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2011年9月13日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

妻の座は強し? 1805年

  ~アントワネット没後12年~

 上流階級の女性が外で働くなど「とんでもない」と考えられていた時代、妻の座は就職と変わらなかった。したがってダブル不倫の末、女性のほうが先に離婚し、相手が離婚できないまま急死してしまうと…

 そんな悲惨な例を、有名なエマ・ハミルトンの史実を借りて描いたのが「美女ありき」(アレクサンダー・コルダ監督、1941年公開)。原題は「レディ・ハミルトン」。

 映画の中でエマの過去はさらりと触れられるだけだが、実際の彼女はまさに美貌ひとつを武器に、社会の底辺から這い上がった女性だ。ロンドンでダンサーやモデルをしていて貴族のパトロンを見つけ、その男とともにナポリへ行ったのが転機となる。ナポリ公使ハミルトン卿の妻の座を射止めたのだ。卿は60歳、彼女は26歳だった。

 エマはレディ・ハミルトンとなり、ナポリ王家と親しくつきあい、公使夫人として宮廷での社交を一手に引き受けた。華やかな日々。やがて対ナポレオン戦争の英雄、ネルソン提督があらわれ、ふたりは恋に落ちた。

 ネルソンは妻子持ちだった。ロココを引きずるこの時代、愛のない結婚と恋人の存在は、さほど糾弾(きゅうだん)されることではなかったが、それにしてもネルソンとエマの行状は派手で人目をひいた。ふたりはロンドンに居を構え、一時ハミルトン卿やエマの生母まで同居したのだ。

 やがて卿はエマに年金を残して死ぬ。ネルソンも1805年の「トラファルガー海戦」で戦死。遺産は正式な妻のもとへわたった。エマはギャンブルと酒に溺れ、落剥(らくはく)してゆく。年金も家も失い、債務者監獄へ入れられ、フランスへ逃れ、ついに野垂れ死に同然の最期を迎える。ネルソンの死から10年後だった。

 「美女ありき」で描かれたエマは、かなり美化されており、ギャンブルも酒も出てこない。ネルソンの妻が頑として離婚に応じなかったため、先に離婚したエマは無収入となり困窮、またネルソン亡き後の人生は完全なからっぽ、という筋書きになっていた。

 製作裏話としては、このとき主演のヴィヴィアン・リーとローレンス・オリヴィエは、ダブル不倫の後始末をようやくつけて、目出度く再婚したばかり。夫婦となって初の共演作がこれだった。いくぶんストーリーに反映されたのかもしれない。

 (皮肉なことにヴィヴィアンにとって、妻の座は決して安泰ではなかった。後年、オリヴィエに新しい恋人ができ、かつて自分がしたのと同じことを彼女にされる、即ち、妻の座を追い落とされる)

 映画へもどると、ここに登場するナポリ宮廷の描写、これが面白い。うじゃうじゃいる小さな王子と王女で、貧乏長屋のようにいつも大騒ぎなのだ。そして無能なフェルディナンド4世は、王妃に頭が上がらない。それもそのはず、政務は彼女ひとりが切り盛りしていた。

 この王妃の名は、マリア・カロリーナ。そう、女帝マリア・テレジアの娘だ。18人も子どもを産み、なおかつ実務に長けていたのは、間違いなく母親譲りであろう。

 本来なら利発な彼女が、フランス王ルイ16世妃になるはずだったのに、姉の急死でいやいやナポリへ嫁がされた。おかげで妹のマリー・アントワネットがブルボン家へ入ったのだから、人生とは不思議なめぐり合わせだ。おまけにマリア・カロリーナとエマ・ハミルトンがこんなに仲が良かったとは…。 (中野京子)

movie 美女ありき

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 監督: アレクサンダー・コルダ
 出演: ローレンス・オリヴィエ ヴィヴィアン・リー
 公開: 1941年

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書名:印象派で「近代」を読む
出版社:NHK出版(216ページ)
発売日:2011年6月8日
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2011/09/13 8:32:11 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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