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2010年10月26日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

プラトニック・ラブの終わり 1877年

  ~アントワネット没後84年~

 三大協奏曲といえば(異論もあるが)、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、ドヴォルザークのチェロ協奏曲、そしてチャイコフスキーのピアノ協奏曲と言われる。どれも第一楽章が始まるや否や、たちまち聴く者の心を鷲掴(わしづか)みする魅力にあふれている。

 そのピアノ協奏曲の初演以来、富豪の未亡人フォン・メック夫人は、若いチャイコフスキーのパトロンとなった。『恋人たちの曲 / 悲愴』(ケン・ラッセル監督、1970年公開)に、ふたりの微妙な関係が描かれている。

 映画のヒロインは、だがメック夫人ではない。同じくチャイコフスキーの才能に夢中になり、熱烈なファンレターを送り続けて、ついには彼の妻の座を射止めたニーナだ。

 彼女とチャイコフスキーの結婚(1877年)については、「世界史レッスン」の「チャイコフスキーの身に起きたシンクロニシティ」で書いた(拙著『危険な世界史』をお読みください)。

 同性愛者の夫と情緒不安定な妻、という組み合わせが悲惨な結果を招くことは必然で、結婚まもなくチャイコフスキーは自殺未遂するし、ニーナは夫のではない子どもを3人も産んだあげく、精神病院へ送られた。

 このすったもんだの最中にも、チャイコフスキーとメック夫人は恋文にも似た手紙をひんぱんにやりとりし、作品のいくつかが彼女へ捧げられた。

 メック夫人はチャイコフスキーにとって、いや、どんな芸術家にとっても、理想的といえるパトロンだった。年間6000ルーヴルも援助してくれるのに、条件はただひとつ、決して顔を合わせないこと、というのだから。

 なぜそんな条件をつけたのだろう?彼女にしてみれば、チャイコフスキーより9歳も年上だったし、身分的にも不釣合いで、亡くなった夫との間にたくさん子どもがいた。少しも美人ではない、とのコンプレックスもあったとされる。

 だがチャイコフスキーの感謝の気持ちは大きかった。生身の女性が苦手な彼には、この不思議な女性がいつしかある種の憧憬(しょうけい)の的となったのも無理はない。

 美しいシーンがある。互いに馬車ですれ違い、双方、相手を認識しながら挨拶さえせず、だが頬を紅潮させ、幾度も幾度もふりかえる。ロマンティックな忘れがたい「人生の時」。

 ふたりの関係は14年も続き、夫人が死ぬまで続くかと思われたのに、突如、彼女からの一方的な通告でピリオドが打たれた。どうしてかはいまだ謎のままだが、映画はひとつの説明をつけている。それによればーー

 メック夫人はチャイコフスキーがニーナと結婚したとき、内心、激しく嫉妬しながらも諦めた。けれど彼が同性愛者と知ったときには(密告があった由)、とうてい我慢の限度を超えた。なぜならそれは、彼女の長い長いプラトニック・ラブが、壮大な砂の城にすぎなかったことを明かすものだったから。

 ……そうかもしれない。 (中野京子)

movie恋人たちの曲/悲愴

 監督: ケン・ラッセル
 出演: リチャード・チェンバレン
 公開: 1970年

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□中野京子さんのテレビ出演情報をご案内します。

 今年2月3月に8回にわたってNHK教育「知る楽」で放送された中野京子さん出演
「『怖い絵』で人間を読む」が、来月NHK BSハイビジョン「プレミアム8」で、ぶっ続けに3時間の再放送があります。

 本放送を見逃した人は、要チェック!ですよ。

「怖い絵」で人間を読む(前編)
 11月1日(月)15:00~16:29(BSハイビジョン)

「怖い絵」で人間を読む(後編)
 11月1日(月)16:30~17:59(BSハイビジョン)

「プレミアム8」のHP⇒

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/10/26 9:11:49 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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