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e-book Japan ベルサイユのばら

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天の涯から―東欧ベルばら漫談

 私は4年前、ポーランドで長男を出産したのですが、妊娠8ヶ月頃、前駆陣痛(本当の陣痛の前触れ)が原因で初めて地元の公立病院に入院した時、医療財政の破綻ぶりをまざまざと見せつけるような設備やサービスの粗末さに唖然としたものでした。

… (08/02/28)

 2月14日はバレンタイン・デーですね。
 ポーランドでも、この日は『Walentynki – Dzień Zakohanych』 (バレンタイン―愛の日)  として、花束やチョコレートなどをプレゼントする習慣があります。
 日本と違う点は、「女性から男性へ」が強調されておらず、恋人同志はもちろん、親子、友人など、あらゆる人間関係が対象であることでしょうか。
 いずれにせよ、日頃あまり口にしない愛情や感謝の気持ちを、カードや贈り物に込めて相手に伝えるのはとても大切なことだと思います。

… (08/02/14)

私が初めてヨーロッパを旅行した時、一番困惑したのが公衆トイレでした。
行ったことがある方はご存知の通り、ヨーロッパの公衆トイレにはたいてい管理人さんが常駐し、使用する際は日本円にして100円から200円ぐらいに相当するチップを支払うのが常識です。

… (08/01/24)

 この年末年始、私の家族はアメリカに住む夫の家族と一緒に過ごしました。
 大晦日には、地元のポーランド移民ソサエティの方々を中心に、ホテルのボールルームで盛大なNew Year's partyが開かれたのですが、その際、私が非常に頭を痛めたのが衣装の準備でした。

… (08/01/10)

 「みつばちマーヤ」というアニメをご存知でしょうか。
 この作品は、ドイツの児童文学作家ワルデマル・ボンゼルスの原作を、日本のアニメ制作会社がアニメ化し、1975年から76年にかけてテレビ放送されていたもので、後にドイツでも放送され、大変な人気を博したそうです。
 そして、この「マーヤ」は、私の夫が子供の頃から「pszczółka maja(プシチュウカ マヤ)」というタイトルでポーランドでも放送され、今なお代表的な子供番組として根強い人気を誇っています。
 主題歌は日本のものとは違い、ポーランド語のオリジナル・ソングが流れるのですが、これも母から子へと世代を超えて歌い継がれており、今やポーランドで知らない人はないほどです。

… (07/12/27)

 ポーランドは2004年5月にEUに加盟したのですが、こちらの人に意外と知られていないのが、「EU生みの母は日本女性である」という話です。(そう言うと、みんなに笑われるのですが……)
 EUの基本理念となった『汎ヨーロッパ思想』を著したリヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵の母親は旧名「青山ミツコ」、史上初めて外国人貴族と正式に結婚した日本女性として知られています。

… (07/12/13)

 ポーランドでは1997年に死刑制度が廃止されていますが、今年の9月になって、10月10日を「死刑に反対する欧州デー」にしようというEU議長国の提案に対し、拒否権を発動したことで問題になりました。
 もちろん、この拒否は死刑制度の復活が目的ではなく、安楽死や中絶といった生命の尊厳に関わる重要な問題について考える「生命擁護の日」とするべきだというのがポーランド大統領の主張で、こうしたトピックを強調することで、意見を違える国内政党を牽制する意味もあったようです。
 何にせよ、EU全体が死刑廃止で一致しているのは今後も変わらないでしょう。

… (07/11/22)

 ベルばらでは、オスカルの結婚話に苦しむアンドレが、兵営の階段に腰を下ろして一人煩悶していると、アラン「身分ちがいの恋にあきらめでもついたか、はっはっは」 と、ちょっかいをかけられる場面があります。
 アンドレが「もういっぺん、いってみろ」 と凄むと、アランも売り言葉に買い言葉で、
「目ざわりなんだよ! 女にふられたときはな、ドバーッと……」
とケンカをしかけるのですが、小学生の頃、初めて読んだ時には、ドバーッと何をするんだろう??」とずいぶん考えたものでした。

