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2011年3月29日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

女はつらいよ 1666年

  ~アントワネット誕生89年前~

 かつては日本にも「姦通罪」というものがあった。江戸時代は死罪、明治憲法では2年以下の重禁固刑。適用されるのは、夫ある女性とその相手だけで、妻ある男性がいくら遊んでもノープロブレムだった。今なら誰もが不公平と思うはずだが、撤廃(てっぱい)されたのは第二次世界大戦後の1947年、日本国憲法発布にしてようやくのこと。つまり、まだたかだか60年ちょっとしか経っていない(愕然とする)。

 「スカーレット・レター」(ローランド・ジョフィ監督、1995年公開)は、この姦通問題を扱っている。

 アメリカへの殖民が始まってまもなくの1666年(日本は徳川家綱の時代)、ひとりの美しい女性がボストン近港へ降り立つ。夫より一足早くやってきたのだが、後に夫の船は難破したと知らされる。

 それから2年、彼女、ヘスターは、町の晒(さら)し台に立たされる。腕には生後3ヶ月の赤子を抱き、服の胸には金糸で縫いつけられた赤い「A」(Adulterer=姦婦)の文字。夫以外の子を産んだゆえの、それが罰であった。

 原作は、ホーソーンの代表作「緋文字(ひもんじ)」。アメリカ殖民時代における厳しいピューリタニズムを背景に、3人の男女のそれぞれの葛藤が描かれる。

 ヘスターはどれほど脅されても賺(すか)されても、断じて相手の男の名を自白しない。そしてそれが権力者たちの憎悪を買う。姦通というより、不服従の罪と見做されたのだ。

 町の外れの掘っ立て小屋で、針仕事によって子どもを育てながら、ヘスターはあくまで誇り高く、しかも困っている人がいれば積極的に手をさしのべた。数年たつうち人々は、彼女のその生き方に心打たれ、胸の「A」を「Able(=有能)」と呼ぶようになってゆく。

 ヘスターは誰をかばっていたのか?ーー不義の相手、それは若い声望ある牧師だった。彼はヘスターを愛してはいたが、結婚もせず妊娠させたのを悔やみ、また彼女ひとりに罪を押し付けたことにも激しく苦悩していた。とはいえ自らの恥をさらす勇気はなく、口をつぐむ(第三者的には呆れる)。

 実は、もっと呆れる男が登場するのだが、それはヘスターの夫。死んだと思われていたのに、長らくインディアンに拘束されていて、ようやくボストンへ着いてみれば、妻が子持ちとなっていた。怒って復讐の鬼と化す。

 その復讐の仕方が、何もそんなややこしいことしなくても、というほどのものなのだ。まず彼は、自分の顔が誰にも知られていないのを幸い、ヘスターに夫婦であることを秘密にするよう強制。次いで、医者という立場を利用して町の住人を嗅ぎまわり、ついに牧師が怪しいと目星をつける。そこで彼と同居し、じわじわ精神的に追いつめてゆく……。

 異教徒たる日本人には、かくも苛烈きわまりない信仰心は理解の外なので、どうしても「凛々しい女と根性無しの男たち」の対比ばかりが眼についてしまう。

 だがそれより理解しにくいのは、原作を無視したハッピーエンド。あの「フランダースの犬」をさえ、強引にハッピーエンドにもっていったハリウッドだから、当然といえば当然か。 (中野京子)

movieスカーレット・レター 

20110329

 監督: ローランド・ジョフィ 
 出演: デミ・ムーア、ゲイリー・オールドマン他
 公開:1995年

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bell中野京子さんの著書

書名:中野京子と読み解く 名画の謎
   ~ギリシャ神話篇

出版社:文藝春秋社(262ページ)
発売日:2011年3月9日
価格:1680円(税込)
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2011/03/29 9:00:30 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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