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2010年12月 7日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

ハプスブルク家の黄昏に 1889年

  ~アントワネット没後96年~

 ハプスブルク王朝の実質上最後の皇帝フランツ・ヨーゼフと、かのエリザベート皇后の間にできた一人息子ルドルフは、1889年、30歳のとき、マイヤーリンクの狩猟館で男爵令嬢とピストル心中した。フランス革命から100年目の、大事件だった。

 世紀末ウィーンが舞台の『幻影師アイゼンハイム』(ニール・バーガー監督、2006年公開)には、そのルドルフが登場(ただし名前は「レオポルト皇太子」と変えられていたが)、史実の彼の死とうまくからめて描かれる。

 すでに科学の時代に突入し、鉄道が新しい足となり、電波が発見され、自動車が発明され、カメラによる連続撮影も可能(映画誕生ももうすぐだ)となる一方、人々はいまだに、いや、むしろ以前にも増して、心霊現象や超能力に熱中していた。

 「イリュージョニスト(=幻影師)」を名乗るアイゼンハイムが、華々しくウィーンに登場し、絶大な人気を博したのはそのころだ。彼のショーは、マジックなのか超能力なのか、判然としない。そこが魅力であり、また、アイゼンハイム自身のカリスマ性をいっそう高めた。

 ある日、評判を聞きつけた皇太子が、婚約者ゾフィを伴ってあらわれる。アイゼンハイムがいつものように観客を舞台へ上げようとすると、皇太子がゾフィを押し出す。ふたりの男女はスポットライトを浴び、見つめあった……。

 ラブストーリーである。一目惚れではない。アイゼンハイムとゾフィは、かつて深く愛し合いながら、階級社会の壁に阻まれ、引き裂かれた恋人同士だった。彼らは、年月を経ても互いの心がわずかも変わっていないのに気づく。

 もちろん皇太子は嫉妬に狂う。なにしろ映画の彼は権力をふりまわすサディストで、徹底した悪役だ(ただし実物よりずっとハンサム)。警部に命じて、アイゼンハイムを危険分子として抹殺せよと命じる。

 ジャン・バルジャンを追うジャベールか、と最初思わせて、この警部の造型はなかなか面白い。皇太子を国家のためにならない人物と見做して、心情的にはアイゼンハイムとゾフィに肩入れしているのだ。つまりこの警部の目こそ、我々観客の目といえよう。

 やがてこの三角関係から、ひとりの死者がでる。他殺だ。

 いったい誰に殺されたのか?なぜ殺されたのか?--警部は必死に捜査し、推理をめぐらせ、ついに驚くべき結論に達した。

 その推理を正しいと思う人には、後味良いラストだ。でもそれが単に警部の願い(まさにイリュージョン)にすぎないのでは、と疑う人にとっては……? (中野京子)

movie幻影師アイゼンハイム 

20101207

 監督: ニール・バーガー
 出演: エドワード・ノートン、
     ポール・ジアマッティ他
 公開: 2006年

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/12/07 9:01:41 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇>」第52回の今日は「ハプスブルク家の黄昏に」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2010/12/post-3287.html#more  エリザベートの息子ルドルフを仇役にした「幻影師アイゼンハイム」について書きました。  本文でも触れましたが、絶世の美女を母にもったというのに、ルドルフの外見はそんなにパッとしませんでした。映画の中のぎらぎらした悪役とは遠いイメージです。 ... 続きを読む

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