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2010年8月17日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

「暗殺でもされない限り、すぐ忘れられる……」 1864年

  ~アントワネット没後71年~

 バイエルン王国で、1864年、19歳のルートヴィヒ2世が玉座についた。絶世の美女と謳(うた)われた、かのエリザベート皇后(フランツ・ヨーゼフ妃)のいとこにあたるだけあり、稀に見る美しい王だった。

 美王誕生、そしてその醜悪な変貌と不審死までを、絢爛(けんらん)たる絵巻物にしてみせたのが、『ルートヴィヒ、神々の黄昏』(ルキノ・ヴィスコンティ監督、1972年公開)。監督ヴィスコンティが同性愛者なのは隠れもなく、主演のヘルムート・バーガーが当時の彼の愛人だったこともよく知られている。ふたりの関係は映画に妖(あや)しい輝きをもたらし、ルートヴィヒ2世の同性愛的傾向もまた、ごく自然に描かれる。

  ワーグナーに心酔して経済援助を惜しまず、ルイ太陽王の時代にあこがれて築城に散財するルートヴィヒは、次第にまわりの人々の落胆と顰蹙(ひんしゅく)を買ってゆき、それがめぐりめぐって自己嫌悪から自堕落への道をたどる過程も説得力十分だ。

 そんな彼の行く末を案じるエリザベートは、自分の妹と彼を結婚させようとして、曰く、「夢を捨てなさい。王族の立場は厳しい。さらし者にされて、あっという間に忘れられてしまう、暗殺でもされない限りはね……」

 これはもちろんエリザベートの実際の言葉ではなく、脚本家の創作だ。しかし観客は、彼女がアナーキストに心臓を一突きされ殺される運命を知っている。そのため忘れがたい台詞となった。

 晩年のルートヴィヒはかつての面影とうになく、ぶよぶよに太って歯もほとんど抜けた状態だった。ヘルムート・バーガーは、美男俳優がここまでやるか、というほどのメイクで鬼気迫る演技。

 王は精神状態がおかしいとされ、クーデターによって廃位される。その直後、幽閉先の邸宅近くにあるシュタルンベルク湖畔で、主治医といっしょに水死体で見つかった。現在に至るも、事故か他殺か、わかっていない。

 この湖の、遺体が発見された地点に、今では簡素な十字架が立てられている。10年ほど前の晩秋に訪れたことがあるが、葦(あし)の群生する、寂しくわびしい湖畔で、水中に一本足で立つ十字架が、いかにも寒そうだったのを覚えている。 (中野京子)

movieルートヴィヒ、神々の黄昏

0817_監督: ルキノ・ヴィスコンティ
出演: ヘルムート・バーガー、ロミー・シュナイダー他
公開: 1972年


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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/08/17 12:06:17 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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