宮廷人特有の病、「満足病」にすっかり冒されてしまわないためにも、貴族たるもの、上手に時間を潰す方法を考えなければなりません。
いかに上手く時間を潰すか、これは、宮廷に暮らす人々にとっては、もはや「芸」だと言っても良いものでしょう。
… (11/07/21) 楽園に住む人々にとって、入浴とは「官能的」なもの。
前世紀にはまだ、人々は「水に触れるな。悪い気が入る」として水を恐れていたものだったけれど、この楽園の世の中では違います。
楽園に生きる女性たちにとって、修道院とはただの宗教施設ではありません。
それどころか楽園の女性たちは、何も宗教に身を捧げなくても、生涯にわたって修道院とは身近な関係であり続けるのです。
良家の子女たちは一定の年齢に達すると、今まで育ってきた自分の邸を離れ、修道院で生活を送るようになります。
彼女たちはここで、生まれてからずっと、自分の邸で養育係や家庭教師の手によって与えられてきた教育を、今度は社交界に出ても恥ずかしくないようなところにまで引き上げ、完成させるのです。
そして彼女たちは、ついに結婚に相応しい年齢にまで達すると、修道院を去り、夫のもとへと嫁ぎます。
けれども、修道院を去ったとはいえ、修道院とはこの先まだまだ沢山、生活をともにする機会に溢れているのです。
昔から豆といえば貧乏食、なんだかちょっと、物悲しい雰囲気を彷彿とさせる食べ物でした。
実際豆は、修道院の門や救済院の人々たちにふるまわれていたわけで、粗末な節約のための食事でもあったのです。
しかし1660年、「豆」のイメージを一新する大きな動きがありました。
青い部屋のランブイエ館の女主人がこの世を去り、その後を引き継ぐようなかたちで世にその姿を知らしめたのは、スキュデリー嬢。
彼女の主な取り巻きは犬一頭、尾長猿1匹、おうむ1羽、エジプト・カメレオン3匹。
嗅ぎタバコを優雅にたしなむということは、貴族の証。
それは男性であっても女性であっても同じこと。
もはやこれは楽園において、社交上のマナーと言って良いでしょう。
貴婦人にとって、コルセットは欠かすことのできない必需品。
コルセットは下からバストを押し上げ、せり出すようにすることによって、まるで今にも乳房がデコルテから零れ落ちてしまいそうな風情を演出してくれます。
そしてこのコルセットと、スカートに大きなふくらみをもつパニエとを組み合わせることによって、さらに女性たちの腰のほっそりとした美しさがなお強調されるというわけです。
楽園も後半期になってくると、長い間病になることを恐れていたために避けられていた入浴という習慣が少しずつ戻ってくるようになりました。
人々が入浴を頻繁にするようになると、以前は強烈だった体臭もだいぶ和らいできます。
そんな身体にまとうのに相応しいのは、動物性の強烈な香りよりは、植物性のさわやかな香り。
入浴が習慣化してくる時期に沿うような形で、楽園には植物性の香料が浸透していくのです。
れっきとした紳士淑女にとって、香水を用いていつでも素晴らしい香りを漂わせておくということは、みだしなみとして必須なこと。
楽園では様々な香りが流行しましたが、それには大きく分けると2つの動きがありました。
今日はその、前半期にあたる流行についてのお話です。
ジャン=ジャック・ルソー(1712-1778)は『社会契約論』や『エミール』など、現代にも残る思想や著書を多数残した偉大な哲学者。
彼や彼の著作については、何となく高尚で厳粛なイメージがつきまといますが、そういったイメージは、むしろ彼の著作がすでに浸透しきったあとの19世紀、物事にできるだけ合理的で実用的なものを追い求めるようになったその世紀の風潮の中で、学問や芸術といったようなものが人々に良い影響をもたらす、厳粛で高尚なものとして祭り上げられた結果、染み付いていったイメージなのではないかと思われます。
というのも、楽園でのルソーのイメージとは、こういったお堅いものとは無縁だったように感じられるからです。
人間は、見目の美しいものにはとても弱いように見えます。
長い歴史のなかで、美姫に心を奪われ、必ずしも意図したものではなかっただろうに、持てる権力の大部分を彼女のために注ぎ込んでしまった君主は一体どれだけいることでしょう。
誰にとってもきっと一度は心当たりがあるのではないかと思いますが、そのように美しいものに弱い心というのは、現代においてもやはり同じです。
17世紀は、肖像画の時代と言われます。
家柄の良い者は、画家に自分の姿を描かせ、それを邸宅内に飾ったりしていたようです。
さらには邸の中には絵画室というものがあって、彼らはそこに自分たちの先祖代々の肖像画をずらりと並べていました。
かのオスカルも、ある日突然、画家に自分の肖像画を描かせたいと言い出します。
ばあやはそこで、「今まであれほど嫌がってらっしゃったのに」と不振がり、少し不吉なイメージまで抱いたようですが、そのエピソードを見てもわかるように、家柄の良い者、または上流の市民にとって、画家に自分の肖像画を描かせるということはある意味流行みたいなものであり、人々にとってそれなりに身近なことだったということです。
16世紀、フランス女性たちはサロンの風習を作り出しました。
というのも、時の国王アンリ4世についてパリへやってきた兵士たちがあまりにもひどい風体であり、そしてそのような彼らがよりによって宮廷において重要な位置を占めていたため、宮廷中が全く下卑た兵隊風俗に染まってしまっていたからです。
彼らはニンニクの匂いをぷんぷんさせ、ナイフはまるで楊子のように扱うし、破廉恥で突飛な音をたて、間違いだらけでなまりだらけのとんでもない言葉を使って話し、宮殿内をたむろしていたのだとか。
楽園の都に住むにあたって、非常に大事な精神性のひとつに、「ギャラントリー」というものがあります。
このように聞くと、現代日本に生きる私たちにはちょっとなじみがなくて想像しにくいかもしれません。
が、ようは「女性に対する好ましい礼儀作法」という意味であることがわかれば、「なんだ、なるほど!」と思えることでしょう。
私たちでも知っているように、現代でも西洋の男性には全体として女性に対してレディーファーストな姿勢が行き届いているのは、このためです。
宮廷に出入りする貴婦人方にとって、とても大事なのは「歩き方」です。
何故なら、「歩き方」一つとっても、パリの女性であるか宮廷の女性であるかが一目瞭然で周囲の人々に知れてしまうからです(つまり一瞬にしてお里が知れてしまうわけです!)
ですから将来宮廷に出入りするであろうことが予想のついている家柄の女の子の場合、彼女は幼い頃から専門の教師をつけられて、みっちりと特訓を受けるのです。
楽園において、何か病気になったときの治療法といえばそれは、「瀉血、灌腸」と言って良いでしょう。
楽園の世界では、病気になったときは身体の中に何か「悪い体液」がめぐっているものだと思われていましたから、とにかくそれを体外に排出することが必要だと考えられていました。
そこで、瀉血、灌腸です。
いつも「ベルばらKids」をご愛読いただきありがとうございます。
「楽園の生活案内」を連載中のmashironさんこと、真城七子さんが、新刊「宮廷マダムの作法」を刊行しました。
楽園での結婚とは、とても合理的なものです。
合理的だと思えるポイントはいくつかありますが、まずは物理的なものについて。
それは称号と財産に関することです。
楽園の住人たちが手にしている貴族の称号とは、なりたい者が欲しいと思ったときに突然実力で手に出来るようなものではありません。
この楽園で出世したいと思うならば、まずはサロンを攻略しなければなりません。
何故ならサロンの女主人は社会的に政治的に大きな発言力をもつことがあり、その影響力は決して無視することができないほどに強大なものだったからです。
ヴェルサイユの楽園では、「男らしい」とされるものと「女らしい」とされるものにあまり距離がありません。
法律では確かに男女の身分の違いは明確にあったのですが、全体をぱっと見回した感じでは、きっちりとした明確な性差を感じさせないような印象を受けることが多いように思います。
私たちの住む現代にも流行色というものがあるように、色彩に対する感覚というものにはその時代の気分を反映する何かがあるようです。
それがたとえどこかで仕組まれたものであっても、それはそのときの大多数の気分とそれなりに一致しているからこそ流行するのでしょう。
宮廷中の全女性の憧れが「寵姫になること」だったのだから、それを実現するということはとても大変なことです。
そもそも「寵姫」とは全女性の中でただ一人選ばれるわけですから、まずその競争率はなみ大抵ではありません。
しかも美女や教養ある女性のひしめく宮廷のこと、その争い自体もかなりハイレベルだったことでしょう。
楽園に住む全女性の憧れの姿といえば、国王の愛人であるところの寵姫になることでしょう。
楽園では一夫一婦制が原則とされていましたが、王族の結婚とは常に、政治や国にとって有利になるように執り行われるものです。
だから相手が例えどんなに醜くても、不潔でも、正常とはいえないような状態であっても、心を殺して子どもを作ること、それが王族としての務めでした。
パニエは全くもって楽園に相応しい役割を果たしていたわけですが、このような常軌を逸した流行は、やはり色々なところでたたかれるということもよくあることです。
パニエは初め、イタリア歌劇団の女優が用いたところから流行が広まったとの説がありますが(これについてはいくつかの説がある)、このフープのスカートは次第に大きく広がり、もはやグロテスクと言って良いほどに大きく成長していきました。
その大きさはついに円周が3メートル60にまで達しましたが、これ以上はその労力のわりに効果が少なかったためか、これを超すまでに大きく膨らむことはなかったようです。
楽園においては、パニエは必須のアイテムです。
パニエとは簡単に言うならば、スカートを美しい形に膨らませるためにドレスの下に着用するもの。
何と言ってもパニエとは、他に同時に着用していたコルセットとあわさって、腰のあたりに見事なくびれを作ることを助けてくれたのですから、女性たちが飛びつかないはずがありません。
おしろいを塗って、頬紅もつけて、さて完成!
…と思いきや、楽園の人びとにとっては、これではまだお化粧を半分終えただけのこと。
さらに重要なのは、この下地の上にエスプリを付け加えることです!
