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2006年7月31日 (月)

榊原和子のSUMIREジャーナル

『ベルばら』全国ツアー千秋楽(その1)

 7月28日、鹿児島はひたすら暑かった。だがその暑さがなんと心地よいことか。

 東京とはやはり違う、湿度が低めのカラッとした暑さ、そのかわりジリジリと太陽に灼かれるという表現がぴったりで、ここはまさに南国なんだと実感させられる。

 雄大な桜島を前におだやかな紺碧の海が美しく広がる鹿児島市。ここが水夏希オスカルの終焉の地になるのだと思うと、ちょっと感無量。

 会場の鹿児島文化センター(宝山ホール)は立見まで出る盛況ぶり。館内にも熱気がこもっていて、客席でも少し汗ばむ状態だから、軍服姿のオスカルやアンドレ、衛兵たち、輪ッカのドレスの娘役さんたちはさぞ暑いことだろう。

 そんななか、ラストの回がいよいよ開幕、薔薇のモチーフと電飾の前で立っている小公子、ばらの少年・少女に、地元のファンの悲鳴ともどよめきともつかない声が湧きあがる。続いて壮一帆アンドレを真ん中に、6人のばらの青年、さらに大きい「きゃーっ」。そんな嬌声に迎えられ、白ばらの娘役たちを従えてオスカル登場。水オスカルはこの旅のあいだにひときわ細くなり、清冽な色気と気品を増しているように見える。繰り広げられる華やかなプロローグのパレードも、これが見納めだと思うと本当に寂しい。今年の1月1日から始まった『ベルばら』の、本当に最後の回なのだと思うと、どのシーンも愛しく、どのシーンも心に突き刺さってくる。

 水オスカルは、セリフも歌も声がよく伸びている。不順な天候のなか移動・乗り打ちを続けるという過酷なツアーで「シトワイアン!行こうーーーーー!」と叫び続けても、びくともしなかった喉への自信と、「愛の巡礼」をはじめとする主題歌でみせた歌唱力の向上は、これからの大きな糧になるだろう。演技では、家族やばあやとのやりとりは温たかで心なごませ、衛兵たちへは統率力と連帯感を示し、ロザリーとの場面では包み込む優しさと男役の色気を、アンドレへの愛では繊細さと弱さをみせるなど、さまざまな顔を演じ分けて、劇画のオスカルに近づき血を通わせてみせた。その意味でも『ベルばら』ファイナルを飾るにふさわしい演技者だった。

 とくにこのラストステージでは、その集大成ともいうべき入魂の場面の連続で、たとえば、2幕初めの練習場のシーンで、隊士たちの前で父のジャルジェ将軍に頬を打たれ倒れ込む。その後、立ち上がった瞳からは一筋涙が流れ落ちて、無念をたたえた表情は絶品だった。またロザリーの告白から今宵一夜に至る場面は、男性性から女性性への鮮やかな変身で、水オスカルをもっとも象徴するシーンだったが、ターコイズブルーの上着を一枚脱ぐだけで、その変身ぶりが全身から立ちのぼる。また、撃たれたアンドレへの「見えていないのか! なぜ付いてきたーー」の絶叫は、己の不明への悔恨か、最後はすすり泣きへと変わって胸をえぐられるのだ。そんな水オスカルの熱い演技を正面から受け止めるためか、壮一帆のアンドレも精悍さと包容力を増していて、華奢な外見を補ってあまりある堂々たるアンドレを見せてくれた。

 壮一帆という人は、もともと闊達という言葉が似合う明るい芸風の人で、マロングラッセやル・ルーと戯れるやりとりなど軽くこなしてみせる。だが、そのぶんオスカルの影としてどこまで包み込めるのかという心配があったが、出るときは出るが引くときは引くという、メリハリがハッキリした資質が幸いして、賢明さと情熱をバランスよく持ち合わせた、観客の共感を誘うアンドレだった。なかでも特筆したいのが、1幕でマロングラッセに問いつめられ「あいつ、衛兵隊に行きだしてから、変わりやがったんだ」というセリフで、オスカルの心を見失いそうな不安が色濃くにじみ出て、2幕目のアグレッシブな行動への伏線としてきちんと踏まえていた。そして、難台詞である「見果てぬ夢よ!~」の詩的美しさと詠嘆まで、いつのまにか身につけていたのも嬉しい驚きだった。

 水オスカルと壮アンドレは、外見上の多少のバランスの悪さはあったけれど、演技の相性は案外よくて、無言の信頼がベースにある日常のあっさり感と、心情をぶつけ合う場面の激情への昇りつめかたが、うまく歩調が揃っていたことが、コンビとしての成功を導いた。2人の演じた「毒殺のシーン」は、壮アンドレの思い詰め度と抱きしめかたの強さ、抱きしめられた水オスカルの情感と身体表現の美しさで、後世に残る名シーンとなるだろう。(榊原和子)

その2「大詰めのバスティーユ」へ続く)

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2006/07/31 12:19:28 榊原和子のSUMIREジャーナル | | トラックバック (0)

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