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2010年11月23日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

黄色い麦畑のカラス 1879年

  ~アントワネット没後82年

 ヴィンセント・ファン・ゴッホはオランダ人だが、フランス人と勘違いしている人も少なくない。それは彼が後期印象派のひとりに数えられ、南仏のアルルやサン=レミ=ド=プロヴァンスを描いた作品が有名だからだろう。実際に南仏で過ごした期間は、最晩年のわずか2年半ほどにすぎないのだけれど。

 『ゴッホ』(ロバート・アルトマン監督、1990年公開)のオリジナル・タイトルは『ヴィンセントとテオ』。分かちがたい絆(きずな)で結ばれたゴッホと弟テオの、不思議な関係がテーマだ。

 映画は、1879年、26歳のゴッホが、炭鉱での伝道師の職を解雇されるところから始まる。何をやってもうまくゆかなかった彼は、これを機に画家になろうと決め、以後、死ぬまでの11年間、生活のめんどうを(大威張りで!)弟にみさせるようになる。

 ゴッホの絵は、生前たった1枚しか売れなかった。もしテオがいなければ、絵の具さえ買えないゴッホは、傑作を産み出すも何も、とっくに野垂れ死にしていたに違いない。

 テオは兄に経済援助しつつ、結婚し、子どもをもうけた。特に裕福というわけではなかったから、負担は大きい。妻の不満にも耐えなければならない。兄を愛し、その才能を信ずればこその献身である。

 だが兄弟に、運命の女神は微笑まなかった。ゴッホの死をみとったわずか半年後、テオの命の火も消えるのだ、それも精神病院で(脳梅毒とされる)。あと数年生きながらえていれば、兄の絵が世に認められるのを目の当たりにできただろうに……。

 さて、ゴッホ役といえば、『炎の人ゴッホ』(ヴィンセント・ミネリ監督、1956年公開)のカーク・ダグラスが、外見も実物そっくりの当たり役として知られるが、『ゴッホ』のティム・ロスもなかなかだ。一見、静かな、そのくせ、いきなり突拍子(とっぴょうし)もない行為に走りそうな、危うい感じを発散させていた。

 ゴッホは郊外へスケッチに行き、拳銃で脇腹を撃って死にきれず、自力で下宿先へもどって2日後に死んだのだが、その場面を演じるティム・ロスは、血を流しながら全くの無表情で、急ぐでもなくよろめくでもなく、ただ歩く。歩くだけで、しかし異様な迫力を醸(かも)す。これは目撃証言などから、現実にあったことと近いのではないか。

 絶筆とされる「カラスの群れ飛ぶ麦畑」制作シーンは、どちらの映画にも出てくるので、違いが面白い。カーク・ダグラス版では、麦畑をスケッチ中の彼を、カラスがまるで襲いかかるように飛びかう。追い払ったあと、ふと思いついて、キャンバスに描き加える、というもの。

 一方ティム・ロス版では、絵の完成間近、どこか遠くでしきりにカラスの鳴き声がする。それが彼の潜在意識を刺激し、いつしかその見えない不吉な黒い鳥を空いっぱい描きなぐってゆく……。

 ほんとうはどうだったのだろう?知りたくなる。 (中野京子)

movieゴッホ 

20101124

 監督: ロバート・アルトマン
 出演: ティム・ロス、ポール・リース他
 公開: 1990年

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/11/23 10:32:02 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇>」第51回の今日は、「黄色い麦畑のカラス」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2010/11/post-124e.html#more  『ゴッホ』と『炎の人ゴッホ」について書きました。  どちらの映画にも当然ゴーギャンが登場する。カーク・ダグラス版では、アンソニー・クインがものすごい存在感だった(アカデミー助演男優賞を取っている)。  ただ『ゴッホ』のほうのゴーギャンでは、... 続きを読む

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