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2011年5月19日 (木)

楽園の生活案内

入浴の歓び

 楽園に住む人々にとって、入浴とは「官能的」なもの。
 前世紀にはまだ、人々は「水に触れるな。悪い気が入る」として水を恐れていたものだったけれど、この楽園の世の中では違います。

 楽園の人々にとって、清潔を保つだけであれば、白い亜麻布を身につければそれで十分です。
 汗は塩分や脂肪分が多いので、この亜麻布はこれらを効果的に吸収してくれるからです。
 科学的にこの亜麻布の素晴らしさを熟知していない人々にとっては、身体を湯にさらすことが一番なのかもしれません。
 けれども、亜麻布の良さを知っている楽園の人々にとっては、これこそが清潔を保つための一番の方法なのです。
 亜麻布は、大昔にお風呂で身体をきれいにしていたのと比べると、ずっと手軽に、清潔さを保ってくれるのです。
 現に、太陽王ルイ14世入浴はほとんどしませんでしたが、一日おきにオーデコロンで湿らせた綿を使って顔を拭き、一日に3度も下着をとり変えました。
 それゆえ、人々には潔癖だと言われていたのです。

 けれどもそんな太陽王は、彼の寵愛するモンテスパン夫人のために、宮殿の中にとても豪華な湯殿を作らせました。
 清潔のためであれば日々のケアだけで十分なはずですが、この湯殿は、国王が愛する女性とともに、二人だけの歓びを享受するためだけに作られた記念碑です。

 この湯殿の間は、まずは広い玄関広間に始まります。
 それから続いて2つの客間、そして寝室が現れます。
 寝室は、湯に浸かって消耗した身体をすっかり休めるためのもの。
 そして浴室。
 浴槽は八角形。大理石でできています。
 大きさは長さ3メートルほど、深さは1メートル、周囲には段差や座席もついています。
 これらの集合体である湯殿の間は、寄木細工、大理石、フレスコ画などで彩られ、何とも美しい空間となっています。
 残念ながらこの湯殿の間は、完成する前にモンテスパン夫人が国王の寵愛を失ってしまったために、当初の目的通りに使用されることはなかったようですが、入浴を楽しもうとするような心意気を感じます。

 それからしばらくして、入浴は貴婦人方の朝の面会でも重要な役割を果たすようになります。
 貴婦人の入浴時に呼ばれた人々は、その貴婦人の寵愛を他の人よりちょっと多く戴いていることの証明にもなるという、とても名誉なことであり、そしてその貴婦人は、自分のために集まってきた人々に対して存分に自分の魅力を発揮し、人々の目を楽しませようとします。
 友人たちに囲まれた入浴の時は、会話も楽しく、ココアやコーヒーなどを飲みながら、なごやかなムードで過ぎていきます。
 そのような場に相応しく、浴槽はまるで家具のように美しい形に整えられ、部屋にあっても良く調和するように、行き届いた造りになっているのです。

 現代に生きる私たちにとって、入浴とは主に清潔を保つためであり、浴槽も通常であれば機能性を重視したものが多いように思います。
 けれども、さすがは楽園です。
 彼らはやはり、日常のどんなことも「官能」に変えてしまおうという執念に、非常に長けているように思えます。


                          


『秘密の花園』貴族たちの日常や文化がいっぱいなブログ。ベルばらKids関連話も更新していく予定です。よかったら是非、遊びにきてくださいね!」 


                          


《ベルばらKidsぷらざスタッフより》
 コラム『楽園の生活案内』を連載中のmashironさんが書籍・『宮廷マダムの作法』を出版しました。
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2011/05/19 11:00:00 楽園の生活案内 | | トラックバック (0)

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