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2011年2月 8日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

これのどこが悪女? 1815年

  ~アントワネット没後22年~

 エルバ島を脱出したナポレオンが百日天下に終わったのは、1815年、ベルギーのブリュッセル郊外ワーテルロー(=ウォータールー)において、イギリス・プロイセン連合軍に完膚(かんぷ)なきまでに叩きのめされたからだ。

 ウィリアム・サッカレーの『虚栄の市』は、この歴史的戦闘ーー「ワーテルローの戦い」--を背景に描かれている。何度も映画化されたが、最新作はなぜか日本でだけ『悪女』(ミーラー・ナーイル監督、2004年公開)という、オリジナル無視のタイトルに変わり、劇場上演もされずDVD発売のみとなっている。

 サッカレーは『虚栄の市』を「主人公のいない小説」と呼び、事実、多種多様な人物が登場して、ヴィクトリア朝時代の俗物性が皮肉られている(彼曰く、「卑(いや)しいものを卑しく欲しがる人間、それがスノッブ(=俗物)だ」)。

 主人公はいないとはいえ、誰もが読後、強烈に記憶に残すのは、悪女の典型ベッキー・シャープであろう。彼女と対比されるもうひとりのヒロイン、アミーリアが、ひたすら優しく愛らしく忍耐強く母性愛にあふれた、男に都合よすぎる存在なので、かえってベッキーのしたたかさぶりにリアリズムを感じるのかもしれない。

 ベッキーは、売れない画家を父に、フランス人ショーガールを母に、貧民街で生まれた。早くに両親を亡くしたため寄宿学校にひきとられ、そこでこき使われながらも、教育を受けることはできた。

 長じて、田舎の貧乏貴族の邸でガヴァネスとして働くことに決まり、いよいよ世間へ出て行くシーンが印象的である。学校での教えを守り、清く正しく生きてゆけという言葉とともに贈られた聖書を、ベッキーは走る馬車の窓から校長に向かい、ぽーんと投げ捨てるのだ。

 そんな彼女だから、猛烈な上昇志向を抱き、美貌と才覚で次々男を手玉に取ってゆく。ついには貴族の息子と結婚し、社交界の花形にまでなるが、浮気がばれて離縁され、売春婦へと身を落とす。

 しかし、ベッキー、強し。今度はアミーリアの兄を篭絡(ろうらく)、どん底から再浮上するのだ。そして彼の財産を食いつぶすと、保険金をかけて殺し、悠々とその金で余生を送る。

 この壮絶な原作のベッキーに比べ、『悪女』のベッキーは何とも中途半端だ。彼女は夫を心から愛し、幸せな結婚生活をしていたのに、好色な侯爵に言い寄られたため夫に誤解され捨てられる、というストーリーに変えられている。これのどこが悪女?と問いたい。

 ただこの映画で描かれる上流階級人士たちの鼻持ちならなさは特筆もので(侯爵の邸に招待されたベッキーが女性たちから受ける仕打ちは、異分子に対する陰湿ないじめそのもの)、その意味ではサッカレー曰くの「俗物」の世界がじゅうぶん描かれていた。 (中野京子)

movie悪女

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 監督: ミーラー・ナーイル
 出演: リース・ウィザースプーン、ガブリエル・バーン 他
 公開: 2004年

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movie虚栄の市 

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 監督: マルク・マンデン 
 出演: ナターシャ・リトル、フランシス・グレイ 他
 公開: なし

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bell中野京子さんの監修『マンガでオペラ』刊行のお知らせ

書名:マンガでオペラ
監修:中野京子
出版社:ヤマハミュージックメディア(各A5判 120~128ページ)
発売日:2011年1月21日(第三弾、第四弾)
価格:945円(税込)

『マンガでオペラ』

 オペラの有名な題材を8作品選び、中野京子氏監修の元、オペラに興味がある方はもちろん、漠然とした興味を抱いていた方やまったく知識のない方にも楽しんでいただけるよう企画・制作いたしました。シリーズは、2010年12月から2011年3月まで毎月刊行を予定しているそうです。(※商品紹介より)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2011/02/08 9:30:56 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇>」第56回の今日は、「これのどこが悪女?」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2011/02/post-2db4.html#more  リース・ウィザースプーン主演『悪女』について書きました。  このごろ映画のタイトルがひどいなあと思っていますが、これもそのひとつ。まあ、原題をただカタカナにしてしまう(しかも冠詞抜き!)よりはマシかもしれませんが、『悪女』がまさか『虚栄の市』... 続きを読む

受信: 2011/02/08 10:03:57