2013年2月末をもってブログの更新を終了いたしました。 ⇒詳しく
e-book Japan ベルサイユのばら

0228delete -->

« 今週のベルばらKidsは『王家のショコラの味』 | トップページ | 「ベルばら絵日記 :結婚、早すぎるよ〜〜」おたより »

2012年2月14日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

「わたしと結婚したい人などいない」 1765年

  ~アントワネット10歳~

 子ども時代のモーツァルトの、ヨーロッパ演奏旅行は有名だ。ザルツブルクの宮廷音楽家だった父が、娘と息子の神童ぶりを世に知らしめるべく、1763年6月から1766年11月までの3年半、一家4人でドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、イギリス、スイスとおこなった、一種の家族音楽巡業である。

 「ナンネル・モーツァルト~哀しみの旅路」(ルネ・フェレ監督、2011年公開)は、その旅の後半、1765年のフランス滞在を描いている。モーツァルトより5歳上のナンネルは、この過程で作曲への夢をあきらめた、という物語。

 狭い馬車に揺られ、旅から旅の生活のうちに、ナンネルの思春期は過ぎてゆく。音楽漬けの日々とは言いながら、弟の伴奏をするだけで、自己の才能をそれ以上伸ばしたり、作曲の勉強はさせてもらえない。

 女は男を支えるもの、との父親の(というより時代の)思想が絶対的なので、彼女が自分の存在意義を見失いがちになるのも当然だ。こんなふうに旅を続け、音楽家としての発展も中途半端で、いずれ結婚せよと言われても、主婦としての訓練も何もしていないのだから「わたしと結婚したい人などいない」と悲痛なつぶやきも漏れる。

 映画は、時代の抑圧によって才能を押し潰(つぶ)された女性の悲劇として捉えている。けれどナンネルの場合、弟の圧倒的天才を前に、存在がかすんでしまった側面も間違いなくある。

 この時代、すでに音楽家として自立していた女性は少なからずいたし、後年モーツァルトは姉の才能を惜しんでウィーンへ招き、一人立ちさせようとした。だがナンネルはその道を選ばなかった。親に従順なおとなしい性格ゆえであり、言葉を変えれば、芸術という荊(いばら)の道には不向きな人間だったからだ。

 本作には、いくつか歴史的変更が加えられているので注意が必要である。

 まずモーツァルト一家がパリへの途上で立ち寄った修道院に、ルイ15世の娘たちがいたというシーン。ここでナンネルは2つ年下のルイーズ・マリーと親友になるのだが、そういう事実は無い(そもそもこの王女はナンネルより14歳も年上だった)。ただしルイーズが3人の姉とともに修道院へ預けられていたこと、後年、修道女になったことは事実。

 もう一つ、これがこの映画最大の難点なのだが、ナンネルがルイ・フェルディナンと恋仲になるというエピソード。ルイ・フェルディナンはルイーズの兄、つまりルイ15世唯一の息子、つまり王太子だ。

 ナンネルはヴェルサイユで、妻を失ったばかりの若い王太子と出会うとの設定だったが、前妃が亡くなったのはその20年も前。1765年にはすでに再婚して、5人も子どもがいた。

 いや、それどころか、モーツァルト一家が訪れたこの年の暮れには、ルイ・フェルディナンは結核により36歳で死んでしまう。ナンネルと恋するどころか、すでに病床にあったのだ。

 ちなみに彼が死去したためにその息子、即ちルイ15世の孫が、16世として王座についたのだった。 (中野京子)


movie ナンネル・モーツァルト~哀しみの旅路

51b2binbail_sl500_aa300_

 監督: ルネ・フェレ
 出演: ルネ・フェレ、 マリー・フェレ、 マルク・バルベ他
 公開: 2011年

⇒Amazon.co.jp on asahi.comで「ナンネル・モーツァルト~哀しみの旅路」のDVDを検索


                           diamond   diamond   diamond

bell中野京子さんの著書

書名:印象派で「近代」を読む
出版社:NHK出版(216ページ)
発売日:2011年6月8日
価格:1050円(税込)
amazonで購入する⇒

お便り募集このコラムをお読みになった皆さんの感想や質問をお待ちしています。 ⇒こちらの「ベルばらKids専用フォーム」からどうぞ。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2012/02/14 9:25:59 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165303/53980464

この記事へのトラックバック一覧です: 「わたしと結婚したい人などいない」 1765年:

» 新作「マリー・アントワネット 運命の24時間」 トラックバック 中野京子の「花つむひとの部屋」
 新しい本が出ました♪  今週末に書店に並びます。  「マリー・アントワネット 運命の24時間     〜知られざるフランス革命ーヴァレンヌ逃亡」         (朝日新聞出版社)  (クリックするとアマゾンへゆきます)  担当編集さんと一昨年から話を...... 続きを読む

受信: 2012/02/14 9:30:18