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2011年1月17日 (月)

楽園の生活案内

グリンピースの狂乱

 昔から豆といえば貧乏食、なんだかちょっと、物悲しい雰囲気を彷彿とさせる食べ物でした。
 実際豆は、修道院の門や救済院の人々たちにふるまわれていたわけで、粗末な節約のための食事でもあったのです。
 しかし1660年、「」のイメージを一新する大きな動きがありました。

 時はルイ14世が君臨する頃。
 イタリアでリキュールの蒸留法について学んでいたオディジェは、帰国を前にして、フランスにおけるイタリア産のリキュールの独占販売権を得るという野望に燃えていました。
 そして1660年、いよいよ彼が祖国に帰国しようとしていた途中、通りかかったジェノヴァにて、なんとも素晴らしいグリンピースの畑に出会います。
 彼は早速これを、王のために駕籠に入れて持ち帰ることにしたのです。

 さて二週間後の1月18日、王の部屋の第一下僕ボンタンのはからいによって、彼はこのグリンピースを王に献上する名誉を得ます。
 そこには王の他、何人もの宮廷人が同席していました。
 彼らは、たった今摘み取られたかのような新鮮さを保っているこの丸い豆にたいそう驚き、かつてこのフランスで、この季節にこのような代物を目にしたことがあっただろうか、いや一度もない、と、感激したのです。
 国王はこれがたいそうお気に召したのか、早速これを味見係のもとに持って行き、皇太后と枢機卿、王妃のために、これを材料にしたちょっとした料理を用意するように命じました。
 そしてその残りは、王と彼の弟とが食せるように保存しておくようにと、指示をしたのです。
 さらには、これをヴェルサイユの温室で育てることにするほどのご執心ぶり。
 かくしてグリンピースは貧乏の象徴的立場から、いっきに金持ちの美食家のための貴重な食材という地位にまで、のし上がったのです。

 さて、こうしてグリンピースは宮廷人どころか場末の人々から司教までが欲しがる、流行の食べ物となったわけですが、しかしその一方で、グリンピースの食べすぎによる消化不良で死者まででるという有様。
 例えばかの有名な建築家、フランソワ・マンサールは、まさにこのグリンピースの消化不良によって亡くなったのだという、専らの噂です。
 しかも、この流行は、流行としてはたいそう長く続いたようです。
 というのも、グリンピースがフランスを賑わしてからもうすぐ40年が経とうとする1696年5月、ルイ14世の愛人マントノン夫人は、ド・ノアイユ枢機卿宛ての書簡で、このようにもらしているからです。

 「宮廷は相変わらずグリンピースの話題でもちきりです。
 四日前から王侯たちが話すことといえば、グリンピースを食べたいという欲求不満のいらだちと、それにありついた時のうれしさ、そして繰り返し食べることの喜びの三つだけです。
 国王と夕食を共にして十分に食べた後でも、床に就く前につまむためのグリンピースを用意する女性までいます。
 彼女たちは、それが消化に悪いことがわかっていてもやめようとしないのです。
 これはもはや流行の域を越えて、狂乱としか言いようがありません。」 ~辻 美樹・訳~

 40年近く経ってもまだ狂乱と言わしめるこの熱狂っぷり。
 グリンピースは、ある意味フランス宮廷を相当に支配していたといっても良いかもしれません。

 ところでその熱狂を作り出した当の本人オディジェですが、彼は多くの人々にグリンピースの幸福をもたらしはしたものの、残念ながら彼の野望自体は、ルイ14世に届かなかったようです。

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『秘密の花園』貴族たちの日常や文化がいっぱいなブログ。ベルばらKids関連話も更新していく予定です。よかったら是非、遊びにきてくださいね!」

     

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《ベルばらKidsぷらざスタッフより》
 コラム『楽園の生活案内』を連載中のmashironさんが書籍・『宮廷マダムの作法』を出版しました。
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2011/01/17 12:50:27 楽園の生活案内 | | トラックバック (0)

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