榊原和子のSUMIREジャーナル
今度は朗読?紫吹淳
紫吹淳さんの8月の舞台のお知らせがきた。今度は「朗読」にチャレンジするという。その中身はなんと橋本治の『窯変 源氏物語』。これはちょっとすごいことになるのではないだろうか?
何を隠そう、私が最も敬愛する作家が橋本治大先生! はるか20年前、その名著『恋愛論』に出合って、己が愛の深淵を橋本治的切り口で解析することで、どれだけ救われたことか。言ってみれば一時期、橋本治先生は私の神であり、『恋愛論』はバイブルだったのだ。
『窯変 源氏物語』は、その橋本治さんが紫式部の『源氏物語』を口語訳したもので、光源氏の一人称で書きすすめられていく画期的な現代語訳。華麗でわかりやすい言葉とリアルなエロティシズムは、『源氏物語』の本質的な魅力をあまさず伝えてくれる。
そんな『窯変 源氏物語』を紫吹淳が語る! 光源氏、似合いそう! 「夕顔の段」というのも興味深く、六条御息所という大人の女性の懊悩と、ひっそりと咲いて死んでゆく夕顔のはかなさを、どう伝えてくれるか? まさに両性具有スター紫吹淳ならではの、面白い試みになりそうだ。
☆ ☆
紫吹さんといえば、今年は2つのライブを立て続けに観た。20周年記念のコンサート『XXSPLASH!』と、ミュージカルと銘打たれているシャンソンショー『ジャック・ブレルは今日もパリに生きて歌っている』で、どちらも歌手紫吹淳の力量を、あらためてアピールするものだった。
自分で構成と演出をしたという『XXSPLASH!』(4月、新国立劇場)は、彼女自身がやってみたいことと観客が観たいものがうまく一致、20年間につちかったエンターテイナー紫吹の資質が、並大抵ではないことを見せてくれた。宝塚時代の代表作の『ガイズ・アンド・ドールズ』や、退団後の出演作『グランドホテル』、『ボーイ・フロム・オズ』、それに紫吹ファンなら観てみたい作品の筆頭といってもいい『シカゴ』や『キャバレー』。そんな有名なミュージカルの歌とダンスをふんだんに織り込んだ構成は、ビジュアルもアレンジも楽しく、紫吹淳という人は本当にファンのニーズに敏感なのだな、と感動する。退団後、ここまで踊りまくったことがないというダンスは、相変わらずしなやかでスマートで、ダンサー紫吹淳の健在ぶりも嬉しかった。
その1カ月後に行われた『ジャック・ブレルは今日もパリに生きて歌っている』(5月、ル テアトル銀座)は、シャンソンが満載されたステージで、こちらでは歌い手として、また新しくチャレンジする姿を見せてくれた。
20世紀のフランスを代表する歌手ジャック・ブレルは、シャンソンの反逆児、シャンソンの変革者と呼ばれ、その歌はどれもこの世界への悲しみや怒り、絶望に満ちている。同時に、それでもこの現実を見続けていたい、見ずにはいられないというような、生命の強さや逞しさがあふれ出ていて、魂の輝きが込められた言葉は、一つ一つが激しく奥深い。そんなブレルの楽曲26曲を、2人の男性と2人の女性、そしてナビゲーターが、歌い語りついでいくのがこのショー。そのなかで紫吹淳は、宝塚時代をほうふつとさせるような男物のスーツ姿で登場し、5曲のソロを含む13曲を歌いあげる。
なかでも、ブレルが自分を自嘲的に笑う歌「ジャッキー」や、マタドールの光と影を描き出す「牡牛」などは、演劇的な広がりを感じさせてくれ、やっぱり歌手であると同時に役者なんだ紫吹淳は、と思わせてくれるものだった。そういえば、メガネをかけて男性歌手たちとともに生意気な青年風に歌う「ブルジョワども」での、男姿で男言葉の鮮やかなパリジャンぶりも楽しかった。
そんなステージを観ていると、退団しても男役の面白さは追求していってほしいし、シャンソンというジャンルもさらに追求していってほしいと思う。シャンソンは人生を歌うもの、役者として人間として歳月を重ねていく紫吹淳のその時々の姿を、シャンソンはおりおりに鮮やかに映し出してくれるに違いないのだから。(榊原和子)
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2006/06/30 13:00:00 榊原和子のSUMIREジャーナル | Permalink | トラックバック (1)





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