~アントワネット没後78年~
王政復古への危機感や普仏戦争の大敗に怒ったパリの労働者たちは、1871年、革命自治政府を樹立した。これが「パリ・コミューン」だ。しかしわずか72日後、プロイセンの後ろ盾を得たティエール政権に叩きつぶされ、3万人もの市民虐殺という惨澹(さんたん)たる結果で終わりを告げた。
「血の一週間」と呼ばれたこの虐殺で夫と子どもたちを失った女性バベットが、デンマークの小さな浜辺の村へ逃げてくる・・・・『バベットの晩餐会』(ガブリエル・アクセル監督、1988年公開)はこうして始まる。
… (09/12/08)~アントワネット没後72年~
アメリカを二分し、深い爪痕(つめあと)を残した南北戦争は、1865年にようやく終わる。勝った北軍の兵士も、負けた南軍の兵士も、三々五々、故郷へ帰っていった。
久々の傑作西部劇『3時10分、決断のとき』(ジェームズ・マンゴールド監督、2009年公開)の舞台は、戦争から数年を経たアリゾナ州だ。
… (09/11/24)~アントワネット没後94年~
今回とりあげる映画も、住み込みの家庭教師がヒロイン。「ガヴァネスから転落すると」で書いたように、女性の職場がほとんどなかった時代には、与えられた仕事に不平不満など言っていられない。アニー・サリヴァンもまた、見えず聞こえず喋れずの三重苦の少女のガヴァネスという困難きわまりない役を、壮絶な覚悟で引き受けたのだった。
『奇跡の人』(アーサー・ペン監督、1962年公開)の原題は「The Miracle Worker=奇跡を起こす人」だ。つまりこれは、三重苦を克服したヘレン・ケラーを指すのではなく、ヘレンの上に奇跡を起こしたサリヴァン先生その人のことである。
… (09/11/10)~アントワネット没後25年~
「フランス革命からフランケンシュタインへ」で書いたように、メアリー・シェリーがゴシック小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』を発表したのは、1818年のこと。これほどよく知られていながら、これほど読んだ人の数が少ない小説はない、と言われる一方で、映画化となると40作を超えるのだから驚く。
数多(あまた)あるそのフランケンシュタイン映画のうち、抱腹絶倒の傑作コメディとして異彩を放つのが、『ヤング・フランケンシュタイン』(メル・ブルックス監督、1974年公開)だ。
… (09/10/27)~アントワネット17歳~
ハプスブルク家二大美女と謳(うた)われる、エリザベート皇后とマリー・アントワネット。前者は世界的に大ヒットしたウィーン産ミュージカルをはじめ、ヴィスコンティの傑作『ルートヴィヒ』での鮮烈なシシィ(ロミー・シュナイダーのはまり役)など、劇化にも映画化にも恵まれているが、後者にはさほどのものがなかった。
そこで最新作『マリー・アントワネット』(ソフィア・コッポラ監督、2007年公開)に期待が集まったわけだが・・・・賛否両論渦巻くのもやむなし、という少々残念な出来であった。
… (09/10/13)~アントワネット没後83年~
前回は男から女へのなめらかな変身物語だったが、今回はその逆に、無理やり、、しかもかなりヤケ気味に、女から男になった人間の登場する西部劇。
インディアンと白人の不幸な歴史を描きながら、『小さな巨人』(アーサー・ペン監督、1971年公開)には、随所にユーモアが散りばめられていて笑える。
… (09/09/15)いつも「ベルばらKids」をご愛読いただきありがとうございます。
今月の「世界史レッスン」の9月の更新日は15日と29日になります。
どうぞお楽しみに。
… (09/09/08)~アントワネット没後71年~
始まりは、16世紀後半のイングランド。エリザベス一世に仕える美貌の貴公子オルランドは、女王から「決して老いてはならぬ」と厳命され、以後360年間、若さを保って生き続ける・・・・。
ヴァージニア・ウルフの原作と比べ、映画版『オルランド』(サリー・ポッター監督、1993年公開)はフェミニズム色がいい具合に薄れ、絢爛(けんらん)たる絵巻の中、一気に英国史を駆け抜ける面白さがある。主演のティルダ・スウィントンの両性具有的魅力も圧倒的だ。
… (09/08/25)~アントワネット没後68年~
長らくイタリアはーー列強のフランス・スペイン・オーストリアの政治的思惑の犠牲になりーー分断されたままだった。ようやくサルデーニャ王指導のもと、悲願の統一イタリア王国が誕生したのは、なんと1861年になってからのこと。
「パッション・ダモーレ」(エットーレ・スコラ監督、1980年制作)は、その統一まもないイタリアを舞台にした、奇妙奇天烈(きてれつ)な恋物語である。
… (09/08/11)~アントワネット没後79年~
フランダース(フランドル)とは、かつてのフランドル伯の領地ーー現ベルギー西部を中心に、オランダとフランスの一部をも含む、北海沿岸地域のこと。ファン・エイク、メムリンク、ボス、ブリューゲル、ルーベンスと、錚々(そうそう)たる画家を輩出したことでも知られる。
ここフランダースを訪れたイギリス人女性作家ウィーダが、旅の翌1872年、児童文学『フランダースの犬』を刊行した。同名タイトルでいくどか映画やアニメ化がされているが、今回取り上げるのは、ケビン・ブロディ監督、1999年公開アメリカ映画。
… (09/07/14)~アントワネット没後30年~
次々事業を起こしては破産をくり返し、数千ページに及ぶラブレターを出し続け、濃いコーヒーをがぶ飲みしながら、小説や戯曲を90作も書きあげたバルザック(とうぜん、長生きはできませんでした)。彼が創造した2000人もの登場人物のうちのひとりが、モンリヴォー将軍だ。
「小説を書くかわりに、いつでも小説さながらに生きてしまう男」と形容されるこの将軍は、ランジェ公爵夫人に夢中になる・・・。フランス・イタリアによる映画化タイトルは、ずばり『ランジェ公爵夫人』(ジャック・リヴェット監督、2007年公開)。
… (09/06/16)~アントワネット没後21年~
相手に苦痛を与えて性的快楽を得る異常性欲「サディズム」の語源となった、マルキ・ド・サド(サド侯爵)は、暴力と筆禍(ひっか)により生涯の大部分を監獄や精神病院で過ごし、代表作『ジュスティーヌ、あるいは悪徳の栄え』も獄中で書いている。
『クイルズ』(フィリップ・カウフマン監督、2000年公開)は、そんなサドの、知られざる最晩年の様子を、想像を交えて異様な迫力で描いた作品。
… (09/05/26)~アントワネット没後63年~
フランスの作家フローベールによって、写実主義文学の傑作『ボヴァリー夫人』が生まれたのは、1856年。これにはモデルがいて、フローベールの父の教え子だった開業医ドラマールの妻が、不倫の果てに借金を重ねて服毒自殺した、いわゆる「ドラマール事件」がそれである。
映画--『ボヴァリー夫人』(クロード・シャブロル監督、1991年公開)--は原作にほぼ忠実に、淡々と、だが現代にも通じる底知れぬ闇を秘めて描かれる。
… (09/05/12)
~アントワネット33歳~
政務には熱心、私生活は地味で質実、9男6女をもうけた妻との間は円満で寵姫を持たず、自ら畑仕事もすることから「百姓ジョージ」とあだなされて国民に愛されたジョージ3世だが、ときおり精神錯乱に陥(おちい)って公務をとれなくなるのが玉に瑕(きず)であった。
1788年、50歳のときの、これまでで最悪の大発作を、ブラックな笑いをまぶして描いたのが、『英国万歳!』(ニコラス・ハイトナー監督、1996年公開)だ。
… (09/04/28)~アントワネット没後73年
1866年といえば、水の都ヴェネチアが長いハプスブルク家支配から解放され、イタリアの一都市となった記念の年である。敗北したフランツ・ヨーゼフ皇帝は、ヴェネチアをナポレオン3世にまず譲渡する形を取ってからイタリアへ渡す、という最後の嫌がらせに出たが、たとえそうされてもヴェネチア人の自由への喜びは大きかった。
この歴史的事件を背景に、破滅的恋の行方(ゆくえ)を描いたのが、『夏の嵐』(ルキノ・ヴィスコンティ監督、1954年公開)である。
… (09/04/14)~アントワネット生誕63年前~
「魔女狩り」――「教会による組織的・狂信的異端摘発(てきはつ)」(*『新明解百科語辞典』より)――には、ヨーロッパ中世の暗黒史というイメージがある。だが実際には近世前期に至るまで続いていたし、規模は小さいが新大陸アメリカでも行なわれていた。
アメリカにおける最後で最悪の魔女裁判といえば、現マサチューセッツ州セイレムの村で起こった1692年の事件。『クルーシブル』(ニコラス・ハイトナー監督、1997年公開)は、その痛ましい顛末(てんまつ)を描いている。
… (09/02/24)~アントワネット生誕52年前~
1703年、バスティーユ監獄でひとりの囚人が急死した。司祭は呼ばれず、死後、彼のいた牢内の私物は全て焼却され、身元のわかるものは何ひとつ残されなかった。死体の顔も潰(つぶ)されていたという。
『仮面の男』(ランダル・ウォレス監督、1998年公開)は、フランス裏面史のこの謎めいたエピソードをもとにしたもの。
