2013年2月末をもってブログの更新を終了いたしました。 ⇒詳しく
e-book Japan ベルサイユのばら

0228delete -->

« 皇帝ナポレオン | トップページ | 今週のベルばらKidsは「尽きないキャラクターたち」 »

2010年12月24日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

親離れは楽じゃない

 

オスカルの人生を大きく左右する人物、それは運命の人アンドレか、叶わなかった思い人フェルゼンか、愛情をもって仕えた王妃マリー・アントワネットか。私は、この3人のどの人物でもないと思う。
 オスカルの人生の最も大きなカギを握り、彼女の生涯を左右したのは、父親ジョルジェ伯爵ではないだろうか。

 第一に、ジョルジェ伯爵を父親に持たなくては、オスカルは女性でありながら、男性として育てられることはなかった。若い頃のオスカルは、この父親の価値観をそのまま継承しており、自分は王家を守る軍人であるということに誇りを持っていた。
 しかし、その価値観はオスカルが成長し、様々な出会いを経て変わっていく。オスカルは王家の悪政のために苦しめられる民衆の存在に目を向けはじめ、そして、盲目的に王家に仕えることに疑問を感じはじめるのだ。
 もちろん、そんなオスカルの変化は、ジョルジェ伯爵にとって許すことができないことで、それが親子ケンカの種にもなるが、父親に逆らう度にオスカルの自我は強くなっていった。
 そして、革命前夜の動乱の最中、ジョルジェ伯爵はオスカルを結婚させることによって、彼女を“娘”に戻してしまおうと試みる。だが、それも、オスカルにアンドレへの愛をはっきりと意識させるきっかけとなったのだ。

 こうしてみると、オスカルの物語は、いかに父親の影響から脱し、独立するか、“親離れの物語”と捕らえることもできるだろう。
 親というものは、子に愛情があるからこそ、最も自分で良かれと思った道を子に歩ませようとするが、必ずしもその道が子の望むものではない。だから、時には子は、立ちはだかる親に反発して、排除してまで自分の道を行かなくてはならない。

 ギリシャ神話でも、父と子の物語は大きなテーマとなっている。
 もちろん、お互いに満たされた関係の親子もたくさんいるが、時にはその父の子であることが、子にとっての大いなる呪いであることすらある。父親を殺すことを生まれながらに運命付けられたオイディプス王の物語はその典型だ。

 神々自体、父ウラノスから息子クロノス、父クロノスから息子ゼウスと、父親を王位から引きずり下ろすことで、息子がそれにとって変わり、自分の世代を作り上げてきた。
 では、ゼウスの代になってからもう“親離れ”の物語はもうないのか?

 実はそうではない。
 神々の王ゼウスも、実は愛息アポロンに反抗され、一度は絶体絶命の危機に陥ったのだ。
 なにしろゼウスは、ワンマン極まりない家長だから、妻のヘラ、兄弟のポセイドン、娘のアテナも頭にくることも多いようで、アポロンは彼らと共謀して父ゼウスを捕縛し、空から吊り下げようと試みたのだ。これが成功すれば、アポロンがゼウスにとって代わって、神々の王として君臨することも有り得たが、あえなく失敗。アポロンは逆にゼウスによって罰を与えられてしまった。
 かくて、ゼウスの権力は揺らぐことなく、アポロンはゼウスの影響下にあり続けることになる。

 オスカルはジャルジェ伯爵の手を離れ、自分の道へと旅立ったが、父親であるジャルジェ伯爵は王家を守る軍人としてそこに留まった。最後は、娘を失い、仕える王家を失った、この誠実で誇り高く、愛情深い男性のことを思うと、悲しくなってくる。(米倉敦子)

《参考文献》
『ギリシア・ローマ神話辞典』 高津春繁著 岩波書店

お便り募集このコラムをお読みになった皆さんの感想や質問をお待ちしています。 ⇒こちらの「ベルばらKids専用フォーム」からどうぞ。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/12/24 13:49:46 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165303/50385223

この記事へのトラックバック一覧です: 親離れは楽じゃない: