榊原和子のSUMIREジャーナル
朝澄けいライブ
9月24日の夜、『朝澄けいジャズライブ』を観に、東京プリンスホテルパークタワーへ。
芝公園の緑に囲まれたホテルの、1階にあるジャズバーがこの日の会場。窓の外にはライトアップされた東京タワーがすぐ間近に迫って、本当に眺めのいいゴージャスな空間である。
かよちゃん(愛称)は、自分のライブは3度目だし、今年は『エリザベート・ガラコンサート』や芝居『アルジャーノンに花束を』にも出ているから、すっかり落ち着いて堂々たるものだろう、と思いきや、トークでの照れまくりカミまくりのクセはあまり直っていない。でも、まるで王子様(今は姫?)そのものの外見と、少しおっちょこちょいな素顔のこのギャップが、彼女を親しみやすくさせているファクターでもあるので、あえて変わらなくてもいいのかもしれない。ただ、あわてて頬を叩くのだけは、そろそろやめてほしいけど。見てるほうが痛いから(笑)。
今回のライブも、音楽監督(ピアノも担当)は、hitomiの「LOVE200」などを作ったアーティスト鎌田雅人氏。彼のアレンジ・センスは本当に素晴らしい。曲のメインテーマをしっかりフィーチュアしながら重くならない。たとえ哀しい曲でも軽やかで透明感がある。インタビューでも話題にしたように、かよちゃんの声は癒し系なのだが、その特徴をさらに引き上げているのが鎌田さんのアレンジと演奏で、2人の組み合わせが相乗効果をあげているともいえるのだ。もちろん他のバンドメンバーも乗りがよくて、宝塚の曲なども楽しみつつ新鮮な感覚で演奏してみせる。そういう点でも、かよちゃんのライブは、とても幸せな形で続いていると思う。
ライブのプログラムは、よく知られたJAZZナンバーやポピュラーを前半に、後半は宝塚時代の思い出の曲を満載し、約2時間、たっぷりと歌いあげてくれた。声は芝居で鍛えられたのか、低音が以前より豊かになって、歌詞にはドラマ性も増して、歌手としてまたひとつステップアップした感じである(高音部がもっと伸びれば、さらに怖いものなしなのだけれど)。
そして、この夜の部の最後には、大きなサプライズが用意されていた。アンコールの拍手に呼ばれて出てきたかよちゃんは「こんど結婚することになりました」と報告。客席にはかなりの衝撃だったようで、明らかにどよめきが走った。だがサプライズ仕掛人のかよちゃんは、ただニコニコと嬉しそうに『スマイル』を歌いあげて、素知らぬ顔で舞台袖に引っ込んで行ってしまった。
そんな幸福なライブを観た帰り道、しきりに思い出されたのは、3年半前…本人もファンにとっても、本当に苦しかったに違いない退団劇のことだった。
2003年3月23日、多くのファンの嘆きの声を知りながら、それでも宝塚にきっぱりと別れを告げて朝澄けいは退団していった。おそらく舞台には二度と立たないだろうという、頑なまでの無言の意志を全身に現しながら。退団に至る理由は1つでなかったし、自分で選んだ結論だと聞いていたものの、どこか舞台への思いをむりやり封じ込めての旅立ちに見えて、多少なりとも取材で関わった身としては、朝澄けいのその後に無関心ではいられなかった。
だから、『GALAXY』で、彼女が再びその姿を見せたときも、もちろんその場に立ち合った。
2004年9月14日、1年半ぶりのスポットの中に浮かび上がる朝澄けいがいた。客席を埋め尽くしたファンからはいっせいに嗚咽がもれ、しばらくそのすすり泣きの声はやまなかった。待つ側には、本当に長い長い不在の時だったのだろう。そしてそのとき聞いた歌声は、「かよちゃんは、こんなにも温かい声をしていたのだ」と、会場にいた誰もに改めて思わせる、心に沁み入るような声だった。
そんな劇的な復活から、3度目のライブとなった今回、朝澄けいはみごとに大きくなっていた。歌が、言葉が心を素直に伝え、大人の女性の柔らかな美しさを惜しみなく見せていた。愛する人が出来たせいもあるだろう。また、インタビューでも語っているように、“朝澄けい”個人を認めてもらえる場=ステージがあり、出来ること=歌があり、自分のしている仕事にも確信が持てるようになったのだろう。報告のあとに、「結婚しても“朝澄けい”には変わりありませんから」という言葉もあった。一度、その手から離れそうになった生きる糧、“歌”や“舞台”の本当の価値を知った朝澄けいだもの、もう二度とそれを、その手から離すことはないだろう。(榊原和子)
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2006/09/28 10:12:45 榊原和子のSUMIREジャーナル | Permalink | トラックバック (0)





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