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2010年11月 9日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

夢のように幸せなシシー 1853年

 ~アントワネット没後60年~

 ハプスブルク家歴代美女ナンバーワンの、シシーことエリザベート皇后の人生は、望まぬ結婚、窒息しそうな宮廷生活、公務からの逃走、ひとり息子の自殺、帝国の没落、そして暗殺による最期と、多くのドラマティックなエピソードに彩(いろど)られている。

 だが『プリンセス・シシー』(エルンスト・マリシュカ監督、1955年公開)に、そんな暗さや不幸の影は微塵(みじん)もない。彼女が若き皇帝フランツ・ヨーゼフに見初められて結婚する、1853年の出来事を、あくまで明るく描いている。

 バイエルンの生家での描写が面白い。6人の子どもたちを、王家につながる血筋の者としてしっかり躾けたいと願う母。一方、周囲から変人扱いされている父は、息子たちが手づかみで食卓のものを口に入れても気にしない(何しろ本人が率先してそれをやっているのだから)。

 シシーがこの野放図な父の秘蔵っ子であり、もっとも父とよく似た娘であることが、さりげなく示される。

 同じく、ウィーンにおける、やり手のゾフィと絵に描いたようなダメ夫の関係も、コミカルに描かれる。ただし息子のフランツ・ヨーゼフはそうとう美化され、実物より数倍ハンサムな上、自分ひとりでテキパキ政務をこなし、全く母に頼らない、理想の青年像。

 22歳と15歳の、いとこ同士の出会いのシーンは、いかにも古いのどかな映画らしく、リアリティ、ゼロ(脱力する)。シシーが川で釣りをしていて竿(さお)をふり、ちょうどそのとき橋の上を馬車で通りかかった皇帝の服に釣り糸が引っかかるのだ。

 謝りに駆け寄るシシー。その可愛らしさに惹かれ、このままこの娘と歩いて行くから、先に行け、と部下に命じて馬車を降りる皇帝。つい直前の場面で、皇帝暗殺未遂があったから厳重警戒を、騒いでいたのに、大丈夫か?(突っ込みどころ満載である)。

 ふたりはバートイシュルの美しい風景のなか、ぶらぶら散歩。シシーはなぜか自分の身分を明かさない。謎の少女にますます魅了される、ハンサムな皇帝。

 陛下はこれからどちらへいらっしゃるところだったのですか、お見合いしなければならないのです、その方を愛していらっしゃるの、いや、王家の義務ですから――といった会話が交わされ、互いに恋心を燃え立たせる。

 シシーは彼の見合い相手が自分の姉とは知らなかった、という設定なので、プロポーズがなされた後、彼らの恋路の(精神的)なネックは、失意の姉の存在ということになる。確かに、公の場で恥をかかされたシシーの姉はその後どうなったのか、と気になるところだ。

 映画では、姉はまもなく自分にふさわしい恋人を見つけ、それでようやくシシーも心おきなく愛する皇帝のもとへ嫁ぐことができましたとさ、めでたしめでたしのラスト(現実には、姉の結婚はこの5年もたった後なのだが)。

 本作はハッピーなシンデレラ物語として――製作から半世紀も経ているにもかかわらず――いまだドイツやオーストリアにおける、クリスマスや新年の定番映画としてテレビ放送されるという。

 ほんもののシシーの不幸を誰もが知るゆえに、かえっていっそうこの御伽噺が愛されるのかもしれない。 (中野京子) 

movieプリンセス・シシー

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 監督: エルンスト・マリシュカ
 出演: ロミー・シュナイダー、カール=ハインツ・ベーム他
 公開: 1955年

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/11/09 7:56:52 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の『世界史レッスン<映画篇>』第50回の今日は、「夢のように幸せなシシー」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2010/11/post-d8d8.html#more  ロミー・シュナイダー主演の3部作のうち、第一部『プリンセス・シシー』について書きました。  彼女はシシーが当たり役となり、この20年後くらいにも『ルートヴィヒ/神々の黄昏』で同じ役を演じました。その時はすでにカイザーリン(皇后)というより... 続きを読む

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