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2010年7月27日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

貧困が人の心を打ち砕く 1789年

  ~アントワネット34歳~

 「高慢と偏見」「エマ」「説得」など珠玉の長編により、イギリスでもっとも高く評価されている女性作家ジェイン・オースティンが、初めて物語を書いて家族や友人たちの前で朗読したのは14歳。フランス革命の年、1789年のことだった。それから20数年を経て、やっと初の作品出版(「分別と多感」)にこぎつけている。

 『ジェイン・オースティン / 秘められた恋,』(ジュリアン・ジャロルド監督、2007年公開)は、彼女の41年間の短い生涯中、唯一、と言われる恋、しかも実ることのなかった切ない恋を描いている。

 当時の中産階級の娘としては、オースティンはかなり高い教育を受けたし、家族の愛情には恵まれた。しかし牧師の父親は、8人もの子どもたちを育てるので経済的には大変な苦労をしていた。

 オースティンが金持ちの青年からプロポーズされ、断ろうとしたとき、父親はこう言わざるをえない、「人の心をもっとも打ち砕くのは貧しさだ」と。

 本作は、この言葉に貫かれているといっていい。オースティンの恋人もまた、貧しかった。裕福な伯父に、親・弟妹ごとめんどうをみてもらいながら法律を学んでいるため、何ごとも伯父の意向には逆らえないのだ。

 つまり貧しい恋人たちは、それぞれ金持ちの相手と結婚しない限り、人生におしひしがれるのは眼に見えていた。おおぜいの血族を養いながらでは、やがて夫は法律家への、妻は作家への道を閉ざされてしまうだろう。

 --オースティンが、アン・ラドクリフを訪問するシーンが印象的だ。ラドクリフは当時としてはきわめて珍しい著名な女性作家で、彼女の書いたゴシック・ホラーは大人気を博し、収入も桁外れだった。まさにオースティンが理想とする職業婦人である。

 老いにさしかかったラドクリフは、若く希望にあふれたオースティンを温かく励ましてはくれた。しかし本人は少しも幸せそうではない。半ば放心し、慢性的な疲労感を漂わせている。この時代に女性が社会的成功を得た場合、代償もまた大きいことを、ラドクリフの顔は如実(にょじつ)に物語っているのだった。

 そしてこの顔は、ラストに再びあらわれる。今度はオースティン自身の顔として。

 恋を諦め、独身のまま小説を書き続けた晩年のオースティンは、ファンに囲まれ、賞讃を浴びながら、かつてのラドクリフと同じ表情を見せている・・・。

 現実にはどうだったのだろう? 疲れた顔をしていたとしても、きっとそれは、彼女の命を奪うことになる病気のせいだったと思いたい。なぜならたとえ結婚しなくとも、また平凡な女性の幸せを得られなかったにせよ、オースティンにはそれに優る「創作の歓び」というものが、必ずやあったはずなのだから。 (中野京子)

movieジェイン・オースティン / 秘められた恋

20100726

監督: ジュリアン・ジャロルド
出演: アン・ハサウェイ、 ジェームズ・マカヴォイ他
公開: 2007年


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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/07/27 10:00:00 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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