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2010年10月12日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

写真一枚を頼りに 1840年

  ~アントワネット没後47年~

 ニュージーランドの名づけ親は、トーマス・クック。彼が18世紀半ばに周辺調査し、住むに適合とお墨付きを与えて以来、ヨーロッパから陸続と移住が始まった。とうぜん、先住民族マオリとはトラブルになる。さまざまな曲折を経て1840年、ワイタンギ条約が締結され、ニュージーランドはイギリス直轄(ちょっかつ)植民地となった。

 『ピアノレッスン』(ジェーン・カンピオン監督、1993年公開)は、その条約まもないニュージーランドの、本島からさらに離れた寂しい孤島が舞台である。

 オープニング・シーンがきわめて印象的だ。抜けるように青い空、果てしない水平線、白い波の打ち寄せる浜辺に、ぽつんとピアノが置かれ、黒づくめの若い女性が、5,6歳の自分の娘とたたずんでいる。怖いような孤独……。

 彼女の服装や立ち居振る舞いから、きちんとした教育を受けた良家の出身とわかる。おそらく夫をなくし、財産も少なく、本国で面目を保てるだけの生活ができなくなったのだろう。子連れとなれば、ガヴァネス(拙著「怖い絵3」参照)の口もなかったはずだ。

 写真結婚ーーやむなく彼女の選んだ道がこれだった。ニュージーランドの入植者には、身近に結婚相手はいない。写真を送り、相手からオーケーをもらって、それだけで結婚が成立だ。こうして彼女は、はるばる船で見知らぬ男のもとへ嫁いできた。もう引き返せない。

 社交界どころか、文化的な喜びの無いに等しい野生の土地へ渡るにあたり、彼女は生きるよすがとしてピアノを持参してきた。口のきけない娘にとっても、ピアノは言葉代わりだった。

 だが夫となる人は、彼女がどんなに頼んでも、かさばって重いピアノを山中の我が家へは運べないからと拒絶する。ピアノは浜辺に放置され、やがてマオリと白人との間に生まれた逞しい男が、自分の土地と交換に手に入れる。男は彼女に、毎日自分の家でピアノレッスンをしてほしいと頼む。

 --エロティックな恋の物語である。音楽を媒体として、男と彼女の間に熱いものが生まれるのは必然であろう。

 夫は嫉妬するが、後ろめたさもあって怒りを内向させる。なぜならまだ妻と、夜を共にできていないからだ。両親が入植者なので、彼はここで生まれた。自分の母や姉妹、親類、マオリ以外に、彼は女性というものを知らない。美しく知的な妻に触れることさえできないでいた(これはこれで大いに悲劇的な人物である)。

 日本もかつてハワイ入植者への写真花嫁がいた。2万人とも7万人とも言われる彼女たちの中には、この映画のヒロインに似た体験者もいたかもしれない。 (中野京子)

movieピアノレッスン

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 監督: ジェーン・カンピオン
 出演: ホリー・ハンター、ハーヴェイ・カイテル
 公開: 1993年

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□中野京子さんの講演情報をご案内します。

★『残酷な王と悲しみの王妃』(集英社)出版記念講座
薄命の王妃マルガリータ(講師=早稲田大学講師 中野京子)

日時:2010年10月21日(木)18:30-20:00
受講料:会員 2,940円(一般 3,570円)
場所:朝日カルチャーセンター

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/10/12 8:30:44 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載の「世界史レッスン<映画篇>」第48回の今日は「写真一枚を頼りに」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2010/10/post-043b.html   不思議なテイストだった「ピアノレッスン」について書きました。  さてさて、鬼が笑うような話題ですけど、来年6月にニューヨーク・メトロポリタン・オペラが5年ぶりに来日します。ヴェルディの「ドンカルロ」を引っさげて。  ミラノスカラ座の引越し公演があったばか... 続きを読む

受信: 2010/10/12 9:24:25