化粧をする「楽園」の女性たちにとって、なかなかの大事業だったのは、「頬紅を塗る」という作業です。
彼女たちは毎夜毎夜続く夜会や恋のたわむれのために青白い顔をしていましたが、そんなただ不健康なだけの顔色では、せっかくの恋も台無しです。
そういうわけで彼女たちは、それを隠すために不自然なほどに紅を沢山塗りたくりました。
ビデといえばフランス人、といったようなイメージがありますが、実はビデはフランスで生まれたものではないようです。
ビデはもともと、イタリア人が発明したもの。
「ヴェルサイユ宮殿にはトイレがない」という話は、とても有名ですが、それは本当なのでしょうか。
ルイ14世の一日を追うと、一日の中で何度か、彼が「穴開き椅子」に座って用を足している場面に遭遇します。
… (09/12/17) 1680年代以降、宮廷はヴェルサイユで営むものという定型がかなりできあがってきたために、そこに訪問してくる貴族や官僚といったような人々を収容する必要がでてきました。
そこで新たに増設されたのが、閣僚の翼棟を2棟、南の翼棟、北の翼棟。
さらには、ヴェルサイユに来るために使用する、馬車や馬なども収容できるように、大厩舎と小厩舎も建設されました。
楽園といえども、エチケットは大事。
というか、このべルサイユの楽園では、人々はエチケットのために存在しているのではないかというくらいに、エチケット三昧の日々を過ごしていました。
それがどれほどのものだったかというと、例えばルイ14世の愛妾、マントノン夫人はこのようにもらしています。
これは、ヴェルサイユの楽園の人々の間で広まった、ある種の恐怖感。
『百科全書』を書いているモンマルテルという人は、この「退屈」をさして「満足病」と名づけました。
何故なら、この病におかされるのは、一日一日の生活に追われる庶民ではなく、とても満たされた特権階級の人だちだけだったからです。
嫉妬とは人間にとって不毛なもので、恥ずべき感情である。
嫉妬する人間は心が狭い。器が小さい。
愛を育むということにとって、こういった醜い感情は全く邪魔なものである。
すべての人がそうではないかもしれないけれど、現代に生きる私たちには、心のどこかでこのような感覚が息づいているのを感じることがあるのではないでしょうか。
何もかもが官能的になってしまう楽園の都では、恋愛は第一の関心ごとと言っても過言ではないでしょう。
むしろ恋愛を知らない者は男であろうと女であろうと、一人前とはみなされません。
それでは、そのような楽園で恋愛をするには一体、何に気をつければよいのでしょうか。
これは楽園の都での恋愛作法です。
ショッピングや社交訪問を一通り終えると、お日さまの光はやわらいできます。
このような心地の良い時間帯は、ぜひそぞろ歩きでもしたいもの。
貴婦人たちは、チュイルリー公園などで、芝居やオペラが始まる6時頃まで時間を潰します。
チュイルリー公園は入場無料。
けれどもそこには門番がいて、服装がだらしない方や従僕などの制服姿の方にはお引取り願うことになっています。
この公園は野外サロンといったような雰囲気が漂っていて、けれどもあまり気取りすぎているわけでもなく、ここでは見知らぬ人同士でも、とても身分の高い御婦人であっても、気軽におしゃべりを楽しんだのだといいます。
何かと忙しい朝のお化粧を終えると、集まっていた訪問客たちもすっかり退散。
貴婦人たちは楽器のお稽古を始めます。
先生をお招きしてレッスンなどをするのですが、当時貴婦人方に人気のあった楽器は、ハープ。
そういえばマリー・アントワネットの得意な楽器もまた、ハープでした。
アントワネットはさすが、流行を取り入れていたわけですね。
貴婦人の朝は、11時頃に始まります。
何でも、当時の人々の感覚としては、11時以前は「まだ夜が明けていない」のだとか。
貴婦人は、可愛がっているペットの子犬がじゃれついてきて、やっと目が覚めるのだそうです。
もし自分の運命が生まれたときからすでに決まっていたとしたら、人はどうなるのでしょう。
すでに自分のいる立ち位置が決まっていて、自分の限界も初めからわかっているのなら、それはもういくら努力をして高みに上ろうと思っても、まったく無駄なこと。
何故なら、どんなに頑張ってももう、すでに定められた枠線を超えることは決して有り得ないことなのだから。
一体、アダムとイブ以来、人類が楽園のなかに生きたことはあったのでしょうか。
「楽園」ということに関して、タレーランという、フランス革命の頃に政治家や外交官として活躍した有名な人はこう言っています。
「楽園は失われた。1789年より前の時代を知らない人は、この世に生きた甲斐がない」
… (09/06/18) みなさま初めまして。
コラム『楽園の生活案内』を連載させていただくことになりました、mashironと申します。
言うまでもなく『ベルサイユのばら』はとっても素晴らしいお話ですが、そのあまりもの魅力ゆえに、「ああ、私もこんな世界に行けたらいいのに!」なんて、つい思ったことはありませんか?


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