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2011年2月25日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

美しき女同士の友情!?

 一般的に、男性よりも女性のほうが、仲間作り、コミュニティ作りに熱心であり、また、それが得意なものである。それでいて、『“女同士の友情”というと、“男同士の友情”よりも爽やかな印象はなく、眉唾ものと思わることも多々ある。
 それはきっと、女性同士が純粋な好意だけではなく、利害で繋がっていることもあり、時には女性ならばお互い腹に一物抱えていても表面上では仲が良いふりができてしまうからだろう。
 それに、女性は概して、やたらと“私たちは仲良しなの!”とわざわざ他人誇示したがる。一緒にトイレにいったり、手をつないだり、お揃いの物を持ったり、秘密を打ち明けあったり。男性からすると、そういった行為は、わざとらしいかぎりで、かえってその友情をうさんくさいものに感じさせるのだろう。しかし、男性がなんと言おうと、いつの時代も女性はやはり“女同士の友情”が大好きだ。今流行の“女子会”なんていうのも、その表れといっていいだろう。

 フランス王妃マリー・アントワネットが現代にいたなら、しょっちゅう“女子会”に参加したのではないかと思う。ジャン=クリスチャン・プティフィス作の『ルイ16世』によると、アントワネットが生きたフランス宮廷でも“女同士の友情”は、一種の流行で、彼女たちはお互いに秘密を打ち明けあい、それは「友情のおしゃべり」と呼ばれていたそうだ。セーブルの陶芸工房では、「優しい女友だち」だとか、「2人のあいだの信頼関係」だとかいう素焼きまで販売されていたそうで、おそらく当時の女性たちは、現代の女性が仲良しの証にお揃いのストラップなどを持ち合うように、その素焼きを持ち合っていたのだろう。
 アントワネットももちろん、その“女同士の友情”に夢中で、お相手は複数いたが、最も“仲良く”したのが、ポリニャック夫人だった。しかし、アントワネットの王妃であったため、その友情は悪用されてしまい、周囲からの嫉妬も買い、それがアントワネットを窮地に陥れることになってしまった。やはり、“女同士の友情”は、純粋な好意だけではなく、利害と無縁ではいられないのだろうか?

 ギリシャ神話で、女同士の友情がクローズアップされているエピソードはあまりない。それは、神々がほとんど血縁関係にあり、互いに独立独歩な存在であまり互いに馴れ合わず、横関係が希薄であることと、古代ギリシャの女性は外出せず、ひたすら家にいて男性に仕えていたためでもあるだろう。
 しかし、こんな印象的なエピソードがある。

 英雄ヘラクレスの母アルクメネは、月満ちても胎児であるヘラクレスが生まれず苦しんでいた。ただでさえ、この胎児は体重が重く、気の毒なことにアルクメネのお腹の皮はその重みで突っ張ってしまっているほどだった。
 胎児がなかなか産まれないのは、胎児の父である神々の王ゼウスの正妻、女神ヘラの妨害によるものだった。ヘラは、自分の娘である出産の女神エイレイテュイアにアルクネメに出産させないように指示していた。エイレイテュイアは、アルクネメのいる館の戸口で、膝を重ねて、本来妊婦を救うその手をその上に固く組み合わせて座っていた。このままでは、アルクメネは出産することができず、陣痛に苦しみながら死んでしまうだろう。
 ここで登場したのが、アルクメネの女友だちガリンティアスだった。この勇敢で利口な女性は、女神の前に立ち、こう叫んだという。
アルクメネが今男の子を出産しました!
 その言葉に仰天した女神は思わず手をぱっと開いてしまう。その途端、英雄ヘラクレスは産み落とされたのである。

 ガリンティアスは、ヘラの怒りを買い、イタチにされてしまったが、そんな彼女を哀れんだ女神ヘカテは、そのイタチを自らの聖獣とした。
 出産は女性だけの特権であり、試練である。ガリンティアスに出産経験があったかどうか分からないが、同じ女性として、出産に苦しむ友だちを見捨てられなかったのだろう。また、女神ヘカテも、そんな彼女の思いに共感したのだろう。
 共感、まさにそれが“女同士の友情”の美しき源泉なのではないか。

 アントワネットは、『ベルばら』で男装の麗人オスカルに、「あなたに女の心をもとめるのは無理なことだったのでしょうか」と言っているが、実際は最もアントワネットに女の心で共感していたのは、オスカルだと思う。アントワネットと同じく女性としてフェルゼンを愛していたからこそ、オスカルはアントワネットの悲恋に胸を痛め、自分の気持ちは押し殺していた。
 アントワネットがオスカルのその心を分からなかったとしたら、とても残念に思えてならないが。(米倉敦子)

《参考文献》
ルイ16世』 ジャン=クリスチャン・プティフィス作 小倉孝誠監修 中央公論社
ギリシアの神話』 カール・ケレーニイ作 植田兼義訳 中公文庫
変身物語』 オウィディウス作 中村善也訳 岩波書店

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2011/02/25 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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