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2010年9月 2日 (木)

楽園の生活案内

ルソーとはファッションである

 ジャン=ジャック・ルソー(1712-1778)は『社会契約論』や『エミール』など、現代にも残る思想や著書を多数残した偉大な哲学者。
 彼や彼の著作については、何となく高尚で厳粛なイメージがつきまといますが、そういったイメージは、むしろ彼の著作がすでに浸透しきったあとの19世紀、物事にできるだけ合理的で実用的なものを追い求めるようになったその世紀の風潮の中で、学問や芸術といったようなものが人々に良い影響をもたらす、厳粛で高尚なものとして祭り上げられた結果、染み付いていったイメージなのではないかと思われます。
 というのも、楽園でのルソーのイメージとは、こういったお堅いものとは無縁だったように感じられるからです。

 では、楽園においてルソーとは一体何だったのでしょう。
 それは、「ファッション」です。

 真面目なことは野暮の極み、常に官能を第一とする楽園のことです。
 人々は、彼の思想や著書について、もっと軽いイメージを抱いていたよう。
 それは非常に感覚的で、軽薄で、まるで「遊び」の一種のような、熱狂的「流行」だったように思われます。

 ルソーは、それまで主流であった、不自然で人工一色の日常生活を、自然に彩られたものに全く変革しました。
 その違いといったら、それこそまるで革命を起こしたかのように、まるで正反対のような世の中になってしまったのです。

 女性が育児に携わることが「まるで貧乏人のよう」と敬遠されていたのが、ルソーにかかれば、良き家柄の貴婦人の美徳に変わります。
 宮殿や邸に引きこもって深夜まで賭け事に熱中する生活は、うってかわって田舎に引きこもり、自然に囲まれて自然の声に耳を澄まし、そこで静かに瞑想するということが良いこととなる。
 不自然に凝った作りをした髪型や化粧法は、できるだけ自然に近いもののほうが美しいということに。
 子どもの教育法も、それまではただ単に「小さな大人」として、大人と同じものを着せられ、大人と同じように振舞うことが求められていたところ、今度は「子どもには大人とは違った、彼らならではの世界観がある」ということに注目が集まり、その新しい世界観は、世の中に「子ども服」という斬新なものまでを生み出すという具合。

 もしルソーが本当に、楽園の人々にとっても、19世紀の人々が言うような「厳粛で高尚なもの」だったとしたら、これだけ短期間の間にこれだけの変化を生み出すことができたでしょうか。
 おもしろおかしく暮すということが一番だったという楽園なのですから、それを受け入れるのは一部の風変りな人のみ、もしかしたらそのようなものは、大部分の人々にはただ一笑に付されて終わってしまったかもしれません。

 ですからおそらく、ルソーはその当時、「ファッション」、もしくは「ファッション的なとらえ方をされたもの」だったのではないかと思うのです。
 貴婦人方はきっと、この新しくて新鮮なライフスタイルの提案にすっかり心酔してしまい、優しい自然(あくまで「人間に優しい」自然、人間を傷つけるような恐ろしい自然では決してない)に身をまかせたのではないでしょうか。

 それにしても、私たちはこういった「ファッション」「流行」「遊び」といったものを、結局は何ももたらさない一時的なもの、軽薄なものとして片付けがちなところがありますが、そういった考え方とは、実は「労働」を重んじるあまりに「遊び」を単なる「レジャー」の域に押し込めてしまった、19世紀的考え方の名残なのではないかということを、頭の片隅に入れておきたいように思います。
楽園の人々は「遊び」に対して「レジャー」といったような言い訳を用意する必要がなかった。
 「遊び」に罪悪感を持つことがなく、無邪気に良く「遊ぶ」ということを知っていた人々のことを、それを忘れてしまっている現代に生きる私からしてみれば、とても羨ましいことのように思うのです。

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『秘密の花園』貴族たちの日常や文化がいっぱいなブログ。ベルばらKids関連話も更新していく予定です。よかったら是非、遊びにきてくださいね!」

     

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《ベルばらKidsぷらざスタッフより》
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/09/02 10:21:50 楽園の生活案内 | | トラックバック (1)

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