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2011年6月28日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

もうすぐおまえもこうなる! 1794年

  ~アントワネット没後1年~

 フランス革命であれほど夥(おびただ)しい血が流され、ルイ16世まで首を刎(は)ねられたというのに、国の舵取りはかえって混迷を深め、革命派の内ゲバも熾烈(しれつ)さを増すばかりの、そんな中、ロベスピエールの暴走を食い止めようとしたのがダントンだった。

 セザール賞をはじめとして、数々の映画賞に輝いた「ダントン」(アンジェイ・ワイダ監督、1982年公開)は、ふたりの対照的な政治家の死闘を通じて、革命のやりきれない暗黒面を描く。

 ロベスピエールとダントンは、まるで小説家が創造したキャラクターのように、何から何まで面白いほど正反対だった。前者は痩身(そうしん)蒼白、後者は肥満体で醜い赤ら顔(鼻が潰れているのは、子どものころ牡牛に踏まれたからと言われた)、前者はストイックで謹厳実直な理想家肌、後者は女好き贅沢好きの現実派。

 とうぜん政治手法も大きく異なり、ロベスピエールが革命の断固推進をめざし、対外戦争で勝利を得ようとしたのに対し、ダントンはブルジョワとの良好な関係や諸外国との妥協を模索し、全てに寛容を訴えた。

 周知のとおり、ふたりの闘いにおいてはロベスピエールが勝利する。彼は革命初期に死刑廃止論を唱えていたにもかかわらず、強大な権力を手にしてからは次々に反対派を粛清(しゅくせい)していった。

 冷酷な性質ゆえ、というよりむしろ、彼のように清廉で厳格すぎる人間はーー個人としては立派かもしれないがーートップの座につくと、万事にわたって理想を杓子定規(しゃくしじょうぎ)に押し付け、反対意見を許さなくなりがちだからだ。こうしてロベスピエールは、かつての仲間であり、今なお一目置いているダントンをも抹殺せざるを得なくなる。

 1794年4月、荷馬車で断頭台へ運ばれるダントンの姿を、例のダヴィッド(「アントワネット最後の肖像」の画家)がスケッチするシーンが本作にも出てくる。残念ながら「この下司野郎!」というダントンの一喝(いっかつ)は聞かれない。

 その代わり、2階の窓から見下ろすロベスピエールに向かって、「もうすぐおまえもこうなる!」と叫んでいた。これが正しい予言だった証拠には、ダントン処刑のわずか2ヵ月後、ロベスピエールもまた断頭台の露と消えるのだ。

 監督のワイダは、制作当時のポーランド情勢を作品に投影したとされる。つまり軍人首相のヤルゼルスキーがロベスピエール、「連隊」のワレサ議長がダントンになぞらえられている、と。

 時代や国が変われども、恐るべき権力闘争の様相は変わらない…。 (中野京子)

movie ダントン

1

 監督: アンジェイ・ワイダ
 出演: ジェラール・ドパルデュー ヴォイツェフ・プショニャック
 公開: 1982年

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                           diamond   diamond   diamond

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2011/06/28 9:10:44 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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