像もつかない身分差もある。

 主人公ふたり――艦長オーブリーと軍医マチュリン――は、すばらしく魅力的だ。前者はいかにも歴戦の勇士らしく、後者は学者肌。親友どうしの彼らは、食後にヴァイオリンとチェロの合奏をして楽しむ。

 こんな大きな楽器を戦艦に載せることに驚いた。まだ戦争が優雅な一面を残していたとも言えるし、イギリス人というのはどこへ赴任しようと絶対ライフスタイルを変えないのだな、と妙に感心する(モームの小説にもそんなことが書いてあった)。

 とはいえ、戦闘がはじまれば命がかかる。マチュリンも軍刀をふるって戦い、腹に負傷した。そしてなんと・・・・自分で自分を手術する!

 単純に、船には軍医ひとりいればいいと考えがちだが、本人にしてみれば、自分が倒れたら誰にも救けを得られないということだ。半端な助手しかいないのだから、なるほど、こうなる。

 ベッドに横たわり、血を吸わせるための砂を床に撒(ま)かせ(なんとリアルな・・・・)、鏡を持った助手を脇に立たせる。その鏡に映る患部を見ながら、メスを入れるのだ。痛みで気絶してはお終いだ。

 きっと現実にも、これと似たことは無数にあったに違いない。壮絶。 (中野京子)

movieマスター・アンド・コマンダー

Photo

監督: ピーター・ウィアー
出演: ラッセル・クロウ、ポール・ベタニー他
公開: 2003年

⇒Amazon.co.jp on asahi.com で「マスター・アンド・コマンダー」のDVDを検索

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/04/13 8:37:49 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇>」第36回の今日は、「自分で自分の身体にメス」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2010/04/post-dc72.html#more  ナポレオン戦争を舞台にした海洋映画「マスター・アンド・コマンダー」について書きました。  ポール・ベタニーが軍医役で、自分で自分の手術をするシーンでしたが、いやあ、こっちまで油汗が出そうなほどの迫力でした。  さて、最近読んだ本でお勧め... 続きを読む

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