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2006年11月 6日 (月)

榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー

スター春野寿美礼の魅力全開!『うたかたの恋/エンター・ザ・レビュー』

花組全国ツアー 初日
『うたかたの恋/エンター・ザ・レビュー』

 宝塚歌劇の名作の1つである『うたかたの恋』と、昨年上演され好評だったショー『エンター・ザ・レビュー』が、全国ツアーのスタート地点、梅田芸術劇場メインホールで幕を開けた。花組は春野寿美礼以下32名、専科の鈴鹿照を加えると33名のカンパニーである。
 『うたかたの恋』は、有名なオーストリア皇太子ルドルフの心中事件が題材。史実に基づいて柴田侑宏が宝塚らしいロマンティックな悲劇に書き直したもので、83年の雪組の麻実れい遥くらら以来、何度もトップコンビで再演され、そのたびに多くのファンの涙を誘ってきた。

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 今回はルドルフに春野寿美礼、恋人の男爵令嬢マリー・ヴェッツェラには桜乃彩音が扮している。このコンビは『ファントム』からの組み合わせだが、まだキャリアの浅い桜乃彩音を、男役としてすでに大きさを持つ春野寿美礼が優しくカバーして、それが『ファントム』もこの『うたかたの恋』でも、物語にある種のリアリティを生みだしている。

 オープニングは、大階段で2人が寄り添う有名なシーンなのだが、全ツ用のミニ段になっているのが寂しい。それでも白い軍服と白のドレス姿も美しい2人の、モノローグとテーマ曲のイントロが始まると、文句なく物語世界に引きずりこまれてしまうのが、この『うたかた』の凄さだ。

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 春野ルドルフは、愁いに満ち満ちていて、この作品ならではの悲劇の二枚目そのもの、男役の究極の魅力を振りまいている。政治にも妻にも心が冷え、享楽に逃避するアンニュイな表情、あるいは無垢でひたむきなマリーの愛に向き合うときの純粋さ輝き、そんなルドルフの心の変化を、春野はかつてないほどの自然さで見せる。まるでルドルフという役に自分の生命そのものを見つけたかのように。

 対する桜乃マリーは、まだ発声が一本調子なのだが、その欠点も逆にマリーという娘の世慣れなさに見せてしまうほど、この役が似合っている。なによりも無心で清らかで、そのうえいい意味で芯の強さを持っている。マリー・ヴェッツェラは、2人の将来など考えないほど、ルドルフとの一瞬だけに生き、刹那の愛に全身を傾ける。そんな捨て身の強さをその嫋々たる美しさに、確かに隠し持っているのが桜乃マリーなのである。

 この公演で二番手をつとめている彩吹真央は、ルドルフの親友で生き方に影響を与えるジャン・サルヴァドル大公。ルドルフへの思いを最後に語り上げるいい役だが、その直前にも見せ場がある。舞踏会でルドルフの妻ステファニーがマリーに詰め寄ろうとするのを止めるため、ステファニーを力づくでダンスに誘い込むのだ。強引に踊り続けるジャン。その時の彩吹の目には、どこか哀れみさえ浮かんでいて、ステファニー役の舞城のどかの悔しさと悲しさの入り混じった表情ととともに印象深い。また、ジャン・サルヴァドルの恋人ミリーには桜一花が扮して、可憐な風情でしっかりしたセリフを聞かせる。

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 脇を締める面々も適役で、ルドルフにプレッシャーを与える父の皇帝ヨゼフは夏美よう、放浪の母エリザベートに梨花ますみ、ばあやのジェシカに鈴鹿照。ルドルフ追い落としを画策するフリードリヒは、眉月凰が黒い役を気持ちよさそうに演じている。ルドルフの友人ゼップスを愛音羽麗が品よく演じ、侍従ロシェックを演じる悠真倫と、従者ブラッドフィッシュ役華形ひかるとのやりとりが楽しい。若手男役たちはほかに士官モーリスに望月理世、また月組から組替えで来た白鳥かすがはフィリップ皇子役で出演。

 女役ではマリーの母に花純風香、ソロを聴かせるマリンカに絵莉千晶、若手ではルドルフの愛人ツェヴェッカ伯爵夫人に花野じゅりあ、マリーとルドルフを会わせるラリッシュ夫人に初姫さあや、マリーの姉ハンナの澪乃せいらなどに役が付いている。

 『うたかた』全国ツアーの演出は植田景子が担当、制約の多いスタッフワークのなかで、宝塚らしい優雅さと美しさを見せてくれるのが嬉しい。余談だが、ルドルフとマリーが別荘で無邪気に遊ぶゲームのなかに“怪人ごっこ”が出てくるのも、全国ツアーならではのお楽しみの1つである。
 
 ショーの『エンター・ザ・レビュー』は、酒井澄夫演出のパリのエスプリを感じさせるレビューで、昨年、宝塚・東京・博多と3カ所で上演したものだが、メンバーがかなり入れ替わるとともに、新鮮な感覚に生まれ変わった。

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 このレビューでなによりも観客に嬉しいのは、スター春野寿美礼の魅力をさまざまに味わえることだろう。オープニングはオーソドックスな黒エンビで始まり、マダム風エトワールに変身するサプライズでは、今回は黒のタイトドレスでシックに登場。「ラ・ムール」のピエロの哀愁、ニューヨークのアフロの激しいダンスと華やかなジャズ、「アランフェス」は何度見ても妖しく美しい。フィナーレの桜乃彩音とのデュエットダンスはアダルトだし、まさに歌に踊りにそのスター性を発揮してみせる。

 桜乃彩音も、まだ歌に不安は残るものの、登場すると圧倒的に空気が明るく華やぐ。オープニングの白い豪華なドレス、「ラ・ムール」のルイーズのカラフルな衣裳、フィナーレのワインカラー、どれもよく映えて美しい。安定したダンス力でデュエットダンスを流れるように踊っているのが頼もしい。

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 彩吹真央は博多に続いて樹里咲穂のシーンを担当、「ノスタルジー」のコメディアンでは軽みを、「猛獣使い」で男くささを、「アランフェス」のシャドーは大人びた雰囲気を見せ活躍している。また愛音羽麗「ラ・ムール」でルイーズの恋人アレキンや「ジプシー」のソロで男役の色気を感じさせ、華形ひかるはロケットボーイとして張り切る。娘役では、桜一花「猛獣使い」のベル・シャルマンでキレのいいダンスを見せてくれるほか、若手にも出番がたくさんあって、男役も女役も総力をあげてレビューの醍醐味を伝えてくれるのだ。

 花組らしい華やかさに溢れたこの2作品は、スタートの梅田から関東、九州、中部へと巡って、12月1日には広島で最終日を迎える。(文・榊原和子/写真・平田ともみ)

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◆花組全国ツアー◆

ミュージカル・ロマン『うたかたの恋』
原作/クロード・アネ 脚本・演出/柴田侑宏 演出/植田景子

グランド・レビュー『エンター・ザ・レビュー』
作・演出/酒井澄夫

公演期間:2006年11月4日(土)~12月1日(金)

詳しい公演情報は宝塚歌劇のサイトでご確認下さい。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2006/11/06 19:25:00 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | | トラックバック (0)

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