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2010年11月 5日 (金)

楽園の生活案内

コルセットの美

 

貴婦人にとって、コルセットは欠かすことのできない必需品。
 コルセットは下からバストを押し上げ、せり出すようにすることによって、まるで今にも乳房がデコルテから零れ落ちてしまいそうな風情を演出してくれます。
 そしてこのコルセットと、スカートに大きなふくらみをもつパニエとを組み合わせることによって、さらに女性たちの腰のほっそりとした美しさがなお強調されるというわけです。

 

マリー・アントワネットの母マリア・テレジアが、結婚してもいまだお転婆の抜けないアントワネットに、「鯨骨のコルセットをきちんと身につけて、私を安心させてください」と手紙を書いて送っていることからもわかるように、コルセットは「鯨骨」を用いて作られます。
 名前は「鯨骨」とはいうものの、実際のところこれは鯨のヒゲなのですが、自然の状態では3~4メートルほどもあるというこのヒゲをきれいに洗ってカットし、加工します。
 素材は他に、キルティング、そして人目につく表面には、ダマスク織りやサテンなど、そして豪華で繊細なつくりの装飾をほどこして、美しく仕上げます。

 さてこの、見目美しいコルセットを着用するにあたっては、相当な手間と労力がかかります。
 もともとの体型に比べて、かなり小さい型に身体を押し込めるのですから、その力も相当なもの。
 それを装着する本人のみの力で着るなど、とんでもない。
 まずは装着する本人が、柱などにつかまって、これから自分にかけられようとする力に耐える準備をします。それからお付きの女性たちが、(いや、場合によっては男性の力をも借りなければならないくらいに)相当の力を用いて、この背中から腰にいたるまでの紐をぎゅっと締め上げなくてはならないのです。
 しかしこうして苦心して装着されたコルセットは、上からドレスを着ることによってすっかり隠されます。
 けれど、それでもコルセットがとても美しいつくりになっているのには、わけがあるのです。

 それは、朝のルヴェ

 貴婦人方は朝、彼女自身の身支度の時間をお客さま方に公開するのが主流ですが、そこには彼女の崇拝者たちが押しかけます。
 この朝のルヴェとは、ここに誰がどれくらい集うかによって貴婦人の器量が決められてしまうといってよいほど、重要な催し。
 ですからここで公開されるものには、すべてこだわりをもって用意され、演出されるくらいの意気込みがなければ、その貴婦人はたちまち社交界でもバスに乗り遅れてしまうことでしょう。
 そういったわけですから、普段は人目に触れるはずもないこのコルセットであっても、とても美しく人好きのするものでなければいけないのです。

 コルセットは、官能に生きるこの楽園の社会のことですから、きっと沢山の恋人たちにもその美を楽しむ機会があったことでしょう。
 しかし、貴婦人方はコルセットを、こういったような秘密のものとして用いるだけでなく、「公開の秘密」として演出する技術をも持っていたようです。

                          

『秘密の花園』貴族たちの日常や文化がいっぱいなブログ。ベルばらKids関連話も更新していく予定です。よかったら是非、遊びにきてくださいね!」

     

                     

《ベルばらKidsぷらざスタッフより》
 コラム『楽園の生活案内』を連載中のmashironさんが書籍・『宮廷マダムの作法』を出版しました。
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2010/11/05 11:00:00 楽園の生活案内 | | トラックバック (0)

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