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2010年12月 3日 (金)

日仏歴史談議

世間を騒がせた義賊

 

黒い騎士といえば、その正体は、パリの新聞記者で後にロザリーの夫となるベルナール・シャトレである。黒い騎士は、貴族の屋敷ばかりを狙い、宝石を盗んだ。豊かな者から盗むが、殺人はしない(アンドレの左目は奪ったが)、ということを鑑みると、黒い騎士も義賊の範疇に入るだろう。

 義賊というのは、簡単に言うと、豊かな者から奪い、それを貧しい者に与え、理由の無い殺人はせず、悪を正す、民衆にとっての英雄だった。世界で一番有名な義賊は、イギリスのロビン・フッドだろう。そして、不思議なことに、18世紀後半から20世紀前半は義賊の黄金時代で、世界各地に義賊と呼ばれる者が輩出したという。さらに、詳しく見ると、義賊は、フランスでは18世紀をもって消滅するが、日本では19世紀以降出現しているという。

 フランスでは、パリの人々を震え上がらせ、その記憶に長くとどめさせたルイ=ドミニク・カルトゥーシュがいる。1693年にパリに生まれ、18才頃から盗みを繰り返し、ついには、2人の弟も含む約360人の大盗賊団を組織する。彼らは、王宮や貴族の館ばかりでなく、商店にまで盗みに入り、警吏だけでなく一般民衆まで殺害した。1720年12月逮捕されたが、すぐに脱獄。だが翌1721年10月、仲間の裏切りにより再逮捕された。カルトゥーシュは全面的に否認していたが、判決の結果、クレーヴ広場(現パリ市庁舎前広場)で車刑により処刑された。
 処刑後から、小説や戯曲などが刊行され、残酷で非道な行為は取り払われ、大胆さ、組織力、官憲を逃れる機知・機転などが取り上げられ、おそらく怪盗ルパンのモデルになったといわれている。

 一方、日本では、義賊といえば、鼠小僧次郎吉だろう。生年は諸説あるが、1797年頃に江戸に生まれ、27才頃から本格的に盗みをしていった。子分も仲間ももたず単独で大名屋敷の奥方の起居する奥向や奥女中のいる長局など、女性ばかりの場所を狙い、物品には一切手を出さずに金だけを盗んだ。カルトゥーシュと違うのは、鼠小僧は殺傷はせず放火もしなかった。1832年5月に捕えられ、3ヵ月にわたる取調べを受けた後、江戸市中引廻しのうえ小塚原刑場で磔刑により処刑された。
 鼠小僧の場合も、処刑後からすぐに歌舞伎の題材となり、幕末から伝説化がいっそう進んだ。それは、大名や金持ちの商人から盗んだ小判を貧しい民衆の住む長屋に投げ入れていく、という伝説である。実際には、盗んだ金のほとんどを博奕に使い、母や姉妹などの身内には全く渡していなかった。

 カルトゥーシュにしても鼠小僧にしても、実像とはまったく違うイメージが伝説化され、民衆の夢が義賊を作りだしていった。そして、義賊という社会的正義を生み出した民衆は、次に自ら行動を起こしていく。彼らはフランスでフランス革命を起こし、時代は近代へと移っていく。

ちょこっと最後に…フランスには、もう一人有名な義賊がいます。名前をルイ・マンドランといい、1725年頃サン・ジョワールに、裕福な商人の長男として生まれました。しかし、彼が17才の時に父が死亡し、幼い弟妹をかかえ商売をしていきましたが、衰退の一途をたどり、結局煙草などの武装密輸団に加わり、その頭領となりました。南東フランスを中心に活動し、民衆を殺害しているにもかかわらず、義賊として広く知れ渡っていました。そんなマンドラン一味に対し、ルイ15世は約500人の竜騎兵を中心とする正規軍に命じて追跡させ、1755年5月に逮捕します。同月ヴァランスのクレルク広場で車刑により処刑されました。マンドランの場合は、生存中から義賊として有名でしたが、処刑後まもなく『カルトゥーシュとマンドランの対話』という架空の物語が刊行されました。 (鈴木規子

    ◇

〈参考文献〉
「アンチ・ヒーローの創出もしくは民衆的想像力」
『早稲田大学人間科学研究』第17巻第1号所収 蔵持不三也 早稲田大学人間科学部

『十八世紀パリ生活誌』 メルシエ著 原宏編訳 岩波文庫
『図説パリの街路歴史物語』下巻 ベルナール・ステファヌ著 蔵持不三也編訳 原書房『義賊マンドラン』 千葉治男 平凡社
『義賊伝説』 南塚信吾 岩波新書
『殿様とねずみ小僧』 氏家幹人 中公文庫
『江戸の盗賊』 丹野顯 青春出版社
『義賊の日本史』 阿部猛 同成社

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2010/12/03 11:00:00 日仏歴史談議 | | トラックバック (0)

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