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2010年6月29日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

獣の正体は謎のまま 1764年

  ~アントワネット9歳~

 犬と狼は同じイヌ科に属し、見た目はあまり変わらない。なのに人間との関わりにおいて、一方は忠実な友として愛され、他方は悪魔なみに敵視されている。フランス語で「たそがれ時」のことを「犬と狼のあいだ」と表現するが、それは薄闇の迫るころ前から近づいてくる動物が、無害な犬かそれとも危険な狼か、すぐには判別つかない恐怖を示すものだ。

 ルイ十五世治世下の1764年、フランス南部のジェヴォーダン地方に、狼に似た謎の野獣が出現し、数年にわたって暴れまわり、100人以上の人間を殺した。その事実を下敷きに、『ジェヴォーダンの獣』(クリストフ・ガンズ監督、2001年公開)は、ひとつの仮説をたてている。

 これから見る人のために、その推理部分を明かせないのは残念だが、なかなか悪くない解決が取られている。ただし映画自体は、せっかくのその政治ミステリにさほど重きを置かず、ひたすら格闘シーンに力を入れている。

 スローモーションを多用した殴りあいは、まるでアメコミのフランス版。突っ込みどころ満載のB級アクション映画になっていて、アメリカからヨーロッパへ連れてこられたモホーク族のインディアンが、なぜかカンフー・アクションを見せたりする。

 おもしろい台詞もあった。売春宿の妖しいイタリア女性、曰く、「フィレンツェの妻は、夫を毎晩早く帰宅させるため、朝、少量の毒入り飲み物をのませ、帰ったら解毒剤を与える」――メディチ家ジョーク?

 さて、現実のジェヴォーダンの獣について言えば、これは当時から諸説あった。単に巨大な狼にすぎないと主張する者、アフリカから輸入されたハイエナ説を唱える者、狼男や魔物と信じる者、社会不安を煽(あお)ろうとする一味の陰謀説・・・・・。

 いずれにせよ、狩りを高貴なスポーツとして楽しむ王侯貴族が、庶民には野生動物退治を禁じている限り、田畑は荒らされ、人々は狼やイノシシなどの襲撃に怯(おび)えて暮らさねばならない。

 城壁をめぐらせたパリでさえ、1420年と1438年の2度、番人のいない門から狼の一群が入り込んで人間を襲った、との記録がある。飢えた狼がいかに怖ろしい存在か、当時の誰もが肝に銘じていた。

 ルイ十五世が懸賞金を出し、いちおうジェヴォーダンの獣は殺されたことになっている。狼の剥製(はくせい)もヴェルサイユへ送られた。しかしその後も、獣に襲われた人間がおおぜいいたと伝えられる。不思議な事件だ。 (中野京子)

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監督: クリストフ・ガンズ
出演: ヴァンサン・カッセル、モニカ・ベルッチ他
公開: 2001年


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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/06/29 11:00:00 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇>」第41回の今日は、「獣の正体は謎のまま』⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2010/06/post-ce45.html#more  ルイ15世時代に起きた事件を基にした、フランス映画「ジェヴォーダンの獣」について書きました。  さて、いつもは毎火曜日午前中にブログを更新しているのですが、今日はもう夜になってしまいました。というのも、友人たちと短い旅行をしていたからです。 ... 続きを読む

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