… (07/11/08)

 私がポーランドに来てから一番エキサイティングだった出来事は、車でスロヴァキアの国境を越えた事でした。
 高速道路の料金所みたいな国境管理局でパスポートにスタンプを捺してもらい、ゲートをくぐれば、もうそこはスロヴァキア。標識も看板も言葉も通貨も法律も、まったく異なる世界が開けているのです。
 目に映る風景はほとんど変わらないのに、ちょっと国境を越えただけで「外国」になってしまうのは、島国育ちの私には新鮮な体験でした。

… (07/10/25)

 8年前、超古代文明(注)をテーマにした日本のTV番組で、有名な考古学者が、
「ピラミッドの建造と言えば、何万もの奴隷を鞭打って強制労働させたというイメージを持っている人が多いが、あれは国家の威信をかけた一大公共事業だった。建設に従事している限り、労働者たちは生活を保障されたし、ピラミッドの完成という共通の夢もあった。そうでなければ、人力だけで、あのように巨大な建造物を造り上げることはできない」
と話していたのが非常に印象的でした。

… (07/10/11)

 ポーランドの大きな社会問題の一つに「アルコール依存症」があります。
 仕事も家族も失った人がホームレスになり、マイナス20度を超える厳冬の夜にはたくさんの凍死者が出るなど、以前からその救済が叫ばれています。
 が、中には、心理的な理由から公的援助に背を向ける人もあり、「施設を作りさえすれば救済できる」という単純なものでもありません。援助が必要であっても、人の心に簡単に立ち入ることはできないのです。

… (07/09/27)

 私の周りには親と同居しているポーランド家族が多くいます。郊外に行くほどこの傾向は顕著で、広い敷地に3階から4階建ての大きな邸宅を構え、2世帯から3世帯が一緒に暮らしています。
 こちらに来た当初、あちこちの家庭を訪問したのですが、同居の割には奥さんがチャキチャキと元気で、家の中の風通しがいいなあ……と思っていたら、皆さん、妻側の両親と同居だったんですね。

… (07/09/13)

 古今東西の名作の中で、目について語った言葉で一番好きなのが、マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』の冒頭、ヒロイン、スカーレット・オハラの描写です。

 『目は、茶のすこしもまじらない淡碧(うすあお)で、こわくて黒いまつ毛が、星のようにそのまわりをふちどり、それが目じりへきて心もちそりかえっている。』

… (07/08/23)

 欧州諸国を旅行していると、無名戦士の墓や戦争記念碑を随所に目にします。
 ポーランドでは首都ワルシャワの中心に位置するサスキ公園に、国を代表する無名戦士の墓があり、2メートル四方ほどの慰霊碑にはいつも多くの花が手向けられ、その両サイドをポーランド軍の兵士が見守るように立っています。また、慰霊碑を囲むアーチ型の壁には、これまでにポーランドが経験した戦争の記録が刻まれ、絶えず他国からの支配や侵略に脅かされてきた、哀しい歴史をしのばせます。

… (07/08/09)

 私は初めての海外旅行で夫と知り合いました。成田発のオーストリア航空の機内で隣り合わせたのが縁の始まりです。
 外国人を間近に見たのも初めてなら、英語で話すのも初めてで、夫への初メールは翻訳ソフトの一発変換で引き出された英文をそのままコピー&ペーストして送り付けるような有様だったのですが、出会ってから1年8ヶ月目にポーランドに移住することを決め、結婚へと至ったのでした。

… (07/07/26)

