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2010年9月14日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

安寧より正義の闘い選ぶ 1877年

  ~アントワネット没後84年~

 フランス自然主義文学を確立したとして名高いエミール・ゾラは、若いころはほとんど売れなかったが、1877年、37歳で発表した『居酒屋』で大ブレイクし、以後、文豪への道をまっしぐらに進んで、富と名誉を手に入れた。

 『ゾラの生涯』(ウィリアム・ディターレ監督、1937年公開)は、第10回アメリカ・アカデミー賞作品賞受賞作。モノクロだし古すぎるし、などと敬遠しないでほしい。見応え十分の感動作だ。

 ゾラは社会の底辺で喘(あえ)ぐ人々の姿を活写し、権力側の不正を告発する社会派として、作品は常に賛否両論を巻き起こしつつ、膨大(ぼうだい)な愛読者を獲得した。

 映画は、50代後半のゾラをこう描く――念願のアカデミー会員にも推薦され、押しも押されもせぬ地位につき、美食で太鼓腹となり、もうこれまでさんざん闘ってきたのだから、あとは静かな余生を楽しみたい、と望む自己充足した初老の男。

 そこへドレフュス夫人が押しかけてきたのだから、ゾラとしてみれば迷惑きわまりない話で、何とかお引取りを願って、この件には関わらずにすませたい、というのも理解できる。

 しかし夫人は、断られても黙って書類を置いてゆく。見ずにおこうとしながらゾラは、ついついそれに目を通し、通したからにはもはや黙ってはいられない。安寧(あんねい)を投げ捨て、正義のため再び敢然(かんぜん)と立ち上がるのだ……。

 「ドレフュス事件」は、冤罪(えんざい)の代名詞のごとき事件として知られる。全容解明された今となれば、ドレフュスがモンテ・クリスト伯と同じように、卑劣な罠に嵌(は)められたのは明らかなのだが、当時は支配層による情報操作のため、世論は真っ二つに分かれていた。

 ドレフュス大尉にかけられたのは、スパイ容疑。無罪の訴えは斥けられ、有罪判決が出て悪魔島へ終身流罪となっていた。ところがすでに軍部内では本物のスパイが誰かは突き止められており、今さら結論を覆(くつがえ)せば自分たちの沽券(こけん)にかかわるからと、証拠を捏造(ねつぞう)したのである。

 ユダヤ人のドレフュスをスパイに仕立てあげれば、おりから高まりを見せているユダヤ人排斥運動を勢いづかせられて、一石二鳥との魂胆もあった。

 こうした裏のからくりを見抜いたゾラは、新聞紙上で大統領へ直接呼びかけた。「我、弾劾(だんがい)す」のこの公開状は、とうぜん軍部の怒りを買い、裁判沙汰となり、ゾラは名誉毀損で有罪、イギリスへ亡命の憂き目をみる。

 それでもゾラはドレフュスの無罪と軍の腐敗を世界へ向けて発信し続け、ついに冤罪をはらすのだ。居心地よい生活から、老体に鞭打って新たな闘いに挑んだ彼の静かな闘志に、胸を熱くせずにおれない。 (中野京子)

movieゾラの生涯

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監督: ウィリアム・ディターレ
出演: ドナルド・クリスプ、グロリア・ホールデン他
公開: 1937年

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/09/14 8:56:55 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇>」第46回の今日は、「安寧より正義の闘いを選ぶ」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2010/09/post-ef19.html#more アカデミー作品賞を受賞した『ゾラの生涯』について書きました。  ゾラはドレフュス事件決着後しばらくして、自宅で仕事中に一酸化炭素中毒により事故死します。この映画では描いていませんでしたが、実は恨みに思った軍の暗殺だったのではないかとの噂も... 続きを読む

受信: 2010/09/14 9:21:18