世界史レッスン<映画篇>
3人では多すぎる 1774年
~アントワネット19歳~
イギリス王太子の元妃、故ダイアナは、テレビインタビューで離婚についてこう語った、「この結婚には3人の人間がいました……多すぎます」。その後、彼女が交通事故死すると(謀殺説まであった)、「多すぎ」とされたもうひとりの女性カミラがチャールズ王太子の妻の座におさまったのは、周知のとおり。
ダイアナ妃の遠い遠いご先祖にも、実は似たような悲運の女性がいたんですよ、という映画が、「ある公爵夫人の生涯」(ソウル・デイブ監督、2009年公開)。
その女性ジョージアナは、1774年、17歳の誕生日直前に、9歳年上のデヴォンシャー公爵ウィリアム・キャベンディッシュのもとへ嫁いだ。
本作には、若く美しいジョージアナが夫に愛されるものと信じ、胸ときめかせて初夜を迎えたというのに、相手は何ら興奮もなく、淡々と彼女の下着を脱がせ、義務を果たすかのように事を済ませるという、薄ら寒い描写があった。
ウィリアムにはすでに愛する女性がおり、ジョージアナとの結婚は跡継ぎをもうけるためだけの、割り切ったものだった。彼女は心を踏みにじられ、悲しみと憤(いきどお)りに耐え、やがてほんとうに愛する男性を見つける--というふうに映画は進んでゆく。全てジョージアナの視点で、自分はひどい目にあっているとのお話作りだ。
しかし政略結婚が当たり前の時代に、果たして実在のジョージアナが、これほど夫の愛を求めて喘(あえ)いだかは疑わしい。社交界の華となり、おおぜい愛人を作り(中のひとりとの間には子まで成している)、賭け事で莫大な借金をするなど、生前はゴシップ・メーカーであった。
彼女の肖像画が残っている。大資産家たる公爵の妻だけあり、当代の人気画家ゲインズバラとレイノルズのふたりに注文したもの。どちらの画布にも、美貌とファッションセンスを謳(うた)われたとおりの、きわめて魅力的な女性が描かれている。
こんなに美しいのに公爵はなぜ……と思うのは外野の感想。恋愛結婚でなければ、男だって好きでもない女性との営みは苦痛であったろう。お互いさまである。
公爵の愛人で、ジョージアナの死後、夫人の座についたエリザベスの肖像も、レイノルズが手がけた。知的で強い視線が印象的な、やはり魅力的な女性だ。
では公爵本人は? イタリア人逸名(いつめい)画家による肖像を見る限り、あまりパッとしない。ただそれは彼本人がそうだったのか、はたまた画家のせいなのか、不明。 (中野京子)
ある公爵夫人の生涯
監督: ソウル・ディブ
出演: キーラ・ナイトレイ、レイフ・ファインズ他
公開: 2009年
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中野京子さんの著書
書名:印象派で「近代」を読む
出版社:NHK出版(216ページ)
発売日:2011年6月8日
価格:1050円(税込)
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2011/12/13 9:50:10 世界史レッスン<映画篇> | Permalink | トラックバック (1)
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