 ヨーロッパは日本より高緯度に位置するため、冬は夜が長いのですが、逆に夏の日照時間は最も長い時で17時間にも及びます
 とりわけ現代は、サマータイム制度(1916年、省エネや余暇の充実等を目的にドイツで始まりました)によって時計の針が通常より1時間早く進みますから、夏至の頃には、午前4時には早々と夜が明け、夜は9時を過ぎても遠くの山がはっきり見えるほど明るく、町の広場も夕涼みのビールを楽しむ人々で大変賑わっています。夏のこの時期、「夜」と言えば10時以降を差し、「10時になったから帰ろう」ではなく、「さあ町に繰りだそう」なんですね。

… (07/07/12)

 私の住んでいる所はポーランドの南東部に位置し、南の中心であるクラクフ周辺にアクセスしやすいことから、他国からお客様が見えると、クラクフに程近いアウシュビッツ収容所跡(正式名はポーランド国立オフィシエンチム博物館。『アウシュビッツ』はドイツ名です)にお連れする機会が多いのです。

… (07/06/28)

 マリー・アントワネットの贅沢と、執政者としての愚かさを象徴する有名な言葉として『パンが無ければ、お菓子を食べればいい』 というものがあります。
 しかし、アントニア・フレイザーの著書『マリー・アントワネット』によれば、このエピソードが歴史上に初めて登場したのはマリーがフランスに嫁ぐ100年も前のことで、発言の主はルイ14世のもとに輿入れしたスペインの王女とされていたそうです。そして、このエピソードは、18世紀を通してずっと、他国から嫁いできた王女の発言としてジャーナリズムに繰り返し現れた、王室を揶揄する際の「決まり文句」だったとか。

… (07/06/14)

 欧米の家庭を訪問すると、必ずと言っていいほど、あちこちに家族の写真が飾られています。居間や寝室はもちろん、キッチンや廊下、冷蔵庫の扉にまで家族の写真が貼り付けられていることも少なくありません。
 中でも一番印象に残っているのが、スーパーのレジでの出来事です。

… (07/05/24)

 近年、世界中にセンセーションを巻き起こし、昨年はトム・ハンクス主演の映画も公開されたダン・ブラウン原作の『ダ・ヴィンチ・コード』は、「イエス・キリストとマグダラのマリアは結婚していて、その末裔は今も生きている」 という大胆な仮説のもとに創られました。日本でも、幾つもの謎解き本が出版されたり、TVの特番が放送されたりと、大変な人気だったようですね。

… (07/05/10)

 ポーランドでの結婚式は、私にとって、決して甘美なものではありませんでした。なぜかと言えば、ポーランドの披露宴は一晩中続く上(地域によっては三日三晩ぶっ通し)、新郎新婦の愛のダンスを披露しなければならないからです。

… (07/04/26)

 私の住んでいる地域は、ウクライナとスロヴァキアの国境に隣接しているのですが、ドイツやチェコに隣接する西側が何かと潤っているのに対し、東側、特に南部はポーランドの中でも最も貧しい地域として知られています。

… (07/04/12)

 私と夫が初めて出会った時、夫はまだポーランド移民として家族とアメリカに住んでいました。それで、その年のクリスマス、アメリカの彼の家に招待されたのですが、あちらの流儀は私の想像以上にオープンでフレンドリーで、それがかえって私を混乱させる結果になったのでした。

… (07/03/22)

 私と夫は、ポーランドの市役所で結婚式を挙げました。ポーランド語で「ślub cywilny(シュルプ・シヴィルネ)」と呼ばれる、市民婚です。

… (07/03/08)

 ベルばらkidsファンの皆さま、こんにちは。
 「天の涯より ~東欧ベルばら漫談~」を連載することになりました、優月まりと申します。

 住まいは、『大統領官邸前にユーゼフ・ポニャトフスキの銅像が立っている国』――といえば、もうお分かりですね。池田理代子先生の傑作、『天の涯まで』の舞台となったポーランドです。
 それまで外国とはまったく縁のない暮らしをしていたのですが、ポーランド人の夫との結婚を機に、この地に移り住みました。

… (07/03/08)