楽園の生活案内
賭博の楽しみ
宮廷人特有の病、「満足病」にすっかり冒されてしまわないためにも、貴族たるもの、上手に時間を潰す方法を考えなければなりません。
いかに上手く時間を潰すか、これは、宮廷に暮らす人々にとっては、もはや「芸」だと言っても良いものでしょう。
上手く時間を潰す方法ならいくらでもありますが、賭博はそれらの中の代表的手段のうちの一つ。
賭博は、高貴の者たちの間で、熱狂的大流行の渦を巻き起こしています。
いえそれどころか、この「食後の賭博」は、高貴の者たちだけに許された特権であるとすら言えるかもしれません。
というのも、あるとき、女優のボーヴォアザン嬢、ダルビニ嬢、その他の人々が賭博をした際に、この行為によって自分たちの神聖なる特権をすっかり傷つけられたと感じた貴婦人たちは、早速根回しに奔走。
そして、彼女たちを病院兼養老院といった機能を果たす施設へ、6か月の間入院させることに成功したからです。
このように、「上品であること」とすっかり結びついている賭博なのですから、貴婦人たちが公然と自宅に賭博台を開くことについては、全く恥に思う必要はありません。
世の中には、賭け事で名士に成り上がった有名な人々もいるのだし、生活に必要な費用を賭け事で稼ぐようにと言われたその息子でさえも、それによって特に不名誉だとされることはないのです。
それどころか、王室の方々ですら、賭け事には熱中しているご様子。
ヴェルサイユでは、賭け事を禁止する勅令が出されているのにもかかわらず、王自ら賭け事を楽しむということはよくあることです。
宮廷で定期的に行われる夜会にだって、ゲームのためのテーブルはきちんと用意されているのです。
さらに良いことには、生活のためなど、実際に賭博でお金を稼ぐ必要があったとしても、賭場にはそれを上手く覆い隠してくれるムードが漂っているのです。
それは、男女の艶っぽい楽しみごと。
これによって貴婦人は、自宅にこのような場を設けさえすれば、すぐに複数の愛人を手にすることができるのだとか。
そもそもこの、「お金を稼ぐ」という目的を色っぽいムードを漂わせてカムフラージュすることは、エチケットですらあるのです。
ですからときには、恋愛の楽しみを職業として提供してくれる女性たちも、この高貴な館に出入りすることもあります。
こうして賭博に参加する者たちは、次第に自制心を失っていくように導かれていくのです。
ただ気をつけなければならないことは、破産。
莫大な借金を支払えず、王から封印状をいただいて、禁固刑に処された者もいるくらいですから、いくら楽しく時間を潰しても、これだけは常に肝に銘じておかなければなりません。
『秘密の花園』貴族たちの日常や文化がいっぱいなブログ。ベルばらKids関連話も更新していく予定です。よかったら是非、遊びにきてくださいね!」
《ベルばらKidsぷらざスタッフより》
コラム『楽園の生活案内』を連載中のmashironさんが書籍・『宮廷マダムの作法』を出版しました。
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2011/07/21 11:00:00 楽園の生活案内 | Permalink | トラックバック (0)