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2010年10月22日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

“怪物”と呼ばれた男

 

ミラボーは、『ベルサイユのばら』では登場シーンはわずかだが、ロベスピエールに並んでフランス革命史では重要な人物である。
 彼はプロヴァンスの貴族で伯爵であるから、貴族代表議員になる資格があった。しかし、自ら第三身分、平民の代表議員に属していた。
 貴族の長男であったミラボーが何故わざわざ平民側についたのか。不思議に思えるが、その理由は実は『ベルサイユのばら』でもちゃんと描かれている。

 『ベルサイユのばら』で登場するミラボーの容貌を見て欲しい。顔にはたくさんの斑点があり、顔も大きく、お世辞にも美形とはいいがたい。この斑点は幼い頃に天然痘の治療の失敗によるものなのだが、これがミラボーの人生を決めた。

 ミラボーは醜さゆえにしばしば“怪物”と揶揄される。そして、この反骨精神旺盛な怪人物は揶揄されれば揶揄されるほど、ますます自ら“怪物”らしく振舞ったという。度を越した放蕩三昧。博打で借金に借金を重ね、盗作だらけの妖しげな文章を書き散らす。『ベルサイユのばら』ではロザリーに言い寄っているが、彼には荒々しい男性的な魅力があり、女性にかなりもてたとのことで、そちらのほうも手当たり次第。妻の妹にも手を出したそうだ。なににせよこの反骨精神と、破壊的なほどの行動力が革命の原動力となったわけだ。

 そんなミラボーを彼の両親は疎んじており、ミラボーは父親の訴えにより何度も逮捕され、数年間も投獄されたという。父親は醜いミラボーを嫌い、罵り続けていたのだ。ミラボーも強烈だが、そこまで我が子にしてしまう父親も相当なもの。そもそもミラボーの反骨精神と“怪物”ぶりは、父親への憎悪が育てたものだといえるかもしれない。

 ギリシャ神話にも親に疎んじられた子どもたちがいる。
 まずは、大地の女神ガイアとその夫天空の神ウラノスの子どもである一つ目の巨人キュクノプスと100本の腕と50個の頭を持つ巨人ヘカトンケイルである。父であるウラノスは、彼らを嫌い、大地の奥深く、つまり、妻の体内に幽閉してしまった。ミラボーを投獄したミラボーの父親そっくりな話であるが、巨人たちの場合、その非道に怒ったのは母親であるガイアだった。ガイアは、ティターン神族のクロノスに命じて、ウラノスの性器を切らせてしまった。どんな子どもでも愛せないお前には父親の資格がないとばかりに。

 そして、もう1人疎まれた子どもとして有名なのは、鍛冶の神であるヘパイストスである。ヘパイストスは、神々の王ゼウスの正妻である女神ヘラが、度重なる夫の浮気の腹いせに、自分だけで産みだしたともいわれる子どもで、彼は母親ヘラに疎まれた。ヘパイストスが生まれながら足が不自由で、容貌も他の神々と違い美しくないのが、ヘラのプライドを傷つけたからだ。

 あんまりだと思うが、ヘラは赤ん坊の息子を天上から投げ捨ててしまった。
 そして、この母親の非道は後に仕返しをされる。大人になったヘパイストスは大変美しい黄金の玉座をヘラに贈った。ヘラは大喜びでそれに腰を下ろしたが、なんとそれきりその玉座から立ち上がることができなくなってしまったのだ。

 だが、巨人たちにせよ、ヘパイストスにせよ、最後まで憎しみに固執したというわけではない。巨人たちはゼウスにその力を貸すことによって、ヘパイストスはその鍛冶の技術で、自らの地位を確立し、時代になんとかうまく順応した。
ミラボーというと、一時的には時代の寵児、英雄として祭りたてられるが、ルイ16世処刑の前に病気で亡くなってしまう。そして、死後に発見された国王宛の彼の手紙が反革命的な内容だったとされ、その名誉も地に落ちてしまった。
いずれにせよ“怪物”たちのその特別な力は、真の時代の主役たちの肥やしとなったのだ。(米倉敦子)

《参考文献》
『小説フランス革命I 革命のライオン』 佐藤賢一著 集英社
『ギリシア・ローマ神話辞典』 高津春繁著 岩波文庫
『もう一度学びたいギリシア神話』 松村一男監修 西東社

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/10/22 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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