… (09/02/10)~アントワネット没後52年~
ファム・ファタール(運命の女)の代表といえば、フランス人作家メリメが創造したカルメンであろう。ビゼーのオペラ化によってさらに有名になり、映画も現在DVDで手に入るだけで10種近くあり、根強い人気を誇っている。
最新作で、なおかつ原作に忠実なのが、『carmen.カルメン』(ヴィンセンテ・アランダ監督、2003年公開)。
… (09/01/27)~アントワネット生誕18年前~
あけましておめでとうございます。本年も「世界史レッスン<映画篇>」をどうぞよろしく♪ 今回<映画篇>としては第7回ですが、その前の「世界史レッスン」から数えると、早や136回目。お正月らしく(幕の内は過ぎましたが)、華やかな作品を選んでみました。
実在したスーパースター、ファリネッリの生涯を描いた『カストラート』(ジェラール・コルビオ監督、1994年公開)。
… (09/01/13)
~アントワネット生誕36年前~
デフォー作『ロビンソン・クルーソー』(1719年初刊)の副題は、まるでテレビ番組「何とかサスペンス劇場」の案内みたいに長くて説明的だ。曰く、「ヨーク出身の水夫ロビンソン・クルーソーの生涯と驚嘆すべき大冒険。難破船でただひとり生き残り、オルーノク河口近いアメリカ沿岸の無人島で28年間過ごし、奇跡的に海賊船に救助されるまでの詳細を、本人記述」!
映画化は数多く、最新版は元007ピアース・ブロスナン演じる『ロビンソン・クルーソー』(ロッド・ハーディ監督、1996年)
… (08/12/23)~アントワネット2歳~
髪の真ん中だけ残し、左右を丸刈りにするヘアスタイルは「モヒカン刈り」といって有名だが、どこから生まれたかといえば、名前どおり、アメリカ・インディアンのモヒカン族戦士の髪型だった。
モヒカン族の名を高からしめたのは、ジェイムズ・クーパーのベストセラー小説『モヒカン族の最後』。何度も映画化されており、一番新しい『ラスト・オブ・モヒカン』(マイケル・マン監督。1992年公開)がなかなか面白い。
… (08/12/09)~アントワネット没後34年~
「私の心を他の女性が占めることなど絶対ありません、絶対に! ああ、神よ、こんなに愛しているのに、なぜ離れていなければならないのでしょう!」――情熱的なこのラブレターを書いたのは、何と、ベートーヴェン! ではお相手は誰?
今なお解明されないベートーヴェンの恋人探しを描き、観客をアッと言わせた(少々無理がありすぎて)のが、『不滅の恋』(バーナード・ローズ監督、1995年公開)。
… (08/11/25)~アントワネット31歳~
サンフランシスコの高層ビルの一室。ルイという黒髪の美青年が、ジャーナリストのインタビューに答えて曰く、自分はヴァンパイアで、もう200年も生き続けている・・・
吸血鬼ものを現代的感覚で蘇(よみが)えらせた『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(二ール・ジョーダン監督、1994年公開)の、さりげない導入部だ。
… (08/11/11)~アントワネット37歳~
富裕な商人の娘イネスは、レストランで出された豚肉を食べなかった。そのことが「隠れユダヤ教徒」、即ち「異端者」と疑われ、うむを言わさず拘束され拷問され・・・
『宮廷画家ゴヤは見た』(ミロス・フォアマン監督、2008年公開)は、悪名高いスペインの異端審問で、肉体も魂も虫けらのように踏みつぶされる民衆の悲劇をリアルに描きだし、見る者の胸を抉(えぐ)る。
… (08/10/28)~アントワネット18歳~
純朴な田舎の青年がひょんなことから国を出て、各地をめぐり軍隊に入り、さまざまな体験を重ねるうち次第に堕落、だが心の荒(すさ)みと反比例して富と身分は急上昇・・・
華麗なる歴史絵巻を堪能(たんのう)できるのが、サッカレー原作『バリー・リンドン』(スタンリー・キューブリック監督、1975年)。
… (08/10/14)「世界史レッスン」が衣替えし、08年10月より<映画篇>として新たにスタートします。映画鑑賞が趣味で、雑誌に映画評の連載もされている中野京子氏が、今度は映画にみる歴史エピソードを紹介。「世界史レッスン」と同じように、マリー・アントワネットが生きた時代(1755-1793)の前後100年間を舞台にした古今東西の映画の見どころや、歴史豆知識を紹介します(このコラムは毎月第2・第4火曜日に更新します)。
… (08/10/14)

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