2013年2月末をもってブログの更新を終了いたしました。 ⇒詳しく
e-book Japan ベルサイユのばら

0228delete -->

« 寒い夜のお供に・・・ | トップページ | あのシーンが見たい♪おたより »

2010年10月 1日 (金)

日仏歴史談議

ド・ゲメネ公爵と切捨御免

 『ベルサイユのばら』に、ド・ゲメネ公爵が幼いピエールぼうや背中からだまし討ちする衝撃的な場面がある。殺人を犯しても何の処罰も受けない貴族の横暴さや、彼ら貴族が特権階級であることがよくわかる象徴的な場面である。同時期の江戸時代にも、武士たちに「切捨御免(無礼討ち)」という特権があった。時代劇で、町人や農民が武士に切り殺されても泣き寝入りする、という場面がそれである。貴族や武士は本当に殺人を犯しても、許されたのだろうか。

まず、ピエールぼうやが殺されるまでをみてみる。                 
・ピエールぼうやが、ド・ゲメネ公爵の馬車からお金を盗む。
・ピエールぼうやの母親から、盗んだ理由は、空腹だったため、だとわかる。
・ピエールぼうやは泣きどうしで、謝った形跡は無い。しかし、母親は一生懸命謝っている。
・ド・ゲメネ公爵は、ピエールぼうやを許す。
・ド・ゲメネ公爵は、ピエールぼうやを背中から銃で撃ち殺す。
・ド・ゲメネ公爵は、殺人に対して処罰されていない。

 フランスでは、革命後の1804年から各種法典の編纂を始めたが、それ以前は慣習法が使用されていた。その慣習法も地域によって違っていたり、身分によって刑罰の差もあったりした。フランス革命前夜では情状酌量が言われ始めたことを考えると、ピエールぼうやは幼いので、重い刑罰は科されなかったのではないだろうか。厳重注意ぐらいで済んだのではないか。だが、故意による殺人は死刑だったようで、それからすると、ド・ゲメネ公爵は故意による殺人なのだから、死刑が科されてもおかしくないはずだが、アンドレが言っているように、「国王も手が出せない」ということなので、ド・ゲメネ公爵の殺人は問題にならず、処罰されなかったのだろう。

 では、江戸時代ではどうだったのだろうか?「切捨御免」ということから、ド・ゲメネ公爵の殺人について、フランスと同様に何の罪にも咎められないかというと、そうではない。「切捨御免」は、「無礼討ち」ともいわれ、武士が「無礼」な言動や行為をとられた時、つまり武士の名誉が侵害された時に、実力行使として切り捨てることが許されていた。どのような行為が「無礼」だったかというと、大名行列を横切ることはもちろんだが、武士の身体、その刀や傘に当たることなどだが、横切ったことや当たったことについて、ちゃんと謝罪すれば何事も無く済んだ。

 ピエールぼうやは、ド・ゲメネ公爵のお金は盗んだが、名誉を汚すような悪口も言っていないし、母親は一生懸命謝っており、決して名誉を汚すようなことはしていない。ド・ゲメネ公爵を、江戸時代の大名と考えると、ピエールぼうやを殺したド・ゲメネ公爵は、「お家取り潰し」という処罰を受けただろう。

 江戸時代は、武士が横暴を働いているイメージがあるかもしれないが、実は、「法度」と呼ばれる法律があり、むやみに殺人を犯してはいけなかったし、それなりの処罰も受けた。

 一方ピエールぼうやの盗みについては、窃盗は江戸市中から追放ということだが、やはり幼いということを考えると、厳しい罰が与えられることはなかっただろう。

ちょこっと最後に…親の敵を討つ「敵討」というのも時代劇によく使われるテーマですが、『ベルサイユのばら』で、敵討といえばロザリーがいます。でも、ロザリーは敵討を果たすことができませんでした。その理由は、オスカルが、敵討に成功をしても、ロザリーが死刑になるということから、ロザリーを止めたからです。これが、江戸時代ならば、例えばロザリーが百姓だったとしても、江戸の町奉行所に備え付けられていた帳簿に、必要事項を記入し、登録すれば、敵討をしても処罰されることはありませんでした。(鈴木規子

    ◇

〈参考文献〉
『概説フランス史』 木村尚三郎・志垣嘉夫編 有斐閣選書
『法の精神』 モンテスキュー 岩波文庫
『フランス史2』 柴田三千雄・樺山紘一他編 山川出版社
『犯罪と刑罰』 ベッカリーア著 風早八十二他訳 岩波文庫
『フランス法』 滝沢正 三省堂
『武士道考』 谷口眞子 角川選書

お便り募集このコラムをお読みになった皆さんの感想や質問をお待ちしています。 ⇒こちらの「ベルばらKids専用フォーム」からどうぞ。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/10/01 11:00:00 日仏歴史談議 | | トラックバック (0)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165303/49585485

この記事へのトラックバック一覧です: ド・ゲメネ公爵と切捨御免: